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カオティックアーツ  作者: 日向 葵
第二章
47/74

47:海上戦 現れた魔女

よろしくお願いします!

 楓は後方に控えているカノンのもとに向かった。

 そこには、船のサブコントロールシステムがある。

 【リフレクト】の形状設定が変わったのも、カノンがサブコントロールシステムを弄ったからだ。

 だが、化物相手にサブコントロールシステムをずっと弄っているわけわけにもいかない。

 そこで、楓はリモートシステム用のカオティックアーツを開発し、通信操作でシステムを動作させるようにしたのだ。

 楓が魚雷型カオティックアーツ【トーペックス】を起動できたのは、リモートコントロールシステムを搭載しているからこそできたこと。


 だが、一部の操作権限しか入れていなかった為、サブコントロールシステムを操作することにした。。なぜ、すべての機能をリモート操作できるようにしなかったかと言うと、戦闘時に不必要な操作はリモート操作できなくても良いだろうと考え、システムを構築したからだ。


 使おうとしている入れていなかった操作とは、緊急逃亡用の特性【トーペックス】発射システム。楓が先ほど使った【トーペックス】より、もっと高火力となる。【トーペックス:Rev.2】といってもいいだろう。

 逃げる際に、派手に爆発を起こし、相手の目を眩ませる目的で取り入れたものだ。


 通常の【トーペックス】では大したダメージも与えられなかった。

 相手の注意を引くのであれば、これを使わざる追えない。

 仕方ないことだが、やるしかない!

 楓はそう決意して、緊急逃亡用の【トーペックス】を全弾発射した。



 ブラスと激闘……というより、痛みの与え合いをしている化物は、楓が何かをしたことに気がついた。

 また、あの爆発する変なのがきた。

 化物は大いに喜んだ。

 化物の触覚を一番刺激したのは、ほかならぬ【トーペックス】だったからだ。

 だが、先ほどの少し違うような気がする、と感じた化物だったが、時すでに遅し。

 化物に【トーペックス】が着弾した。


 激しい轟音を響かせて、大爆発を起こした。

 風圧によりブラスは吹き飛んだが、ギリギリで船から落なかったようだ。


「おそらく、これも目くらましにしか使えないだろう。クレハ、フレアさん。まだか」


「もう大丈夫だ。準備はできた」


「さぁ、あの化物を懲らしめるわよ」


 魔力を極限まで高め、更に【ブーストリング】を使い、限界以上の魔力を集めたクレハとフレアは同時に詠唱し始めた。


「「邪悪を払う聖なる光よ。全てを浄化する力をかの者に与えよ【エーテリオン・付与式】」」


 クレハとフレアが唱えた、大規模魔法【エーテリオン】は、その光に包み込まれたものを全て滅ぼす最悪の光を放つ魔法だ。

 通常なら複数人で合唱することで発動できる魔法だが、極限まで魔力を高めた状態からの、【ブーストリング】による上限突破をすることで、発動することができるようになった。

 だが、魔法には大きな問題点がある。

 この魔法は大規模殲滅型の魔法であり、近くにいる敵に放っていいものではない。

 それをしたら、こちらまで巻き込まれるからだ。

 そこで、クレハとフレアは新しい方式を考えた。

 それが、【エーテリオン・付与式】だ。

 特定の相手に力を付与し、次の一撃を【エーテリオン】と同様の威力に引き上げる魔法だ。

 クレハとフレアは、それをティオに付与した。


 ティオは、付与された力を感じると同時に、ある感情が心の奥底から湧き出てきた。

 それは、不安だった。

 もし、この攻撃が外れたらと思うと体が震えた。

 期待に答えられなかったらどうしようと思うと、泣きそうになった。

 怖い、みんなの期待に答えられなかったらと思うと怖い。


 ティオは【ガーンデーヴァ】を構えながら俯いてしまう。

 そんなティオのもとに、カノンがやってきた。

 そして、ティオの頭に登って、ポンポンとティオを叩いたのだ。


「カノン、僕は本当にできるかな?」


「がう!」


 まるで、「ティオならできるさ」とでも言うようにカノンが答えた。

 ティオの心に勇気が湧いてきた。

 それは、不安を塗りつぶすほどの勇気。

 確かな意志を持ち、再び【ガーンデーヴァ】を構え直すティオ。


 大丈夫、僕がやるんだ。

 そう心の中で叫び、矢を放った。


 化物は、これはダメだと感じたが、化物が避ける速度より矢の速さが上回る。


 【エーテリオン・付与式】によって光り輝いた矢が化物に貫いた。


 貫かれた化物は体の内側から光を放つ。

 矢に付与された【エーテリオン・付与式】の効果によって、化物は倒れた。


「やった、やったよ。僕にできた」


「よくやった。ティオ」


「僕、頑張ったよ。お兄さん」


「おう、よく頑張ったさ」


 楓は、ティオの頭を撫でてやった。

 クレハとフレアもティオを褒めた。

 ブラスは、倒れてしまった化物、同類が死んだんだと感じ、ちょっとばかし泣いていたが、みんな無視することにした。

 誰も、変内に同情する奴なんていなかったのだ。


「化物も討伐したし、アパダリアに帰ろっか」


「それもそうだな。一旦帰って、それから魔女の国があると言われる大陸を目指そう」


 楓が船を動かそうとしたとき、やつは起き上がった。

 ボロボロで瀕死になりながらも、不敵に笑う化物。


 これでも倒せないのかよ……楓たちが思った。


「おお、同士よ。生きていたか。俺は嬉しいぞ!」


「GAAAAAA」


 血まみれで笑う化物と、同類が生きていたことに喜ぶブラス。

 楓は、ブラスに若干呆れつつ、これはどうしたものかと頭を悩ませる。


 あれで倒れないなんて洒落にならないぞ。

 どうすればいい。

 どんなに考えても答えは出てこなかった。


「楓、ここは一旦引いたほうが」


「だが、どうやって逃げる。あいつがおってきたらアパダリアまで破壊されるぞ」


「そこはブラスを置いていけばいい」


「フレアさん、それはダメです。あいつも仲間だから、化物の餌になんてできない。変態だから置いていきたいけど……それでもできないんだ」


「お兄さん……」


「がう……」


 化物は瀕死の状態のためか、攻撃してこない。

 化物と一緒に笑いながら、化物になにかを語り続けるブラス。

 もしかしたら、ブラスが活路を開いてくれるかもしれない。

 そんな期待がこみ上げてきた。

 楓は、ブラスに声を掛けよと思って行動したとき、それは起こった。


 化物が紅蓮の炎に包まれて、灰となったのだ。


「い、一体何だ」


「わからない。突然、化物が炎に……」


 一体何が起こったのかわからず、楓たちは戸惑った。


 トン、と音を立て、一人の女性が船上に姿を現した。


 魔女と思わせるような赤い帽子、ウェーブのかかったセミロングの赤い髪。

 上から纏った真紅のマントを波がせて、女性は口を開いた。


「へぇ、あたいが用意した化物にあれだけダメージを負わせるなんてな。クソったれども」


「あんたは一体……この力。この感じ。もしかして、魔女」


「ほう、そういうお前さんも魔女か。人間どもといるところを見ると、奴隷とかか。いや、身なりはいいし、それは違うか」


「さっきの炎はお前がやったのか……」


「あぁ、人間があたいに話しかけてきてんじゃねよ。

 だけど、答えてやる。あの化物はあたいが処分したのさ。紅蓮の魔女、ヴァネッサ・グロウリアがなぁ」


 ヴァネッサと名乗る一人の魔女は、楓を睨みつけるようにそういった。

 この世界は魔女を敵視している。

 だからこそ、楓はヴァネッサに敵意ある目を向けられても、それが普通の反応だと思った。

 だが、ヴァネッサはクレハやフレアにも、敵意ある目を向けていた。

 なぜ、という疑問が残る。

 いきなり信用してくれとは言わないが、それでも同じ魔女なのに。

 その答えはヴァネッサ自身が答えてくれた。


「人間と一緒にいるってことは、人間なんかに尻尾振ってるクズだろう。そんなやつ、魔女じゃない。あたいたち魔女を迫害し、蹂躙し、殺し、犯し、弄ぶ、そんな人間なんかと一緒にいる魔女なんて……」


「な、私たちは対等な仲間よ。

 それに、楓とブラスとティオはそんなことしてない。私たちのことを理解して、それで一緒にいる大切な仲間なんだよ。

 あなたなんかにそんなこと言われる筋合いはない!」


「はっ、どうだかな。

 魔女と人間が対等。笑わせんじゃねぇ。

 じゃあ、なんで人間が魔女を襲うのさ。

 教会の教え?

 いや、違うね。あいつらは魔女の力を恐れているのさ。だから、あたいらを迫害する。

 そいつだって、そいつだって、そいつだって、いつ裏切るかわからねぇんだよ。

 そんな人間に協力する魔女は敵だ!

 あたいは、あたいの守りたい魔女を守る。

 だからこそ魔女のために戦う。

 でも、人間に媚売って一緒にいるような魔女はあたいが守りたい、誇り高き魔女じゃねぇんだよ」


 ヴァネッサは詠唱なしで、炎の魔法をクレハに放つ。

 クレハは、いきなり放たれた攻撃に反応しきれなかった。

 クレハに襲いかかる炎、その間に楓が割り込んだ。

 楓のカオティックアーツ【ハーフ・エナジー・グラトニー】によって、ヴァネッサが放った炎の魔法が消え去る。


「か、楓?」


「大丈夫か、クレハ」


「な、あたいの炎が……」


 驚愕するヴァネッサ。

 楓は、ヴァネッサを睨みつけ、ヴァネッサとクレハとの話で感じた思いをぶつけた。


「お前、間違ってるよ」


「はぁ、何を言っているんだ。

 あたいは何も間違えちゃいねぇ」


「お前が魔女を守りたいと思うことは間違いだとは思わない。

 同じ魔女の言葉を、魔女じゃない人間と一緒にいるってだけで、否定するのは間違っている。

 俺たちは信頼しあって一緒にいるんだ。

 人間に媚を売る? そんなこと、クレハやフレアさんはしていない。

 クレハとフレアさんは、たしかに魔女だ。

 だが、そんなのは関係ないことなんだよ。

 心から想いあうことができる、信頼と絆で結ばれているからこそ、俺たちは一緒にいるんだ。

 魔女だけが全てじゃない。魔女や人間という言葉が、その人を表すんじゃない。

 だからもう1度言う。お前は間違っている。

 魔女と人間だって、ちゃんと分かり合えるんだよ」


「ああそうかい。だったら証明してみろ!」


「ああ、証明してやるさ!」


 楓とヴァネッサとの激闘が始まった。

読んでいただきありがとうございます!


新キャラ登場です!

紅蓮の魔女、ヴァネッサちゃん。

しかも、ほかの魔女がやっと登場です……

あの魔女とか早く登場させたいな……


次回もよろしくお願いします!

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