第二話
違う世界線………。
もしかしたらあり得た平和な世界線
※難民キャンプの世界線は↓にあります
◇ ◇ ◇
アイシャは学校に急いで駆け込んでゆく。
道には華やかな色彩の民族衣装、パシュトゥーンドレスを着た女性に市場や店に農産物、織物を積んだ小型トラックなどの姿も
パシュトゥーンドレスの袖には沢山のコインの飾り、
コインが音を鳴らす
中には海外の流行りの服装、ズボン、短いスカードを着た若い女性も居た。
メインの大通り、チキンストリートには異国の観光客の姿に…
60年代から続く観光客に人気の料理店、スパルタは今日も賑やかだ。
街では伝統的な建物と近代的な大きなビル
人々が行き交い、観光客も多い
大陸の交易路にあたり、物流、陸路のハブとして栄えていた。
古代から交易路として存在した
果実と織物とラピスラズリの国
古代、ラピスラズリは此処だけが産出国
中東のパリと呼ばれ、昔はヒッピーと呼ばれる独特なバックパッカー達も多かった。
今もバックパッカー達はこの中東の王国を訪れる。
沢山の店には伝統的な織物に高品質な緑の産物
果実も多数、高品質な果実などは隣国でも高値で売られいる。
珍しい毛皮に古代からあるラピスラズリ
整備された庭園も…庭園には花々に噴水
近隣の平和なイランの王国とこの国の王は親戚関係にあり、イラン、ペルシャからの来客も多い
古都で近世の時代には世界有数の海路の港
イエメン王国の客人も…。
学校では
「あら、お弁当を忘れたの?アイシャ」
「えへへ、そうなのヤスミン」
「私のボラニとクッペを分けて上げるね
後、アジルにデーツ(ナツメヤシ)とナッツもあるわよ」
「ポットにチャイ・サブズ(カルダモンの実と緑茶)もあるの」
「ありがとう!ヤスミン」
「購買部で飲み物の塩味のドゥーグ とザクロのジュースとか買おうよ、ヤスミン」
※塩味のヨーグルトでミント、乾燥したハーブ入りの飲み物
「そうね、アイシャ」
薄い生地にネギにじゃがいも、カボチャが詰められ焼いたボラニ
それにクッペは挽肉とハーブを米の生地で包んで揚げたもの
アジルはデーツ、イチジク、クルミ、アーモンドを混ぜたもの
「帰りに屋台でラム肉のカバブにサモサ
絞り立ての果実のジュースね、帰り私の家に寄らない?アイシャ」
「え、良いの?ヤスミン…ヤスミンの家は大きな屋敷よね」
「うふふ、そうかな」
「ええ、ヤスミンのお父さんは国営ダムの関係の大きな会社の社長だもんね
あのヘルマンド川の大きなカジャキ・ダム
それから、以前から織物の大きな店も…」
「将来は何をしたい?ヤスミン、ヤスミンは大学に当然、進学でしょう?」
「うん、そうねアイシャ…織物の店は祖父母達の店よ」
「私は学校は大学にも進学して
父親の会社の秘書をしょうかなとも考えているの」
「子供の頃はお医者様にもなりたいと考えていたけど」
「ヤスミンは成績が良いもん、外国語も上手
大きな会社の秘書も医者もどちらにもなれるよ」
「兄ファルザドに、私の小さな妹ロヤもアイシャに会いたいって!うふふ、家にはフェル二のミルク・プディングに
ヌグール、アーモンドの菓子もあるわ」
「ロヤちゃんは可愛いわ、夢という意味のロヤ
お兄さんのファルザドさんも素敵よね」
「うふふ、アイシャのご家族も素敵よね、お母さんのマリヤムさんは以前はパシュトゥーンドレスのデザイナーで元歴史の教師、お父さんは王宮の警護の管理職」
「最近、聞いた話だけど、東洋の日本人の取引も増えたみたいね」
「ええ、織物と開発事業の仕事の関係みたい」
朗らかにヤスミンは笑う
「最近は南部の開発も進んで…緑地化も少しづつ」
「まだ開発が進んでなくて、厳しい状況だったパキスタンとの国境近くの方では…」
「日本のNPO、医療団体が水路の開発をしたらしいわ
確か…ペシャワール?ドクターナカムラ?」
「確か東洋はファミリーの名前が先で…ナカムラがファミリーの名前よね、
柳を植えたり、日本の古い時代の作りで用水路?という話を聞いたわ」
「今度ね、最近、観光地として開発中のバーミヤンに旅行予定だけど、お父さんがアイシャと家族のみんなを招待したいって」
「え!最近、流行っている、バーミヤンの観光地なの?大きな石仏とかある!」
「うん、今はバーミヤンには列車に飛行機のミニ観光ツアー
小さな飛行場も近くの町にホテルも幾つかか出来たからね!」
「ねえ、今日は新しいコンビニにも帰りに寄りましょう!」
※フェルニ
薔薇水とカルダモンで香りをつけ、ピスタチオの粉などミルクプディング
◆ ◆ ◆
難民キャンプ…幾つかのテントの一つ
「また、鉛筆が無いわ」ため息をつくアイシャ
「アイシャ、大丈夫?」
「うん、大丈夫よ、ヤスミン
物が無くなるのはいつもだもの」
「そうね、服と石鹸が手に入って良かったわねアイシャ」
「ええ、ちょっと服はサイズが合わないから、手直ししているの」
「向こう側にいるレイラーもそうみたいね」
「ねえ、ヤスミン、結婚が決まったの?」
「あら、もう知っているの、アイシャ」
少しだけ年上のヤスミンという少女が笑う
「三年前、父も母も死んで、兄妹達は行方知れず
私は此処に来るまで、文字も知らなった」
「一人では、この国、この場所では生きてゆくのは大変だもん、従兄のレザと結婚するの」「ヤスミン」
二人の少女アイシャとヤスミンは互いに見つめ合う
「本当は親戚のハミッド叔父さん、40歳半ばぐらいかな
ハミッド叔父さんが再婚相手として、私に嫁に来ないか?って言われたけどね」
「……あの騒乱の騒ぎで、父親も母親も死んだ…その時に乱暴され汚された私でも、結婚が出来るの」
「…暮らしに困り果て、女にはまともな仕事も許されない
出来る仕事も限られている」
「中には僅かなお金で売られた娘達も
行方知れずのハテイジヤも多分」
「ハテイジヤはレイラーの姉だった」
繕いものをするレイラーを見る二人
「…娼婦にはなりたくないわ、暴力を振るわれ、言い様に身体を要求される事もないから、夫がいれば守ってくれる」
「彼は暴力を振るう人じゃないから、安心よ…多分だけど」
「先月は私より年下のザラも同じ理由で結婚したわ」
「生きていかないと…」
「ヤスミン」
「アイシャ、ありがとう
難民キャンプのNPO、優しい外国の野田さんも心配してくれたけど」
「野田さん…良い人だよね、ヤスミンは好きだったでしょう?」
「…そうだけどね、いいのよ」
「町に行く許可を貰えたから、彼と買い物に行くわ、黒い服とチャドルを着ないと…大したものは手には入らないけど結婚式をするから…」
「手持ちのお金も少し、町にも品物は少ない」
「チャイ、ミルク紅茶に入れる
サフランで染めた砂糖の黄金色のナバートでも手に入るかな?後、ビスケットとかも」
「許可が下りたの!良かったわねヤスミン」
「ええ」
「服装には気をつけてね、女の一人歩きも町では許されない、罰として、連れてゆかれるから」
「ええ、勿論よアイシャ」
「…行方知れずの兄妹達、兄のファサルド、妹のロヤが無事だと良いけど
もし、町で会えたなら」
そんな事をヤスミンは呟く
「そろそろ、食事を作る時間よ、行きましょうアイシャ」
難民キャンプで女性達は支給された必要なもの
支給された小麦粉でナンを作る為にこねていたり
土製の大きな壺のような釜、それの内側に生地を貼っていたりする。
油に豆の缶詰(レンズ豆など)、米、塩などで料理を作っている。
燃料も貴重
だから煮込み料理を大量に作り、皆で分かち合う。




