第90話 殺意四人
最近序盤の話を推敲してより面白く、新規読者の獲得を頑張ろうと思います。(長らく放置していたのは秘密)
ここまで読んでいる貴方はコアな人間です。ありがとうございます。
腹を切り裂かれたリシャウ、全身血だらけのガイル、肩を斬られ血だらけのザルツとフェレター。
前代未聞な四人同時の剣戟はお互いにダメージを与える事はできなかった。
「………あぁもう…!」
リシャウの姿勢が崩れた。足を捻ってしまったのだ。
そこを突かないほど馬鹿な二人ではない。
「グッ…!!」
ザルツが脇腹を蹴り飛ばし、奥の廊下へと吹き飛ばすことに成功。
二対一だ。
「勝負かこれからだぞォ!」
(背後──!)
フェレターが剣を逆手に持ち、近くにいたガイルごと纏めて斬る気だ。
「ザルツ!合わせろ!」
三人同時に剣を振るい、ザルツが防御、ガイルとフェレターがお互いに攻撃し合う図を一回の剣戟で行った。
フェレターの居合の速度が落ちるまで戦う──!と思っていたが彼のスピードもパワーも変わらない。
上がり続けたボルテージが今最高潮と言った所か。
(結局全員本気出して、より勝った後が怖くなっただけだな!)
全てにおいて互角なのだ、拮抗しない訳がない。
ひしひしと感じる死の予兆が今彼らの動きを良くしている。
「ガッ!」
ザルツの脇腹が斬られた。リシャウの黒剣。
速い!膂力とスピードが全て底上げされているのだ。
圧倒的斬撃速度と火力。
どこか舞う様な剣技に、翻弄されそうな彼だが……
「その“黒剣”思ったより自己主張が強いな…!」
背後に気付き、大きい一撃。リシャウは目を大きく開いて驚いた様子だ。
そして気づいた事は力ではザルツの方が上と言う事、
剣戟の優位性は依然のザルツに軍配が上がる。
(気づかれた……これでもう目を潰した所で意味無くなっちゃった)
驚くべきはそれに、“気づかれる”事よりも気づく“速さ”
(この男の人、剣術が凄い『魔法使い』が先に来るイメージだったけど、本気出すと魔法が使える『戦士』の間違いだね)
一発二発と剣をぶつけ合っているからこそ分かる。
タイムリミット付きだろうが、厄介な人間だ。
違う場所では、フェレターの『完全居合』を完璧に防御しカウンターを叩き込むガイルの姿。
今までの怒りが蓄積され身体能力の向上を図る。
フェレター達がピンチなのは間違いない。
「[加速]」
ここで一つ工夫、『今までは鞘に入れるまでの動作』を加速していたが今度はそこから更に『斬り終わるまでの動作』も判定に入れる。
本気を出してから一切喋らなくなっていたガイルに一泡吹かせてやりたいと言う思いで今戦う。
(この戦いに必要なのは集中だ。手を尽くし、どんな手でも使う!!)
近くに落ちてあった石ころを、恐らく彼の視界に映るであろう場所に投げた。
本来映っても気にもならないこの石。
ただ、広い視野による半自動の殺戮人形は……敵意…即ち魔力に反応する。
「参る」
加速したフェレターの斬撃は、ケイの完全[燃焼]と遜色ないレベルでの速度。
雷速に近い。と言う事だ。
能力が肉体に負ける事はありえないが肉体が能力に負ける事はある。
雷速以上の一撃、
これによりガイルの左腕を切断。
「ッ…!!………クソが…」
静かに呟いたガイル。それはばっちりフェレターにも聞こえていた。
「どうしたどうした!?ここで───(!?こいつ笑って…?)」
不敵な笑みを浮かべたガイルは突如カウンター。
真っ直ぐ振り下ろされた一撃はフェレターを真後ろに吹き飛ばす。
するとここで誰かの背中にぶつかった。
この硬い感触は……
「ッ!!」
「こいつッ!!」
ザルツのゴツゴツした硬い背中だったのだ。
二人は同じ考えとなる。
───好都合!!
腰の捻りを加えた“振り向き様”の一撃。
居合とザルツの剣。
どちらも同じ甲高い音が図書室中に響き渡った。
すると背後からリシャウ。
獲物の横取りだ。
しかしブーメランの様に飛んでくる剣を防ぐ事でその隙は消えたのだった。
「……………ウザ(ガイルか…)」
「やらせねぇよ」
どこか不敵で…どこか大胆なガイルの柔軟な思考は腕を斬られようが怒りに身を任せようが消える事ない。
「……ガハッ!」
力の押し合いの末、ザルツが勝利。フェレターの胸を深く斬る事に成功。
「舐めるなよ……クソガ──」
左腕───本来彼が鞘を持つであろう腕が宙を舞った。
誰がやったかは明白だ。
「これでお互いに…!!隻腕だなァ!」
「……ガイル」
ザルツがガイルの元への下がり、再びお互いを睨みつける構図となる。
全員が全員各々重傷を負い、なおかつお互いを即死させる威力を持つ武器+技量の持ち主。
ただし、この四人は疲弊状態。
決着を着けるためには…より深い集中が求められる。
これで──最後。
全員が剣を構え出す。
ガイルとザルツの考えは偶然だが合致していた。
一斉に飛び出した四者。
入り乱れた剣の中で二人の剣豪が狙ったのはフェレター。
(こいつら、主にザルツなんか私の方しか見ていなかったのに…一気に標的を変えた!?)
「クソガキ!!」
フェレターは二人の攻撃を受けて防御に徹した。カウンターは不可能。
「いや…でも……私の事舐めすぎ!!」
振り下ろされる剣の向く先はザルツの左手。
切断される時間を稼ぐために彼は全魔力を手に集中。
「無理でしょ…!」
迷わず一刀両断。
今もフェレターと力比べをしている二人に斬りかかる。
ぽとりと落ちた手の甲には…
(──魔石!!)
強い魔力を感じ振り向くと今にも発光する直前の『雷の魔石』
一年前の学年試験で、ケイが似た様な事をザルツに行ったのをしっかり覚えていたのだ。
「[雷魔法]」
呟く様に唱えた雷は大規模放電よりも、小さい静電気の様な形を重視。
魔力の密度が後者の方が密度は大きい。
この“濃い”魔力によってリシャウの腹を貫いたのだ。
「……ッ…!ザルツ!!!!」
もの静かな彼女とは考えられない程、大きな声で恨み言を叫ぶ。
“濁った”殺意は視野を狭め、敵の表情すら読み取れない。
もうそこにザルツはいない。
(………上!!)
背後にいるザルツに剣を置き、殺す。殺せる。
そう思ったが、彼も同じタイミングを剣を振った。
ジャストタイミング、彼女の[黒宴]が終了。
「馬鹿な…!」
もう先程の強度と威力はない。
攻撃から防御に回った彼女、その判断はもう遅い。
「一閃!!」
彼女の脇腹から肩に掛けて袈裟斬り。
先程までの浅い斬撃ではなく深く、両断するような一撃。
血飛沫を大量に撒き散らし死亡。
残るは……フェレターだけ!
「流石!」
ガイルがここで力を入れこのまま決めにかかるが…
「お前は昔から、鍔迫り合い苦手だったよな」
「!!?」
力で押し返すフェイントをし、彼は左に回避。
完全に力任せになっていた為姿勢が前に傾いた。
「しまっ──」
奴の斬撃がガイルを腹を切り裂き、廊下をへと蹴り飛ばす、これでお互いに……一対一だ。
ザルツも魔力切れが近い。
息が荒く、血が止まらない中で二人きりとなった剣豪。
フェレターはここで口を開く。
「これで……最後だ」
「……どうして」
「あ?」
「どうして貴方は仲間を裏切ったんですか?」
話はおおよそ、タクトと呼ばれる少年から聞いていた。
彼のその質問に奴は剣の構えを解き、先程ガイルを吹き飛ばした廊下の方へと見る。
「……俺は別にあいつらが憎いわけでも、嫌いだった訳でもない。ただ……俺は……戦いたかったんだ」
正直言えば五傑と呼ばれ憧れ、慕われていた事や仲間達と戦った日々は充実していたし楽しかったと彼も思っている。
「この渇きを満たす奴がいなかったんだろうなァ」
「…………決着を…つけましょう」
二人は同時に剣を構え、再び静寂が二人を襲う。
死への恐怖と緊張が容赦なく二人にのし掛かる。
長い。
永久かと思ったこの時間は、地面を蹴り飛ばす音で現実に戻される。
雄叫びを上げザルツに斬りかかるフェレターを一切の恐怖を持たずに、
「……終わりです」
胸を切り裂く事で────
「…………!!」
戦いは終わった。
四人の剣豪の戦いはあっけないとも呼べる終わり方で終わったのだ……
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ザルツは剣を仕舞い、今までの痛みと疲労がどっと押し寄せてきた。
四人同時で剣戟など、今思い出しても身震いが止まらない。一手間違えれば即死の戦場に当てられ流石に疲れたのだ。
「…ガイルさんは…」
廊下に倒れていた。気絶しているが、多分大丈夫…な気がする。
「…なんとか…勝ちましたよ」
斬る瞬間、フェレターから感謝の言葉が聞こえた様にも感じた。
仲間を裏切った彼なりの罰の受け方だったのかもしれない。この戦いで彼は一切後ろに下がる事なくずっと戦っていたのだ。
「…って言っても僕ももう限界」
ガイルのすぐ隣でザルツも地面に倒れ気絶。
四階の図書館で起きた戦いは終幕した。
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[時はザルツ戦闘時:場所は一階ホール]
リサはこの広く、大きいホールと廊下がある場所に転移した。
誰に襲われるかも分からない。
気配を探ることができないのだ。
すると奥から金属を引き摺る音が聞こえた。
「?」
何が起きているのかを確認する為に体を動かした瞬間。
ドゴォ…!!と“槍”が壁を貫通。リサの顔に迫る。
「ばッ!!」
なんとか回避したが、たった一瞬で位置がバレた事に驚きを隠せない。
そこそこ遠い所から音が聞こえたし、そもそも移動する瞬間、音や気配を完全に消していた筈。
(……ま、いいやもう)
ゆっくりと廊下へ向かうと、槍を持った女がそこに立っていた。
「宣戦布告……でいいのよね?」
大鎌を構えたリサ。
「まぁ……別に……そう…とってもらっても…いい」
ララの部下の一人、ヘルである。
巨大な柱がある広い廊下で、この二人の対戦。
命の殺り奪りが開始した。
正直今回位置関係が分かりづらい回です、すみません。
入り乱れた感じを表現したかったのですが……難しい!




