第56話 ホワイトデー? 前編
遅くなりました、ようやく更新です!
ブログすら更新できずに申し訳ありませんでした!
どうでもいい言い訳は後回しにして、とりあえず本編どうぞ!
P.S. もし「・・・え?今更?」って思う事があったら、作者が土下座して「ごめんなさい」を連呼している姿を想像してください。
「ふぁああ・・・」
翔輝です。眠いです。
とりあえず学校が終わりました。眠いです。
帰ろうと思います。眠いで―――
「しつこいですよ、翔輝さん」
「読心術?」
「どうせ翔輝さんのことだから『眠いです』とか何とか言ってたんでしょ?」
「驚異的洞察力だな」
「翔輝さんが読みやすいだけです」
「そうか?」
「そうです。って言うか帰りましょうよ」
「ん~・・・や、俺疲れたからいいや」
「また言ってる・・・。そんなに疲れてるんですか?」
「まぁ結構疲れてる。・・・俺寝るわ、先帰ってろ」
「帰って寝なさい!」
・・・何か怒られたんでとりあえず帰ることに。
メンバーはいつも通り俺、譲葉、ウル、エミーの四人で帰路についた。
・・・あ、そういえば。
「なぁ、お前らこの後なんか用事あるか?」
「え?」
「いや、だから予定。この後暇かって事」
「あぁ、まぁ暇といえば暇ね」
「僕も特にやらなきゃいけないことはなかったと思うけど」
「私もないです。どこか寄りたい所でもあるんですか?」
「ん、まぁ寄りたい所って言うかお前らになんか渡さなきゃと思ってな」
「へ?何で?」
「いや、そろそろホワイトデーだし」
「・・・あぁ、そういえばそうでしたね」
「忘れてたのか?」
「気にしてもいませんでした」
「ホワイトデー?」
「ホワイトデーって何?」
「あぁ、こっちにはホワイトデーはないんですか。ホワイトデーって言うのはバレンタインデーにチョコレートもらった人にお返しをする私達のとその近辺の国にのみ存在する風習ですよ」
「あれ、ホワイトデーどこでもやってるんじゃないのか?」
「そうですよ、そんな事も知らなかったんですか?ちなみに韓国なんかには毎月14日に何とかデーがあって、例えば4月14日はブラックデー、その次の5月14日はイエローデーなんかがあります」
「・・・ちなみに何をするんだ?」
「ブラックデーはバレンタインデーにチョコレートをもらえなかった人や恋人ができなかった人が黒い服を着てチャジャンミョンという黒い色をしている韓国料理を食べて慰めあい、イエローデーはその日に恋人がいない人は黄色い服を着てカレーライスを食べないと生涯独身でいることになるとされているので、基本的に結婚したい人はそれに従ってカレーを食べるようです」
「・・・何だかとっても憂鬱に慣れそうなとても素敵な祝日ばかりね」
「って言うかほとんど呪いじゃねぇか、イエローデー」
「要するに色々食べられるって事?」
「・・・その解釈もどうなの?」
「って言うかそんな事は今はどうでも良くてだな」
「あ、そうだった。つまりホワイトデー、だっけ?だから翔輝が何か僕達にくれるって事?」
「まぁ大雑把に言えばそういうこと」
「何でも?」
「チョコレートの2倍の値段までのものならよし」
「え~、何よそれつまんない。フランス料理のフルコースでも奢らせようと思ったのに」
「そういう悪女がいるから2倍までって条件つけたんだよ」
「悪女って・・・失礼ねー!」
「待って、僕のチョコすっごい安いやつなんだけど・・・それでも2倍?」
「あ~・・・じゃあ4倍でいいよ。物によっては5倍もありかもな」
「やた♪」
「何よそれ、差別よ差別!」
「差別じゃなくて区別だ。この違いは重要だぞ?」
「どっちも同じでしょ!?」
「あ、あの、翔輝さん?」
「ぅん?」
「わ、私の場合はどうなるんでしょうか?」
・・・そういえばそうだった。譲葉は手作りチョコだったっけ。
「・・・しまった、何も考えてなかった」
「あ、でも別に何か期待してたわけじゃないので無理にじゃないですよ?」
「いやそれはダメだろ。貰っといて何も返さないのは」
「そういうところは妙に律儀ですよね、翔輝さん」
「別に律儀なのは悪い事じゃないんだから『妙に』とか言うな」
「事実ですからね」
「あっそ。じゃああれだ、何でも良いよ」
「はい?」
「いや、だから何でも良いよ、俺の予算内なら」
「え~何それ~!?じゃあ僕も何でもいいじゃん!」
「そうよ!あたしだって好きなものもらえる権利があるはずよ!?」
「だ~、うるさいな・・・」
「うるさいなじゃない!」
「あたし達も自由に色々選んでいいでしょ!?」
「分かった分かった、選んでいいからちょっと黙れ!」
俺が鬱陶しそうに言うと二人はピタリと静かになり、さっきの騒ぎが嘘のように静かになる。逆に天使のような笑顔を浮かべている。
ったく、調子良いよなぁ・・・。
「ただし予算内な、俺が無理って言うものは無理だかんな」
「「は~い♪」」
ハモんな。
「翔輝さん、ホントにいいですよ?何だか無理してるっぽいので」
「別に無理はしてねーよ、やかましいとは思ってるけど」
「そ、そうですか?」
「どうせそうなるだろうとも思ってたし」
「あ、あはは・・・」
俺の言葉に譲葉も苦笑している。それに気付いているのか気付いていないのか、二人はまだ気持ちの悪い笑みを浮かべている。
結局その日は俺が財布を忘れた事に気付き、二人(言わずもがなウルとエミー)に散々色々言われた挙句、三人の要望に答えた品をホワイトデーまでに用意すると言う条件で、その日はお開きになった。
さて、と言うわけで三人の欲しいものリスト。
ウル → 何かこっちの世界で美味いと評判らしいお菓子屋のクッキー、もしくはケーキ
エミー → ちょっと高めの店で俺の奢りで食事
譲葉 → 俺のセンスで選んだアクセサリー
・・・何か下の二つホワイトデーとあんま関係なくね?や、俺が何でもいいって言ったから別にいいんだけどさ。
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「う・・・ぅん・・・?」
・・・多分夜。いえ、実際の時間は小屋の中なのでよく分かりませんが、いつもの目覚めより肌寒いという事は多分夜なんでしょう。
と言うわけでこんばんは、譲葉です。
「・・・ふぁぁぁ・・・。・・・何でこんな中途半端な時間に・・・」
実際中途半端な時間なのかどうかは分からないんですが、少なくともまともな時間じゃないでしょう。
この小屋時計が無いのが不便なんですよね・・・。
ドンッ!
「ひぃっ!?」
ななな、何ですか今の音!?へ、変な音が・・・!
「しょ、翔輝さん、起き・・・!?」
今、気付きました。翔輝さん、いない・・・!?
「しょ、翔輝さん!?ど、どこにいるんですか!?」
辺りを見回しても小屋が暗いせいか、翔輝さんは見当たりません。
ドンッ!
「ひゃあ!?」
ま、また・・・!?
し、仕方ありません。翔輝さんがいないならミラさんに頼るしか・・・。
とにかくまずは小屋を出てから・・・。
「ミラ!お前今本気で殺す気だったろ!?昔みたいにちょっと手加減とかじゃなくて本気の本気で!」
・・・ふぇ?
「当たり前よ。翔輝はそろそろ真剣に殺す気で行かないとこれ以上伸びないわ」
・・・え?え?
「だからって不意打ちでいきなり首元狙ってくることはないだろ!?」
「大丈夫よ、そろそろ翔輝なら避けられるかな~って思ったから」
「それ半分くらい避けれないかもって思ってるだろ!?」
「ドンマイ♪」
「ふざけんなあああぁぁぁ!」
・・・え?え?え?
な、何ですか?ちょっと状況がいまいち読み込めないんですけど・・・。
とりあえず何だか覗いたらいけない雰囲気がしたので扉をうっすらと開けて外の様子を覗いてみる。扉のすぐ外には翔輝さんが膝をついて木の方を見上げている。翔輝さんの視線をたどって木の方を見てみると、ミラさんが直径十センチもない様な木の枝の上に立っている。あれも吸血鬼だからなせる業なんでしょうか?
「ホラ、次来なさいな」
「言われなくてもっ!」
翔輝さんは言い終わると同時に翔輝さんは能力を使ってミラさんが座る木の幹に突き刺さった状態の刀を出現させ足場として使い、瞬く間にミラさんの立つ枝に到着、そのまま手に持った刀を振り下ろす。
ミラさんはそれをかわす事もせず、ただ薄い笑みを浮かべながら刀が振り下ろされるのを見守っている。
・・・って翔輝さん!?ミラさん女性ですよ!?分かってますか!?
「喰らえ!」
「喰らわな~い」
刀が当たるか当たらないかの刹那、ミラさんは背中から地面に向かってフリーフォール・・・ってえええぇぇぇ!?
・・・と思ったらミラさんは地面に当たる直前でフワッっと一時的に浮遊し、足を下にして音もなく着地した。あ、焦りました・・・。
何て一息つく間も無く翔輝さんが木から飛び降りて、そのまままた刀を振り下ろす。
「喰らえってのコノヤロッ!」
「だから私に当てるのは無理なんだって・・・。学習しなさいよ、翔輝」
ミラさんが呆れ返った顔でそう呟くと、少しずつミラさんの体が黒く染まっていった。しかし翔輝さんはそうなる事が分かっていたのか、構わず刀を振り下ろす。
ほんの数秒前までミラさんだった黒い塊は刀に斬られる直前に地面に消え去り、翔輝さんが振るった刀は空を斬った。
翔輝さんは小さく舌打ちをすると一歩後ずさって刀を構えなおしてあたりを警戒する。
「だから無理だって言ってるじゃないの・・・」
どこからともなくその声が聞こえた瞬間、翔輝さんの背後に漆黒の柱が立ち、それは程なくして人の形を形成した。
「攻撃するのが無理な以上・・・攻撃をかわす事に専念しなさい!」
「・・・っ!」
完全に人の形になったミラさんの右手からさらに黒い塊が発生し、やがて翔輝さんのおなかの辺りにあてがわれた鎌のような形になった。
「この先、死にたくなければ・・・覚えてなさい!」
言い終えるや否や、ミラさんは完成した鎌を思いっきり引いた。それに連動して翔輝さんに触れている刃の部分も動き、直撃。そのまま翔輝さんの体は吹き飛び、背中を木の幹に強打した。
私は思わず息を飲んだ。翔輝さんの体に触れていた部分は間違いなく刃の部分だった。それをあんな力一杯引かれたら、絶対に斬れている。さらにあんなに飛ばされて、背中を強打。かなりまずい気がする。
・・・と思いきや。
「いってえええぇぇぇ!」
翔輝さんは何事もなかったように起き上がった。・・・いえ、痛がってはいるんですが、少なくともさっきの攻撃の激しさから連想されるようなリアクションではないです。
「動体視力と反射神経だけはいいのね、翔輝は」
「悪かったな」
「拗ねない拗ねない、褒めてるんだから」
「じゃあ『だけ』とか言うな」
「そんな事言ったかしら?」
「ったく、いちいちムカつく・・・」
「ふふっ・・・。じゃあ今日はこれでお仕舞い。お疲れ様」
「どうも。悪いな、毎晩付き合ってもらったして」
「別に?私も夜はやることなくて暇だし、これくらいならおやすい御用よ」
「サンキュ、んじゃまた明日も頼んだぜ」
「えぇ、おやすみ」
・・・こ、この二人、毎晩こんなことしてたんですか?ぁっ!
「ん、譲葉・・・。起きてたのかよ・・・」
呆然としてたせいで小屋に帰って来る翔輝さんに気付かず、そのままばったりと出くわしてしまう。
「しょ、翔輝さん、ごめんなさい、覗くつもりはなかったんですが・・・」
「嘘付け、この状況で覗く気がなかったわけあるか」
「う゛・・・」
返す言葉もありません・・・。
「そ、それより翔輝さん、大丈夫なんですか?」
「ん?あぁ、さっきのか。平気だよ、喰らう前に鎌と腹の間に刀出したから」
「そ、そうなんですか?でも背中も・・・」
「大丈夫だって。それより寝ようぜ、明日起きれないぞ?もしまだ質問があるならまた明日な」
「あ、そ、そうですね・・・。おやすみなさい、翔輝さん」
「あぁ、おやすみ」
翔輝さんはその言葉を最後に寝袋の中に潜り込んでしまった。
私も少し遅れて布団に潜り込んだんですが、妙に目がさめて眠れません・・・。
何故って、気になることが多すぎるから。
知っての通り、翔輝さんは何をするのもめんどくさくて、自分が楽するためにしか努力しない人です。
そんな人がどうしてこんな夜中に、しかも秘密裏に特訓なんてしてるんでしょうか?そしてなにより・・・。
「・・・翔輝さん、まだ起きてます?」
「・・・ん」
起きてる。思い切って、聞いてみるしかない。
「明日が来る前に、寝る前に・・・一つだけ、聞いても構いませんか?」
「・・・何だ?」
「どうして、翔輝さん、ミラさんを攻撃できたんですか?」
そう、翔輝さんはたとえ冗談でも女性には攻撃できない。
相手はその女性であるミラさんでしかも得物は真剣。当たり様によっては相手に致命傷を負わせかねない危険性がある状況で、翔輝さんが本気でミラさんを攻撃するなんて・・・。
そう思うと、とてつもない不安に襲われた。
そんな事ありえない、私の知っている翔輝さんじゃない。何だか、怖くなってしまった。
翔輝さんが、いつの間にか私の知らない翔輝さんになってしまっていくんじゃないかって・・・。
「・・・バカヤロー」
「ぇ・・・?」
「俺なんかがミラに攻撃当てられるとでも思ってんのか?」
「・・・じゃ、じゃあ・・・」
「そもそも俺に女の攻撃できる度胸があると思うか?」
「・・・」
妙に長く感じられる沈黙が流れる。やがて、
「・・・ぷっ」
「・・・んだよ」
「自分で言いますか、そういうこと?」
「悪かったな、どうせ俺はヘタレですよ」
「いえ、それでいいんじゃないですか?いつも通りの翔輝さんですよ」
「・・・なんだそりゃ?」
「ふふっ、なんでもないです」
「・・・まぁいいや、とにかくもう寝ろ」
「えぇ、今度こそお休みなさい」
よかった、やっぱり翔輝さんは翔輝さんだった・・・。
というわけで今回ちょっと長めでした。ホワイトデーって、いつの話だよ!?って話ですよね、ごめんなさい。忙しくて当日更新できなかったもので・・・。;しかも前編って書いてあるし・・・。
一応設定上この話では3月10日辺りです。(ほぼ2週間前・・・;)
それにしても久々の戦闘です。感覚なくしてるなぁ、書いたの何ヶ月ぶりだろ?;
とにかくまずは謝罪ですね、更新遅れて本当に申し訳ありませんでした。補習校の卒業式の答辞は無事終わりました。過去最高級の出来と先生のお墨付きだったので、俺の中ではとりあえず大成功です。
しかし、その後風邪をひいたり成績が思うようにならなかったりと予想以上に忙しい日々が続き、結局更新がこんなに遅れてしまいました、ごめんなさい。
アメリカは日本と違って卒業・進級が6月なので、日本は休みでもこっちは大絶賛学校登校日だったりするんですよね・・・。
まぁ何はともあれ、成績も少し安定してきましたし、これからもう少しペースを上げられればなと思います。
それでは失礼します。