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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 卯佐美 佳
第三章 なんでこんなめんどくさい事に…
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隠し事

人には誰にでも、隠し事がある。


例えば好きな物・嫌いな物、例えば相手に対する感情、例えば過去に起きた出来事。


分ければそれはとても多岐にわたる。種類を上げたらキリがないだろう。


それは、親しい友人にだろうと、愛する恋人にだろうと、血の繋がった家族にだろうと、絶対に話せない事がある人も、決して少なくないだろう。


当然、俺にだって隠し事はある。勝樹にだって、仁美にだって、成瀬にだって、鈴井にだって、荒川にだって、そして、健にだって、隠し事はある。


実際に彼等に聞いた訳じゃない。だが、普段の様子を見ていれば、隠し事がある事くらいは分かる。


隠し事をする理由は、人それぞれだ。例えば、他人に聞かれるのが恥ずかしいから。例えば、自分の名誉を傷つけられたくないから。例えば、周りの人達に嫌われたくないから。


様々な理由があるように思えるが、実際はたった一つの理由で言い表せられる。


人が隠し事をする理由、それは



周りとの関係が壊れるのを恐るからだ。



人は必ず、無意識のうちに周りと距離を測りながら生きている。クラスの人気者、教室の角で縮こまっている者。それぞれが他人との適切な距離をとっている。


隠し事はそれを手助けする、一種のツールの様な物だ。他人との関係を適切に保つ為のツール、とでも言おうか。


隠し事は、既に築かれている他人との関係を、それ以上変えない為に存在する。


そして、それは誰でも簡単に扱う事が出来る。だからこそ、人は隠し事をする。


しかし、その存在がバレれば、途端にそれは、人との関係を壊す悪魔と化す。


隠し事の存在は、人に不信感を与えてしまう。一度、その存在を認識してしまうと、きっと二度と元の関係には戻らない。


隠し事は、諸刃の剣の様な物だ。使い方を誤れば、自らを、仲間を、近しい人を傷つける。


そう考えれば、隠し事など無い方がいいのかもしれない。


しかし、人は何度でも隠し事をする。今度は上手くやる、今度はバレない、と。


麻薬の様な物だ。一度その有用性を憶えてしまえば、きっとそれからは逃れられない。そうして、何度も過ちを繰り返す。


多くの人が言うだろう。隠し事をするな、と。隠し事などなくなってしまえ、と。


だが俺はそうは思はない。


隠し事をするという事は、相手との関係を壊したくないという事であり、好意の裏返しともとれる。どうでもいい相手に隠し事などしない。大切な相手にだからこそ隠し事をする。


俺は、他人が俺に隠したい事があると察した時、少し嬉しく思ってしまう。少なくとも、その人の中では、俺は特別なんだと思えるから。


だから俺は、隠し事が好きだ。するのも、されるのも。その人が俺にとって、大切な人だと思えるから。


…いや、これは全て、ただの自己弁護だろうな。誰にも理解されないであろう俺の持論であり、俺の自己満足であり、自己中心的な考えだ。隠し事をする正当な理由をでっち上げる為のこじつけに過ぎない。


俺は弱い。他人に嫌われるのが怖い。周りの皆が、いなくなってしまうのが、怖い。


だから俺は隠し事をする。嫌われない様に。周りとの関係を護る為に。


存在がバレても、きっと俺は隠し続けるだろう。それ以上、関係が悪化しない様に。人との繋がりを失わない為に。


いつまでも、護り続ける為に。


だから俺は、いつまでも隠し通そう。いつまでも、いつまでも。


永遠に隠し通せる物では無いと分かっていながら、それでも、その時が来ない事を祈って。


ずっとずっと、隠し続けるんだ。



ただ、俺の為だけに。


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