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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 卯佐美 佳
第二章 俺はどうあがいても目立ってしまうらしい
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俺の努力の結果

実は晃は成瀬と以外で手を繋いだ事がないです。仁美は晃の服の袖を掴んでいたんですよね。

全競技が終わり、今は閉会式。

グラウンドに集まり、結果発表を聞いている。次はいよいよ総合優勝だ。


『第十七回体育祭、総合優勝は』


ドラムロールが流れる。ほんと、この数秒が本当に嫌いだ。盛り上がらせる為の演出とはいえ、待たされている方はたまったもんじゃない。焦らしプレイとか好きな人は異常だと思いますはい。


『総合優勝は、二年E組です!!!』


あれ〜?おっかしいーな。にねんいーくみ?いちねんびーくみじゃなくて?


ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛

お゛れ゛が゛ん゛ば゛っ゛た゛じ゛ゃ゛な゛い゛か゛よ゛お゛お゛ぉ゛!゛!゛!゛!゛



俺は絶望で膝から崩れ落ちた。


「あ、晃くん?そ、そんなに悔しいの?」

「いくら悔しいからって、そこまでの事?あと、恥ずかしいから立ってくれないかしら」


二人とも、別に俺は悔しいからこんな事やってる訳じゃないんだ。ただ、とある人との勝負に負けたという事が最悪だというだけだ、


視界の端にスキップしながら超ご機嫌でこっちに向かってくる人が映る。来ないで、マジ来ないで。


しかし、俺の願いとは裏腹に、彼女はやって来てしまった。


「あっきーらくーん♪私の勝ちだよ〜♪約束通りデート、よろしくね〜♪」


最悪だ。なんで俺は勝負に乗ってしまったんだ…。あの時の俺を殴りたい…


「それと、恵ちゃん。今度、よろしくね〜」

「わ、分かりました…」


そして、水無月先輩は去って行った。


ごめんな成瀬。俺が不甲斐ないばかりに…


「デート?どういう事?」

「どうやら体育祭の結果と関係しているみたいだけど…」

「その事なんだけど、実はね」


成瀬が二人に事情を説明する。すると、二人はいやらしく笑みを浮かべた。なんか嫌な予感。


「ねえ晃くん。あの人とデートするのよね?」

「あ、はい。一応、そういう話でしたので」

「あの人との相談はきっちり遂行するのに、私との相談はほっとくつもり?」

「い、いえ、そういう訳では」

「つまり、私との相談を破棄した事の責任を取ると?」

「え?いや、そういう訳では…」

「責任を取ると?」

「…はい。責任を取らせていただきます…」


怖いんだよ。そんな威圧的に言われると、拒否できねーよ。


「晃くん、私との相談も、覚えてるよね?」

「た、体育祭で勝つ…という事でしょうか」

「うん、それ。結局、勝ててないよね〜」

「わ、私にどうしろと…」

「責任、取ってくれるよね?」

「はい…そうさせていただきます…」


荒川にも弱みを握られてしまった。くっ…ころ…


『欲しい服とかいっぱいあったんだよね〜。でもなかなか機会無くて〜』

『私も欲しいグッズとかあったのだけれど、あまり自信なくて』


二人とも俺をパシる気満々じゃないですかヤダー。もうお腹痛い…


俺がぼーっと考えていると、成瀬にポンと肩を叩かれた。なにかしら。


「晃…生きて帰って来てね…」

「半笑いで言われても腹立つだけだよチクショー!」


ほんと、成瀬は俺で遊び過ぎだと思う。


――――――――――――――――――


体育祭全てのプログラムが終わり、解散となった今、俺は図書室に向かっていた。

いやほら、疲れたら癒しを求めたくなるじゃん。だからね?ストーカーですねはい。


図書室の扉を開け中に入るが、受付には天使さんはいなかった。流石にいないか。まあ、せっかく来たんだし、なんか本を見て行こうかな。


俺が図書室の奥に行くと、俺がいつも座っている席の正面に天使さんが座っていた。え、ちょっと待って?何で?ちょ、何で!?


天使さんは俺に気付くと、笑顔で挨拶をする。


「こんにちわ、白峰くん」

「こ、こんにちわ。天使さんは、どうしてここに?」

「白峰くんが来てくれるかなって。少し、お話したかったので」


天使さんが俺と話したいだって!?幸福で死にそうだ。というか、俺が来なかったらどうするつもりだったんだろう…


「白峰くんは、やっぱり凄いですね」

「俺が凄い、ですか?」

「はい。なんか、ヒーローみたいです」

「え?ヒーロー?」


むしろそのヒーローにやられる雑魚敵とか、その辺のモブキャラ打と思うけど…


「皆の期待に応えて、皆の相談を解決して、凄く、カッコいいです」

「そんな大層なものじゃないですよ。実際、相談は完全解決とはいきませんでしたし」

「それでもですよ。きっと二人は、白峰くんに感謝してると思いますよ」

「そ、そうですかね…」


天使さんにそう思ってもらってると思うと、嬉しい反面、少し恥ずかしい。


「成瀬さんの気持ち、分かる気がします…」

「え?成瀬の気持ち?」

「うぇぇ!?な、何でもないです!忘れてくださぃぃ!!」


真っ赤になって否定し出す天使さん(超可愛い)。ごめんなさい、私、割と耳いいから小声とか聞こえちゃう事があるの。気をつけてね。


というか成瀬の気持ち?あいつ、俺の事嫌ってたよな?それが分かるって事?え?俺天使さんに嫌われる様な事したっけ?

と、とりあえず、謝っとこ…


「え、えーっと…す、すいませんでした…」

「な、なんか、勘違いをされてる気がします…」


他の誰に嫌われても、天使さんだけには嫌われたくねーな。


突然、ドアが開けられた音がした。本棚の影から現れたのは成瀬だった。


「やっぱりここにいた。ほら、行くよ」

「やっぱりって…。俺の事詳しすぎない?やっぱり俺の事好きなの?」

「は、はあ!?だから違うって言ってるでしょ!最近あんたとばっかり一緒にいたから、嫌だったけど詳しくなっちゃっただけ!」

「嫌ってなんだよ…」


やっぱり嫌われてんじゃねーか。成瀬にも嫌われたくはなかったんだがな…


「で、行くってどこに?」

「え。打ち上げだけど」

「俺家帰ってゲームしたいんですけど」

「今日の主役が来なくてどうすんの。さっさと来る」

「お、おい!引っ張るなって!」


成瀬に手を取られ、強引に連れ出される。はぁ…。行くしかないか…


「天使さん。こいつ、借りていきますね」

「はい。楽しんで来てくださいね」


笑顔で見送ってくれる天使さん。はぁ…。癒されるなぁ…。



図書室を出て、成瀬に連れられるまま、打ち上げ会場に向かう。何故か手を取られたまま。


「な、成瀬。そろそろ手を離してもらえないか?」

「ダメ。離すとあんた絶対逃げるでしょ」


俺の事よく分かってんな〜。やっぱり俺の事好きなんじゃね?なーんてな。


まあ、美女と手を繋げて、嬉しくない訳じゃないし、むしろご褒美なんだけどね?手汗かいてないかしら…


「それに、も…少……け、繋……い……し…」

「ん?なんだよ。よく聞こえねーよ」

「何でもない。早く行くよ」


そう言って、成瀬は俺の手を引っ張り先行する。


きっと成瀬は、俺に打ち上げの楽しさを教えたいのだろう。友達とわいわいやる楽しさを。だから俺を打ち上げに連れていこうとしている。ほんと、お人好しだ。


「成瀬」

「ん、何?」

「…ありがとな」

「…どういたしまして」


成瀬は優しい奴だ。俺みたいな奴にも優しく手を差し伸べてくれる。


もしあの時、お前がいたら、あんな事にはならなかったのかもしれない。きっと俺は、お前に救われ、今とは違った結末になっていただろう。


きっと俺は、仁美を好きなままでいられたのだろう。


だが、恐らく、今の関係にはならなかった。


あの事がなければ、成瀬の過去を聞く事なんてなかっただろう。きっと今も、こうやって手を繋いでいるなんてあり得なかったはずだ。


それだけじゃない。鈴井と軽口を叩き合う仲にはならなかっただろうし、荒川を助けるなんて事もなかっただろう。


天使さんと同じ部活という状況もなかっただろうし、平沢や相坂とも今と違った関係だっただろう。


そして何より、健と今以上の関係になる事は絶対になかった。俺が、健に絶対の信頼を抱く事もなかった。健と、親友になる事なんてなかった。


いつか健に聞かれた事がある。過去をやり直せるとしたらいつから?と。

かつての俺は、


《あの時に戻りたい

俺が壊したものを直したい》


そう答えた。


だが、今の俺はこう答える。


《やり直したい過去なんてない》


と。


俺は今が最高に楽しい。

だからもう過去は振り返らない。

もう後悔はしない。



そして、もう同じ過ちは犯さない。



これにて、第二章は完結となります。晃、勝樹、仁美、それぞれの過去への思いを対比した様な感じになりました。伝わったかな…

そして、肝心のヒロインの方は、序盤中盤を鈴井と荒川、終盤仁美が出て来て、最後に成瀬が美味しいところをかっさらうという、まあなんともな展開になってしまいました。どうしてこうなった。

次回は天使さんメインの短編の予定です。穏やかな心で読んでいただけたらなと思います。

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