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第一歩 レールの上

人は、誰しも人生という名のレールの上を走り続けている。


そのレールが、どこへ向かっているのか、どれだけ続いているのか、誰にもわからない。


もしも神様がいるなら教えてください。

私は、私たちは、そのレールを外れてしまったのですか?


「秋には、受験を控えている生徒もいます。夏休みだからと言って、気を緩めず過ごすように。次回の登校日は…」


担任の先生のやけに長い説明を聞き流していると、スマホの通知がピコン、と小さく鳴った。


【父さんは昨日福岡に到着しました

終業式は無事終わった頃かな?

ひまりは何時発の新幹線に乗る予定かな】


ピコン


メッセージに続き二等身のおじさんが面白おかしく首を傾げているスタンプが送られてくる。


ひまりはお父さんと仲良いんだね反抗期とかないの?ってよく言われるけど、ないのかもしれない。わたしにはお父さんに反抗するっていうのがよくわからないや。お母さんが亡くなったのは、わたしが小さい頃。それから父さんは、お母さんがやりたがってたお弁当屋「ぽかぽか」を始めた。「ぽかぽか」って名前も、お母さんが決めたんだって。……そういえば、店の名前の由来、ちゃんと聞いたことないな。

何というか、お父さんに反抗してる暇があったら手伝いたいっていう気持ちが大きいのかも。わたしも平日は「ぽかぽか」のレジに入って働いてるし、もはや一緒に戦う仲間みたい。


最初は小さかった「ぽかぽか」だけど、今や夏休みのイベントに呼ばれるくらいに人気店になった。今年も無事イベントに呼ばれたことが嬉しくて、受験生なんだから今年は来なくて良いよなんて遠慮してるお父さんを振り切って手伝いに行くことにしたんだ。


「はい!それではここでホームルームは終わりです。皆さんにとって後悔のない夏にしてくださいね。」


私はできるだけ早い新幹線に乗るため、ガヤガヤとうるさくなり始めた教室をさっさとあとにした。



《この電車は、のぞみ号、博多ゆきです。途中の停車駅は…

自由席は1.2.3号車。グリーン車は8.9.10号車です。》


「なぁなぁ輝にい?グリーン車ってなんや?真緑色してんの?」


兄妹かな?さっき新大阪から乗ってきた子だ。

……グリーン車って真緑じゃないけどな。小学校低学年くらいの女の子が隣に座る高校生くらいの男子に、お菓子を広げながら可愛い質問を投げかけている。


「光、しぃ~!新幹線んなかはな、騒いだらあかんねん。もっとちっさい声でしゃべらな。んで、グリーン車は別に真緑やない。たぶんな、リッチな客が乗っとる。俺ら貧乏人は指定席ですらない自由席や。」


輝兄と呼ばれた男子は同じ自由席に座る乗客が聞いたら少しギョッとするような内容をコソコソと女の子に伝えた。かくいうわたしも自由席だけど。


《まもなく広島に到着いたします。お出口は左側です。…広島を出ますと、次は小倉に停車いたします。》


あ、そろそろお父さんに連絡しなくちゃ。スマホを取り出すとアンテナが立ってない。圏外か、トンネルの中なのかな?そう思って窓の外を見ると案の定、真っ暗だった。


今どのあたりにいるんだろ、次は広島だっけ?……まあ、いいや。とりあえず、メッセージだけ送っておこう。


【もうすぐ広島に着くとこ!】


送信ボタンを押す。

――送信できません。


「あれ?」


もう一度。やっぱりダメ。なんで?そのときだった。


ゴトン。


「……ん?」


新幹線が、ほんの少し揺れた。トンネルの中だし、これくらい普通かな。そう思った次の瞬間。


ガタンッ!!


「きゃっ!」


車体が大きく傾いた。


「な、なに!?」


前の座席から悲鳴が上がる。さっきまでお菓子を食べていた女の子も、驚いて手を止めている。


「輝にい……!」


「光!危ないからこっち来い!」


何が起きてるの?新幹線が、こんなに揺れることなんて――


ガガガガガッ!!


耳をつんざくような音。身体が座席から浮いた。


「え――」


次の瞬間、強い衝撃が身体を襲った。











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