↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秋葉原探偵社  作者: 茂谷村 秋良
PR
3/3

落合太

落合太


秋葉原を管轄している「万世橋警察署」は、朝から騒がしかった。

受付で男性が騒いでいた。

男性は「誘拐事件なんですよ!誘拐!『真鈴(まりん)』ちゃんが誘拐されたんです」

騒いでる男性はリュックサックの男性だった。

受付の警察官は無愛想に対応していた。

「その真鈴ちゃんは等身大人形なんですよね?でしたら窃盗になりますよ。」

「真鈴ちゃんは真鈴ちゃんで人形じゃないんです!真鈴ちゃんなんです!だから誘拐事件なんです!分かりますか?」

「分かりません!」

受付の警察官も呆れている、さっきから同じ言い合いを繰り返しているからだ。

「早く刑事さんを呼んで下さい!真鈴ちゃんが大変な事になってしまう!」

受付が機能しなくなる位に騒いでいる。

それの騒ぎを聞いた刑事課の「谷村圭一」 

が受付まで降りて来た。

谷村はノンキャリアで刑事になった叩き上げの人物で今年で28歳になるが、刑事としては、まだまだ新人である。

「どうしました?騒がしいのが上まで聞こえてきましたよ。」

「谷村刑事、ご苦労様です。」

受付の警察官は助けが来たと思い笑顔で迎えた。

「谷村刑事、こちらが誘拐事件を訴えに来た方です。」

受付の警察官は全てを谷村に押し付けようと必死になっている。

「では、こちらでお話を聞きましょう。

お名前は?」


リュックサックの男性はやっと話を聞いてもらえると思い少し落ち着き始めた。

「あぁ 名前は落合太(オチアイフトシ)と言います。年齢は24歳、住所は千代田区岩本町で仲間内では『フッキー』と呼ばれていて、得意なのは…」

「はいはい、名前だけで結構ですよ」 

谷村は話が止まらなくなると思い、中断させた。

「だいたい話は分かりました、帰宅したら真鈴ちゃんが家から姿を消していたと」

「そうです」

「落合さん、真鈴ちゃんが自分で外出した訳ではないですね?」

「刑事さん馬鹿じゃないの?一人で動く訳無いじゃん」

谷村は『殴りつけてやろうか』と心の中で叫んでいた、話を合わせいたが『馬鹿』呼ばわりされたのでは話にならない、この手の人種には話を全て聞いてやるのが基本であったのだが、谷村は話を終了させた。

「では捜査いたしますので、進展したら先ほど聞いた連絡先にご連絡を差し上げます。宜しいですか?」

「はい、それでお願いします。」

落合は素直に帰って行った、それを見送った谷村は、真直ぐ受付へ向かった。

「これを『遺失物届け』として出しといてくれ、あの手のは適当に話を聞いてやって帰すのが一番なんだよ」

谷村は調書を受付に渡し、二階へ上がって行ってしまった。


落合は素直に帰ったのではなかった、素直に帰った様に見せたのである。

途中で話を真剣に聞いてもらえてないと、空気で感じていたのである。

その時に思い出したのである、同じ様にフィギュアを集めている探偵を、成川の事である。

落合はウミオーから事務所までの道順を必死に思い出し何とか成川の事務所に辿り着いた。

階段を駆け上がり、秋葉原探偵社のドアを叩いた。

ドアの向こう側から女性の声が聞こえた

「はーい、どうぞお入りください」

事務所は成川が席を外していて、加奈子が一人で留守番をしている。

席を外しいると言っても成川は隣の『趣味の部屋』でフィギュアを眺めていたのである。


 急いでドアを開け落合は飛び込む様に入って来た。

落合は入った瞬間に動きを止めた。

「どうしました?こちらに御掛けください」

その声で落合は我に帰った。

「あの、『ぱんぷきん』のキャリさんですよね?」

「キャリ」とはメイド喫茶「ぱんぷきん」での加奈子の源氏名である。

加奈子は「ぱんぷきん」では気が強く、怒鳴っている加奈子では無く、大人しい可愛い女の子をしている。

加奈子は少し引き攣った顔をした。

まさかここで「ぱんぷきん」の客に会うと思わなかったのである。

「えぇまぁ、そうですけど」

落合は「加奈子」目当てで「ぱんぷきん」に通ってる常連の一人で、店では要注意人物としてマークされていたのである。

マークされてる理由は店の前で出待ちをしてるからで、従業員の安全を考える店側としては、落合が何か小さい問題でも起こしようなら警察に届けを出す準備をしていた。

可愛い女の子も気の強い女の子もどちらも「加奈子」なのである。


加奈子は落合を椅子に座らせた。

「こちらでお待ち下さい、所長を呼んで参ります。」

足早に加奈子は部屋を出て成川の趣味の部屋に向かった。

部屋の前で加奈子はノックするのを少し躊躇った、依頼人が落合だからである。

出来ればこの仕事を受けたく無いと考えている。


「お客様ですよ、仕事ですよ、早く出て来て下さい」


 ……反応がない 再度ノックをしてみるが、やはり反応がない。

中では成川は無視をしている、邪魔をされたく無いのだ、眺めている時間を少しでも長く取りたいのだ。

ドアの前の加奈子は苛立ち始めている。

加奈子は足でドアを蹴り始めた。

 

コンコンコンコン…

反応がない、力が強くなり


ドンドンドンドン…

成川はまだ無視を続けている。

加奈子は力一杯蹴り始めた。


バンバンバンバン!

「仕事だよ!早く出て来なっ!何時までも引き蘢ってるじゃないっ!」


加奈子はドアの外から罵声を上げ始めた。

成川はこれ以上怒らせると後でどんな目に遭うか想像すると怖くなり、ドアを少しだけ開け、様子を見ようとした。

加奈子が鬼の形相で立っていた「ヒッ」成川は加奈子の顔を見て声を出してしまった。

怖くなり、直ぐにドアを閉めようとしたが、加奈子が足をドアの隙間に入れてドアが閉まらない様にしたのである。

加奈子はドアの隙間から手を入れ、成川が引っ張る力の倍以上の力でドアを開いた。

「成川さんお仕事ですよ、お客様を待たせては悪いですよ、早く参りましょう」

優しい口調で語りかけてきたが、目が笑ってない。

「ヒャッ!」 

成川はその場で座り込んでしまい青くなった。

「あの加奈子さん」

「はいはいっ、早く来る!」

成川は何か言訳を言おうとしたが、言う前に腕を掴まれ引きずられる様に「趣味の部屋」から廊下に連れ出された。

「加奈子さん、後で『近江屋洋菓子店』の『苺サンドショート』をご馳走するので、機嫌を直して頂けませんか?」

「はいはい、それはそれで今は仕事です!」


 さっきまでこの依頼を受けて欲しく無いと考えていた加奈子だったが、成川の行動で頭に血が上ってしまい、すっかり忘れている。

 

子供の様に加奈子に引きずられながら成川が事務所に入って来た。

成川を椅子に座らせて、落合の話を聞かせる様にした。


「どの様なご相談でしょうか?」

成川は話を手短かに済ませて、趣味の部屋へ戻りたいと思いつつ、話を聞き始めた。

「お名前は?」

「落合太です」

「落合さんですね、前に何処かでお会いしませんでしたか?」

成川は落合の顔を見て、記憶の何処かに見た事があると判断したのだ、その辺は探偵らしく、記憶力が良い。

「えぇ、前にウミオー限定フィギュア販売日に一緒に並んでました。」

「あぁ、あの時の」

その時に加奈子が会話に割って入って来た

「また、仕事を放棄して並んだんですか!」

「加奈子さん、今はお話を聞いてますので、その件は後に」

成川は所長らしく、加奈子を止めたが後で叱責される事は間違いない。

「加奈子さん、お茶を入れて頂けますか」

加奈子を遠ざける為にお茶を入れさせた。

「では落合さん話をお聞きします。」

落合は一気に話し始めた。

「家に帰ったら、真鈴ちゃんが居なくなったんです、誘拐事件なんです。警察では話にならないので、こちらに相談に来ました。

真鈴ちゃんは…」

落合はマシンガンの様に話し始めた、


「だいたい分かりました、『真鈴ちゃん』は等身大のフィギュアなんですね。その『真鈴ちゃん』はあの『真鈴ちゃん』なんですか?」

「そうですあの『真鈴ちゃん』です。」

成川の目の色が変わった

「限定で美術品扱いになった『真鈴ちゃん』ですか、そりゃ大変だ!誘拐事件だ!」

加奈子が思わず声を出してしまった。

「はぁ?フィギュアでしょ?誘拐じゃなく盗難でしょう?」

成川が鋭い顔つきで加奈子に告げた。

「フィギュアには魂があるんです、魂がある事は人と同じなんです、立派な誘拐事件です。」

加奈子は呆れた顔をした。

「魂があって人と同じなら自分で移動したから捜索になるんでしょう」

加奈子は冷たく言い出した。

落合の依頼を受けたく無い加奈子は態度が悪くなって来た。

それ見たを成川は「自分の思考が加奈子さんを怒らせたと勘違いをし始めた。


「加奈子さん、もうパンプキンに戻られる時間ですよ。ここは大丈夫ですのでお店の方にお戻りになれれて下さい」

成川は加奈子を事務所から離れさせようと思い声をかけた。

だが、加奈子は首を横に振った。

「この件がある程度、纏ったら「ぱんぷきん」に戻ります。私が「ぱんぷきん」に戻らなくても大きな問題にはなりませんので」

加奈子は落合と成川を二人きりにするのは危険だと思い事務所から動かない事を決めた。

加奈子の出待ちをする危険な落合と一緒にしておけないと考えた

そこに落合は「私と一緒に居たいんですね♡」と加奈子を逆撫でる事を言い出した。

加奈子の全身に鳥肌が走った。

落合の事を、そこまで嫌っている加奈子だった。


「落合さん、警察には相談したんですよね?」

「はい、相談はしましたが捜査はしてくれるか分からない。話をちゃんと聞いてくれて無い感じだった。」

落合は谷村刑事が聞いてるフリをしてるの見抜いたのである。

「落合さん、これから居なくなった部屋をみせて頂いてもよろしいですか?」

「これから?部屋が汚いので掃除してからにして欲しい」

落合は他人事の様に話している。

オタク特有なのだろうか?

「落合さん、掃除はしないで下さい。痕跡が無くなってしまうかも知れません。」

「探偵さん、1時間後のお願い。用事があるから」

「分かりました落合さん、1時間後にご自宅にお伺いします」

成川は今日、新作フィギュアの販売日なのを思い出し、落合が買いに行くと想像していた。

落合は席を立ち、急いで探偵事務所から出て行った。

「成川さん!私も同行します。落合は『ぱんぷきん』で要注意人物なんで何するか分かりません。二人で行った方が安全です。」

加奈子は大きな声で成川に告げた。

「加奈子さん、そんなに大きな声で言わなくて聞こえますよ。ありがとうございます。では一緒にいきましょう。

二人は落合の自宅に調査に向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。