12話
「“逃走双魚”...
“獅子心臓”...
“美酒の給仕”、
確かこの三つに隠しテキストがあったはず...」
俺は、“賢者射殺ス神滅ノ矢”に、
特攻が発生していたことにより、
ゲーム時代はただのテキストであり、
実際の効果には反映されていなかったものが反映されている
そのことに気がつき、
うろ覚えのテキストを思い出し、
実際にどうなのか調べている
ランダム転移の“逃走双魚”、
これのテキストによると、何人も2人を分かたない...
つまり、マーキングする場所を、人にすれば、どんな妨害も無視するということか、
もしくは、転移するときに一緒に2人飛べるということか、
この転移はもともと単独転移だから、どちらでも有用
次に30秒の死後行動を可能にする“獅子心臓”、
これは、死なないと検証できないので一旦放置...
そして、“美酒の給仕”、
...の検証をしようとしたところ、
問題が発生した
検証はディマルクの背中の上、
移動しながらしていたわけだが、
再びアンデットが見え始め、
そして、
それと一緒に戦っている人間たちが見えた
しかし、
その人間たちの様子がおかしいのだ
人間は二組に分かれ、
片方はナイロンの現代的な服を着た
地球人であろう集団、
もう片方が、亜人含めた現地人であろう集団、
二組が協力してアンデットと
戦っているなら良かったのだが、
あろうことが現地人は地球人を追い回し、
アンデットと挟み撃ちする形で手に武器を持っている
流石に無視できないので、
ディマルクたちにアンデットの掃討を頼み
俺は間に入る形で飛び降りた
「武器を捨てろッ!」
高所から加速して降りた影響で、
かなりの衝撃が地面に加わり、土埃が舞い、
双方の動きが止まる
一応、話ができる状況にするために、
武器を持った、現地人の方にそれを捨てるように要求する
とはいえ、
相手はいきなり空から飛び降り、
いまだシルエットしか見えない相手のことを聞くわけもなく
しかし、
恐らく常人なら肉塊になるであろう勢いで落ちながら、
無事であり、地球人の味方に見えるため、
逆に警戒させてしまうことになっており、
それ故にいかに統率が取れているかがわかる
地球人はと言うと、敵なのか味方なのか、
それ以前に現状の把握ができていないためか、
混乱しており、現地人とは対照的に統率が取れてない
俺は“星見”という、
簡単に言えば三人称視点で見ることができるスキルで
見ることができているが、着地から10秒ほどで煙が晴れ、
人間ではない容姿を見た地球人は恐怖、
現地人はより強い警戒を示した
まあ、だからと言って、味方だと明言して、
彼らを安心させてあげることはない
事情を知らないからだ
もしかしたら、彼らは悪人...
もしくは知らず知らずのうちに罪を犯したのかもしれない
俺が飛び出したのは弱者救済、
ではなく勧善懲悪、
でもなく自己満足だ
弱さは免罪符にはならないし、
善悪は主観の問題、
なら見過ごすかと言われたら、答えは否!
「もしよかったら、なぜ、
彼らを追いかけるのか聞いてもいいかな?」
穏やかな口調を意識して話しかける
そのおかげなのか、それとも胆力があるからか、
現地人の方のリーダー的な男が返事をする
「あなたは何者だッ!...と聞きたいところですが、
どうやら貴殿は竜族と関係のある方のようですし、
強そうだ...。
なので提案ですが、共にその者たちを狩りませんか?
知らないかもしれませんが、
伝説にある世界の吸収があったようで、
チキュウ、という世界の人々は死ぬ際に結晶を落とします
その結晶は〜ー...」
...
つまりスキル狙いということだよな?
俺の見た目が魔族なせいか、
いかに地球人が優れた資源であるのかを熱弁する男
後ろでそれぞれの信仰する神に祈りを捧げる声が聞こえる
話をしている男以外の現地人、彼らは動きこそしないが、
地球人たちが逃げないかを監視しているし、
地球人はそれに気づいており、
刺激しないよう、走ったりはせず、ジリジリと下がっている
走り出しそうな人、腰が抜けて動けない人、を
抑え、引きずっているのは、
恐怖より理性が勝っているからだろうか?
こちらの顔色を伺いつつ、
聞いてもいないことをベラベラと喋る男のおかげで、
だいたいの事情は理解した
最初は保護、丁寧な対応で、地球人を迎え入れたらしい
対話可能な知性と理性をもっていたため、
言い伝え通りに、
万が一にも超越者を怒らせるようなことがないように、
...捕虜として使える可能性を残していた
そして、彼らは異なる文化に少しずつ慣れ、
人が増えたことによる問題や利益が生じていた
だが、不幸にも...
突如現れた謎の巨獣、
そしてそれが通った後に残されたアンデットの大群
交易路が絶たれ、命の脅威に晒され、
彼らは共に戦ったそうだ
...だと言うのに、
少なからず良好な関係が築けていたであろうに、
地球人は戦い、その中で経験を積み、
そしてスキルの欠片を生み出した
死ぬ時も、敵を倒す時も、
だから、当然、それが何なのか、彼らは疑問に思った
地球人に質問し、わからなければ検証する...そして
複数個をまとめると一つになることがわかった
まとめた一つを、出てきたときの反対、胸に押し付ければ
吸収でき、そして強くなることも分かってしまった
それは劇的で、
抗いがたい欲を増幅させ、
地球人“狩り”などという蛮行を許したのだ
だから、目の前の脅威を前にして、
先ほどの武器を捨てろという警告も無視して、
そして、
いまだに視線を後ろの地球人から離さないでいられる
代表の男、
彼は優秀なのだろう、
抗いがたい欲の中でも、ある程度理性的なのだろう
いや、理性が欲望と同じ方向を向いているからか?
だが、緊張ゆえか、
喋りすぎた
なぜ追いかけるかと問われたのだから、それに対して、
自分たちが生き残るためだと、
そのために殺さなくてはいけないのだと、
そう、最もらしい言い訳だけしておけばよかった
そうすれば、あるいは信じていたかもしれない
...
まあ、それができなかったから死ぬのだが
ブワッ...!
風が起こり、
血が舞う...
頭を砕き、脳を削り、
痛みを感じるままなく殺せたはずだ
...少なくとも、スキルを持っていなければ
身体能力の向上、動体視力の向上、
欠片10個分スキルなら、マークなら、
ギリ見えたかも...感じれたかも...
その程度の速度、その程度の力で、
ただ前に進み、手を伸ばし、破壊した
初めての人殺しの感覚は、
あっけなさすぎたからか、虫を潰すようで、
内にある感情は、
怒りや憎しみではなく、哀れみだった
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