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近くて遠くない

 その後は同じような日々が続いた。


 颯介は変わらなかった。普通に英語のプリントを持ってきたし、普通に笑いかけた。


 あの廊下のことは、なかったことになっていた。


 僕も、なかったことにした。


 近いようで近くない。でも、遠いとも言えない。そういう距離がずっと続いた。


 それが心地いいとは思わなかったけど、壊れてもほしくなかった。


 健吾と木村が、宮田にやたらくっつくようになっていた。


 健吾は肩を組むし、木村はよくうざいくらいに宮田に話しかけていた。


 宮田は面倒くさそうにしながら、ちゃんと相手をしていた。


 ある日、僕もその輪に入ってみた。


 宮田が廊下に立っていて、健吾と木村がわいわい騒いでいた。


 僕はその少し後ろから「何してるの?」と声をかけた。


「蒼も来いよ」と健吾が言った。ありがとう健吾!いつもドジだけど!


 体が少し温かくなった気がした。


 あの体育館の感覚に似ていた。


 違う種類の温かさだったけど、根っこは同じだった気がした。


 周りに自分たちがどう見えていたか、知らない。気にしたくなかった。


 宮田、健吾、木村、僕の4人でたまに遊ぶようになった。


 カラオケにも行った。


 宮田が静かな恋愛バラードを歌っていた。


 その歌声は僕にとっては、子守唄のような、天使のささやきのような、そんな気がした。


 あとで、健吾にその話をすると、「何言ってんの」と不思議がられた。


 冬になった。


 宮田はまた誰かに告白したらしかった。今度は2年の田中、バスケ部のマネージャー。


 田中は静かな子だった。宮田と並ぶと絵になった。


 今度は続いた。2ヶ月くらい。


 宮田の横顔が、少し違う気がした。


 木村は「いいじゃん、似合うね」と言った。声は普通だった。


 僕は何も言わなかった。


 健吾は「蒼、英語の宿題見せて」と言ってきた。

 いつも通りだった。


 春が終わる前に、宮田と田中も別れたらしかった。

 理由は聞かなかった。


 宮田は翌日も普通にいた。笑っていた。周りに話しかけていた。


 どうしてそんなに平気でいられるんだろう、と思った。


 でも今度は、平気じゃないのかもしれない、という考えは浮かばなかった。


 宮田は、きっと前に進んでいる。毎回、ちゃんと前に向いている。


 僕はどうだろう。

 わからなかった。

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