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追放ヒーラーですが【発明者が医師】なのでガトリング砲を使います!  作者: とらいぽっど
ドッカン◇石になっちゃった!? 古城のふしぎな番人!

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扉の向こう

地下に戻る前に、テアが着替えを終えていた。


リリアが渡した予備のチュニックと上着。その上にゲルトが出した古い麻のローブ。臭いのない布で何枚も重ねて、それから下に入った。


回廊に戻ると、テアが足を止めた。


「臭いがします」


「壁硝の臭いじゃないのか」


「違います。もっと奥から」


ゲルトが袋を持ち上げた。「行けるか」


「この先に、地図にない場所があって。一人だったので引き返したんですけど」


ヴェルナーが弓を手に持つ。


ゲルトが頷いた。





天井が高くなる。柱が途切れる。足音の返り方が変わった。


ゲルトが壁に手をあてた。


石の継ぎ目。隙間がない。漆喰が剥がれていない。


手を離して、天井を見る。梁の金物。錆びてはいるが、まだある。


何も言わず、また歩く。


床に、石の塊があった。


崩れている。白い粉が周りに散っている。翼のような、そうでないような形が残っていた。


ゲルトが一度だけ見た。


また歩き始めた。





もう一つあった。


壁際に。柱の陰に。


これも崩れている。こちらの方が大きかった。床に食い込んだ爪の跡。長い引っ掻き傷が石床を走っていた。


ヴェルナーが立ち止まる。傷を一度見て、また歩く。


何も言わない。


もう一つ。また一つ。


奥へ進むにつれて、増えていった。





階段を上がった先に、広い部屋があった。


壁硝が一面に積もっている。手つかず。テアが正しかった。


部屋の奥に、もう一つの扉があった。


閉まっている。


テアがロッドを構えた。


「いる」





扉が、内側から開く。


翼がある。四肢がある。人ほどの高さ。石の肌。風化して白い。


ゲルトが荷棒を持つ。ヴェルナーが矢をつがえる。


リリアは動けなかった。石像ではなかった。目が、光っていた。





テアが息を吸った。


「どいてください」


「待——」


火の玉が出た。真っ直ぐ飛んで、ほんの少しも揺れない。


ガーゴイルの、三歩右の壁に当たった。


石が焦げた。それだけだった。


テアが目を閉じる。一秒。「……なんで」


ガーゴイルが腕を振った。テアに当たった。重い音がした。テアが吹き飛んで、壁に背中をぶつける。床に落ちた。


リリアが駆け寄った。


「テア」


「……大丈夫です」


喋れた。目が開いている。ただ、立てない。





ローブがずれていた。上着もずれている。


布の層が一枚多い。硬い。キルティングの格子模様。

キルテッドアーマー。モンクが打撃に備えて着る鎧だ。

あの一撃を受けて、これが助けた。


キャスターのテアがなぜ。


テアが気づいて、目を逸らした。


「捨てられなくて、ずっと着てたやつです」


袖をめくる。薄灰色の布の手甲。細い縁取り。


「最下位の印です」声が平坦だった。「ヒーラーになれなかったので、護身だけ習って」


それだけ言って、ロッドを床に置いた。


床に手をついて、立った。


足が変わった。重心が下がった。リリアが知っているキャスターの立ち方じゃない。


「こっちなら当たります」





ゲルトが荷棒を叩きつける。弾かれた。ヴェルナーが射った。矢が折れた。


二人とも正面に立てない。視線を外しながら動いている。


テアが見ていた。


「なんで目を合わせないんですか」


ゲルトが答えない。


「今って教えてください」


ゲルトとヴェルナーが目を見合わせた。


「やれるか」


「当てられます」





ヴェルナーが横から矢を射った。視線が動く。ゲルトが正面から荷棒を叩きつけた。ガーゴイルが振り向く。ゲルトが後退した。


視線が散った。どちらを向くか、一瞬止まった。


「今」


テアが踏み込んだ。


正面から。目を見たまま。右の拳を腰まで引いて、全体重を乗せる。


ガーゴイルの胸に、叩き込んだ。


石に当たった音がしなかった。





城が、低く震えた。


ガーゴイルの足が、止まった。腕が下がる。頭が、わずかに傾いた。


静寂。


地響きが収まった。


ガーゴイルが動く。後ろに、一歩。また一歩。壁まで下がって、止まった。


テアが、一撃を入れた姿勢のまま動かない。


右腕が前に伸びている。足が踏み込んだまま。


「テア」


返事がなかった。


ガーゴイルの目が、テアを向いていた。石の目が、濡れているように見えた。

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