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追放ヒーラーですが【発明者が医師】なのでガトリング砲を使います!  作者: とらいぽっど
ドッカン◇石になっちゃった!? 古城のふしぎな番人!

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それぞれの朝

翌朝、ギルドへ行った。


朝の掲示板には人だかりができていた。討伐と護衛の票から順番に抜かれていく。リリアは後ろから手を伸ばして、残ったものを確かめた。一人で受けられる採集が一枚。報酬が安い。薬草の種類が難しい。


受付に声をかけた。


「他に採集の依頼は出ていますか」


受付が帳面をめくった。


「壁硝の採取が出ています。昨日の夕方に。備考に——採取補助として依頼人も同行、とありますので、ヒーラーをご指名です」


依頼人の欄を見た。ゲルトの名前があった。


依頼内容:古城地下回廊における壁硝採取。採取量:袋二杯分。報酬:銀貨四枚。備考:採取補助として依頼人も同行。


受け取ろうとしたら、隣に人が来た。同じ票を見ている。ローブの裾に回復薬の革袋が下がっていた。ヒーラーだ。


「あ、すみません。こちら先に」


相手が一瞬止まった。それから頷いて、掲示板に戻っていった。


採取にヒーラーはいらない。でもこれは昨日の夕方に出ていた。朝になっても、誰も取らなかった。





少し前に、ゲルトに直接依頼してもらう話をしたことがある。ギルドを通すと手数料が引かれる。短い仕事なら直接でいいと思った。


ゲルトは首を振った。


「ギルドを通せ。手数料を惜しむな」


「でも——」


「お前が一人のヒーラーとして稼いでいくなら、ギルドとの実績を積む方が先だ。直接契約は信用があってからやるものだ。それに」


少し間があった。


「ミラの世話をギルドに頼んでいる間は、お前がギルドの仕事をしていた方がいい。向こうも動きやすい」


先のことまで、ちゃんと考えてくれている。





出発の前、厩舎でグレイとモリーに荷を積んでいたら、ミラがイルゼのところへ向かう時間と重なった。


ミラが厩舎の前で足を止めた。リリアを見た。


「……行ってきます」


「行ってらっしゃい」


フリッツがミラの後をついていった。二人とも振り返らなかった。


グレイの腹帯を締め直した。


フリッツが角を曲がって、もう見えなかった。


ミラさえ望めば、この町に残れる。イルゼのところで住み込みで働ける話が、裏で出ていた。ゲルトたちが帰った後も、輸送隊はこのルートを月に一度か二度は通る。ハイディが眠っている岩まで、日帰りで行ける距離だ。


悪い話じゃない。


あの大きな蜘蛛が来た時、ミラは逃げなかった。足が動かなかった。


だから何も言えない。


ミラは何も知らない。まだ、何も。





古城は町の北東にある。街道を外れ、獣道に入る。


「壁硝って、どこでも採れるものですか」


「採れる場所が決まってる。古い石の建物の地下だ。湿気があって、空気が通って、誰も踏み込まない場所じゃないと積もらない」


ヴェルナーが前を歩いている。一定の間隔を保ったまま、振り返らない。


「どのくらいかかるんですか」


「早くても百年はかかる」


木の根を踏んで、斜面を上った。


「薬屋で売ってるのと違うんですか」


「家畜小屋や洞窟にも似たようなものが出る。口に入れる薬には使えない。古い石壁から採れたものじゃないと駄目だ」


「難しいんですね」


「場所さえ知っていれば、採る手間はたいしたことない」


しばらく黙って歩いた。


「……ルッツのためですか」


「薬屋で買うと高い。急に熱を出した時に使うものだ。あの町の在庫だけだと心もとない。軽いから荷にもならん」


それだけだった。


二つ目の丘を越えたところで、木の隙間に石の塔が見えた。





近づくにつれて、風の中に何かが混じった。


「食べ物はここに置いていく」とゲルトが言った。「中は湿気が溜まりやすい。傷む」


城壁の外、岩陰にグレイとモリーを繋いだ。荷もそこに置いた。干し肉と乾燥した果物だけ取り分けて、革袋に移した。ゲルトが水筒の代わりにワインの小瓶を持った。


「パンは持ち込むな。臭いが移る。食べるなら今のうちだ」


岩に背をあずけて、立ったまま食べた。空が白い。風が冷たい。城が、ずっとそこにある。


ゲルトが道具を確かめた。はけ、板、袋、照明用の油。


ヴェルナーが城の外壁をぐるりと歩いた。


「入れる箇所は一つ。窓は三箇所、どれも人は通れない」


「獣の痕跡は」


「古い。今はいない」


ゲルトが頷いた。





南側の崩れた壁から中に入った。


足音が変わった。石に響いて、妙な方向から返ってくる。細い窓から光が差すが、足元まで届かない。一歩ごとに明るい場所と暗い場所を交互に踏む。


空気が変わった。湿っていて、少し重い。特に臭うわけではないが、ここに食べ物を持ち込んではいけない気がした。


「足元に気をつけろ。石が浮いてる」


ゲルトが後ろから言った。リリアは一歩ずつ確かめながら進んだ。


ヴェルナーがいつの間にか弓を手に持っていた。





地下への階段を降りた。


回廊に出た。天井が低い。柱が等間隔に並んでいる。


壁が光っていた。


「わあ」


思わず声が出た。白い結晶が一面を覆っている。細かい粒が石の隙間から吹き出している。触れると指に粉がついた。舌に乗せると、かすかに塩辛い。


「これが壁硝ですか」


「そう。鼻でわかるようになると早い」


ゲルトが板とはけと袋をリリアに渡した。「はけで払う。板の上に落として袋に移す。力を入れると石くずが混じるから、なでるだけでいい」


「やってみます」


ゲルトは入り口に背を向けて腕を組んだ。ヴェルナーは奥を向いたまま矢をつがえた。


リリアははけを動かした。


白い粉が板の上に落ちた。思ったより音がしない。静かな作業だった。結晶はすぐに落ちる。ただ量が必要だった。柱から柱へ、少しずつ移りながら、なでて、落として、袋に移す。


「こんな感じで合ってますか」


「ああ」


ゲルトは動かない。ヴェルナーは動かない。


リリアだけが動いていた。





「おかしいな」


ゲルトが壁を見た。結晶が薄い。さっきの列と比べて明らかに少ない。


足元に靴の跡があった。小さい。リリアたちのものではなく、奥へ向かっている。


「誰か入っていますね」


「最近だ」ゲルトが声を低くした。「見てみろ」


柱の根元に野宿の跡があった。灰がある。毛布の形が砂についている。空になった革袋が一本。白いパンのかけらが砂の上に転がっていた。齧った跡がある。


ヴェルナーが革袋を拾い上げて底を嗅いだ。「一人だ。昨日か一昨日、ここで夜を明かした」


ゲルトがパンのかけらを見た。「ネズミも来ない。臭いで食えなくなって捨てたんだろう」


「まだいるんでしょうか」


足跡は、まだ奥に続いていた。


回廊の奥が、ぼんやりと明るかった。





ヴェルナーが足を止めた。片手を上げた。


三人とも止まった。


ヴェルナーが奥を見た。しばらく動かなかった。それから、また一歩進んだ。柱の陰に入った。もう一歩。


止まった。


「人だ」





壁にもたれて、膝を抱えていた。頭が落ちて、胸の方へ傾いている。


最初に気づいたのは、髪の色だった。暗がりの中でも色がわかる。白に近い、亜麻色。汚れていて、乱れていて、それでも——消えかけた蝋燭の明かりが当たるたびに、どこか柔らかみのある色をしていた。


顔は若い。まだ少し、丸みが残っている。


こんなところで、一人で。


死んでいるのかと思った。


膝をついて、首筋に指を当てた。


脈がある。弱い。でも、ある。


「生きてます。でも——」


皮膚が冷たい。手の甲の骨の輪郭が、触るとわかるほど細くなっていた。


光を手のひらから滲ませた。


——吸い込まれない。


砂地に水を垂らしたような手応えだった。魔力は届いている。でも何も引っかからない。傷がない。骨が折れているわけでもない。回復する「何か」が、どこにもない。


もう一度。消えた。もう一度。消えた。


「なんで。なんで効かないの——」


手首を掴まれた。


ヴェルナーだった。静かな力で、リリアの手を止めた。


「無駄だ。その子は回復魔法では救えない」


「でも意識がなくて、脈も弱くて——何か傷があるはずです、もう一度——」


「それ以上は魔力の無駄だ。その子は——」


ぐぅ。


回廊に、場違いな音が響いた。


まだ目を閉じたままだったが、眉がかすかに動いた。寝ている人間の、気まずそうな眉だった。


「その子は、腹が減って動けないだけだ」

いつもの時間に更新できず

翌日になってしまいました。


最新話を追っていただいている皆様

ごめんなさい!


執筆をやめた等ではないのでご安心ください!

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