奇跡の代償
━━━闇。
大陸中を覆う魔気とは、アビスに落ちた大陸では、魔力が変質した存在とされていた、
魔気を魔人が精製すると。魔素と言う物質となり、強力な闇の魔力へと変質する、ここまで変質させると普通の生物には猛毒となるが、アビスの生物にとって力となるのだ。その為人間界の大気に、魔気を放出して、人間界を蝕んでいくのが相応しい。
━━中央大陸。
元赤の民の都。
魔素に染められた神殿は、元の白亜に輝く美しい姿を失い、暗い怨念によって変わり果てていた。
━━元は、太陽神の神殿だったが、
今や……。
闇の女神カーレルを心棒するもの達の神殿となった。
変わり果てた民達は、醜悪な姿をしていた、爬虫類のような造形をして、髪を失い、口を開けば、ノコギリの肉食獣のような牙が並び、灰色の皮膚は、魔素で、焼け爛れ。悪臭を放ち、嗄れた言語を使う。
『ビスタスが殺られたと?』
古き、神殿のような建造物。眠りについてる闇の女神カーレルの神殿内。
『まさか……、神の遺物を使いし者か?』
神官の宮司のように、魔物の毛皮を身に纏う魔人は、
遥か昔━━━、
太陽神アセードラの大司教の任にいた者だった。
その昔。美しい風貌をした一族でも有数な実力者で。赤の民の王の下で、長の一人となった程であった。
赤の民とは、生まれ落ちた瞬間。魔力の強さにより。
階級が定めらる。それゆえに双子の兄を。大司教だった男は妬んでいた。
━━あの運命の日。
アビスに墜ち、魔人となった後ですら、兄と兄を選んだ人間の女を恨み。妬む……。
そう━━レイアスの策謀に荷担した。元赤の民達は、姿と同じく、醜悪な心を抱き、神が愛した豊かな生命を、変質させ冒涜する欲望を抱いた。
━━そしてついに。赤の民の長達であった。他の7神官の助力を得て、兄王を、排斥して、長年の夢であった実権を握った━━。
欲望のままに生きた大司教は、一夜限りの王となって、贅の限りを尽くした。
━━増長した大司教は、神を罵り、呪うような言葉を吐き出しては、哄笑した……、
それゆえ神々の怒りを買い、闇に墜とされ、その魂と存在すら変質していた。
━━それでもなお。赤の民の多くは欲望のまま魔人へと変わり果てていた。レイアスは新たな冥界の民の王となっていた━━、
━━━未だ……、
中央大陸を纏う、神々の結界に阻まれ。外界に出られず。歯痒く思っていたが……。
ようやくだ。力ある7神官だけだが、我等魔人を、送り出した矢先のことだ。
まさか一人が倒されようとは……、
『神は、我々を赦さぬか……』
怨差を呟き、瞳を恨みを宿し暗く光らせ。忌々しそうに舌を鳴らした。
魔人の王の名をレイアスと言い。
━━遥か昔。赤の民の王を妬み。人間を唆して、反乱を画策。それが失敗したら、白の女王を暗殺したのも。レイアスであった……、
レイアスと双子兄王プロキシスは、1人の人間の女を愛してしまった。
しかし……。
人間の女は、兄を選んだ……、
兄が王だから……、
兄はいつもいつも……、
大切な物を奪う……、
レイアスは思った。赤の民の階級が、女は兄を選んだのだと。
だから兄を選んだ全てが……、神々すらを赦せなかったのだ。
だからレイアスは、墜ちたのである。
『この世界を必ずや……、必ず破壊してやる』
椅子に使用していた。サイクロプスの骨を力で砕きながら、魔人の王は、慟哭した。
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━━━太陽神が放った。神の奇跡による膨大な浄化の光が……、
徐々に薄れ……、
大地に、クレータを穿った。
━━神の奇跡。
中央大陸とつながっていた。
もう一つの扉。扉と言うより狸穴ごと消し差っていた……、
大物が何体か、結界を抜け出したようである。怒号が、ナタクの元まで聞こえてきた。
「アレク……、今度こそ、そちらに行くよ……」
自分と同じような境遇だったアレクは、最後まで、人間の世界を愛していた……、
まるで彼奴の母、白の女王のように……、
「アレクと初めて会った日は……」
素晴らしい光輝くような。そんな天気の良い。そんな日だった……。
ナタクは忘れない。初めてピアンザの妻シレーヌ王妃を見た時……、
アレイク王国のミレーヌ王女の存在を知り、一目見た瞬間理解していた……、
「願いは叶った……、母様……、アレク……、ま……た……」
二人を見て、酷く懐かしかった━━━。
━━━二人の見目は違う、でも白の女王の血を受け継いでるのは直ぐに判った……。
二人は間違いなく、白の女王の子孫だと……、ナタクは地下迷宮の旅を得て、アレクと出会い。白の女王の元で暮らした。
まるで本当の母のように慕った。アレクとは幼馴染みとして、本当の兄弟のように育った。ナタクは知らなかった。ハーフが住む隔離地区で、物心ついて間もなく母は死んでいた。だから自分が、赤の王の子息であること。知らずに育っていた。
父が秘かに白の女王に計らい、ナタクの事を頼んでいたことも━━。
━━それを知ったのが、120年前の異変の時だった……。
魔物が、凶暴になり、海中都市をも襲われ、あわやの時。白の女王が、その身を犠牲にしなければ、アレクとナタクは殺されていただろう……、
━━遥か昔の話だ……、
戦場を見渡したナタクの脳裏には、アレクが造りだした国の民と。共に戦う日が来ようとは……、
不思議な感覚である。大地を埋め尽くした魔物の群れは、数を減らしてゆく。
ナタクは満足そうに、剣を手放していた、
「これまでのようだ……、アレク……」
力を使いすぎていた……、
最早聖王の剣を、維持する力すら、失い掛ける。
やがて……、静寂が訪れていた。
歓声が上がる。
ナタクは、満足そうに微笑しながら……、その長き生を、終わらせた。
オーラルが駆けつけた時、沢山の人に見送られ。ナタクは微笑しながら、絶命していた。傍らに添えられた白銀の剣が、ナタクの墓碑のように、突き立っていた。
戦乱を呼び。
━━数多の死と混乱を招きながら、聖騎士と呼ばれたナタク、今こそ苛烈な男のために静かに冥福を捧げた……、
後を聖職者に任せ。オーラルは前を見守る。
「本当の災厄に備えなければならない」
決然と歯を食い縛り。後ろを振り返らず。ナターシャ女王のいる陣営に向かった。




