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少尉ですが何か?改修  作者: 背徳の魔王
英雄ですがなにか?
66/123

閑話 軽い男ですが何か?

プロローグ



━━今から数ヶ月前。オーラルが、

カレイラ師団第一分隊に入隊して、間もなくのこと……。



━━オーラルの任官した第一分隊に一つの命令が下る。ミレーヌ王女の護衛と言う名目上の魔王ピアンザの眼を向けさせる策略だった。



王都カウレーンを出ると幾度もの襲撃に晒されながら。オーラル達はどうにか無事。誰も欠けることなく。王女の馬車を東の国境にある。城塞都市ベセルまで、届ける事が出来た。



━━そこで第一分隊の仕事は終わらなかった。他の師団内にある護衛任務を任せる部隊に比べると。まだまだ新しいカレイラ陸戦師団の将校には、経験値が足りないと判断したケレル殿下とカレイラ准将は、様々な経験をさせる方針であった。そこで人数的に少ないフロスト騎士団の代わりに、東の国境付近の小さな村々を見回る。巡回の任に着かせることにした。



最初こそ部隊として足りないものばかりの第一分隊の面々だったが、ある事件をきっかけを境目に。目に見えて変わることになった。オーラルの行った隠し事が原因だったのだが……、



━━第一分隊の面々が、翌朝見たのは、穴が所々空いた。ボロいホロが一応付いた。中古馬車であった。


「流石に落差がありすぎるね~」


珍しく苦笑したカールと絶句したクエナ。何も考えてないミラはさっさと先に乗ると続いてエルも分厚い本片手に乗り込む。オーラルも流石にどうかと思ったが、馬も今回はないので青白い顔のアロ中隊長の分だけで、仕方なさそうにカール、クエナも乗り込むと。無言でオーラルが手綱を操り。馬車を走り出させた。



━━それから色々な問題やちょっとした事件に遭遇しながらも。最後の山間の村に着いたのは、

城塞都市ベセルを出て、10日が過ぎた頃になる……。



小さな村は、何処にでもある。素朴な朗らかな笑みが、とても似合う田舎の農村にしかみえない住人逹。


優しくほがらかな村長は、パン屋の店主が兼任していた。わざわざ自ら率先して駐屯所である小屋まで案内されて。世話役にと素朴な印象に反して、男好きする肉体をカールに押し付けてきゃぴきゃぴはしゃぐ。村長の娘レイカを紹介されると、鼻の下を伸ばしたカールに。ムッとした顔で我慢できなくなったエルは、カールの脇腹をスタッフの先で痛打を放つ。


「……エル……、スタッフの先は止めろよ」


「ふん」


痛みにのたうち回るカールに驚いて、目を丸くしていたが、一瞬レイカが見せた、冷たい眼差しをオーラルは見逃さなかった。



この村の真実を理解したのは、レイカから手紙を受け取っていたからだが、深夜になって皆が寝静まった頃。


「あっ、あんたね……、あの僅かな視線で、気が付いたっての?」


夕食に食べたパンに、睡眠薬が混ぜられてたのに気付いたオーラルは、一人だけパンを食べずに。夜陰に紛れ。パン屋の娘レイカが、動くのを待ってた。


背後を取られて、青ざめるレイカに、肩を竦めながら。


「そりゃ黒衣の一族だからね?」


あっさり悪戯が見破られてしまい。

悔しそうに唇を噛んでいたが、小さく息を飲んでから未だに気付かないレイカに、流石にオーラルも呆れていた。


「ちょ、なっ、何んでそんな顔をしてる訳よ?!、今の呆れた顔は何のつもりかしら?」


オーラルに対して警戒を顕にしていた。最初から終始こんな感じでは、本当にあの黒衣の一族かと呆れてしまう。


(噂とは違いすぎる)


駄目ップリに、些か拍子抜けしただけである。澄ました顔を取り敢えず作ったレイカだったが苛立たしさは隠せない。


「クッ……、何かばかにされた気がするわ」


目の端に涙が浮かぶ。素直に頷きそうになったが、意思の力で、動かさないでおいた。不機嫌そうなレイカの視線が、頬に刺さったからだ。


「カレイラ准将からの命令よ!。黒衣の村の側に、魔王の配下の隠れ家を見付けたから、直ちに殲滅せよ。だってさ」


「わかった」


「それじゃ、敵の隠れ家に案内するからね」


凄まれたが、視線を合わせず咳払いで済ませ、

黒衣にすら気配を掴ませず。潜んでいた人物に向けて声を掛けた。



「━━そろそろ。出て来いよカール」


上手く隠してるが、視覚魔法の綻びに気が付いてたオーラルは。レイカの後ろに、視線を送る。


「はあ?、あんた何を言ってるわけ、誰の気配も無いわよ」


訝し気な眼差しでオーラルを侮蔑を込めて見て来たが、オーラルは気にせず視線を固定していた。


「あんたね私は黒衣の小頭よ。そんなウソなんて簡単に見抜けるんだから」


仕方ないわねと溜め息を吐いて、オーラルの見てる先に目を向けてから、


「居るわけ無いわよ。私に気付かれずに……」


首をかしげ。訝しげに眉を寄せてると。レイカの視線の先に僅かな揺らぎが現れた。急に魔力の反応がして、ハッと息を飲んでしまう。


「や~。悪いなオーラル。本当はやり過ごすつもりだったんだよ~。本当に悪いねオーラル~」


バツが悪そうに、ウインクしたカールを見て、血の気がひくレイカに、パタパタ手を振りながら、


「何となく解ってたって、言ったら怒る~?」


鋭い眼光。不敵に笑うカールは、昼間見た。軽いだけの軽薄男とは、別人であった。


「あんた……、本当に、さっきと同一人物?」


まじまじカールの足の先から、頭のてっぺんまで見て、失礼なことのたまう、


「カールなら仕方ない。黒衣の隠れ家を知る立場にあるからね」


あっ思い出したようだ。


「エレーナ大司教様のどら息子……」


理解したようだ。


「仕方ないカールにも、同行してもらうか」


仕方ないとばかりに、オーラルは最初から気付いてたが、変わり始めたカールの気持ちについて、



ようやくカールは自分の弱さを認められる男になっていたのだ。でも未だに軽薄な男を演じてはいたが、オーラル以外にはエル位しか気が付かない徹底ぶりに隠して来たのだが、


(エレーナ母様……、良かったね)


カールが変わろうとするなら、オーラルは喜んで手を差し伸べようと決意していた。


「うっ……仕方ないわね。足手まといにならないでよ?」


「はいはい~」


お気楽に返事をするカールを。


「きっとさっきのは目の錯覚だったんだわ……」


首をフリフリ。頭を振るレイカ、小さく笑いながらオーラルはレイカの後に続いて、夜の森を駆け出していった。




━━━━━━━━




━━村から、森の奥の小さな小川を抜けると、山間に出た。


「この先を登ると湖があるのよ。数十年以上前までは、王家の隠し金山があったの……、今は硝石を多く含む。土くれが取れることが、分かってるくらいね……」


先のミレーヌ皇女を襲ったテロを関連付ける証拠を述べた。


「貴方が、幻影の魔女ラグラド、緑眼の騎士ギラムを、撃退したのは姉から聞いてるわ」


「手薄な内にて、ところかな~」


軽薄そうにヘラヘラ笑うカールを嫌そうに睨む。


「そうよ……、今の内に、彼等を排除したいのよ……」


黒衣としては……、口内で言葉を呑み込んだ。


「こっちよ…」


夏の花。灌木の間を抜けると。強まる雑草の匂い。張り出した樹の根に気を付けながらしばらく歩いていたら。


レイカが何も無いところで、足を止めた。言われなければ気付かないような。ほんの僅かな空間の乱れを感じていた。


「僅かだね~。気を付けても、気が付くかどうか~」


意外な毎に。軽薄男の方が、先に気付いてた、ちょっと意外そうな顔をしてるレイカに、


「俺は~回復系の修行してたから、魔力を感じる感覚が、それなりに強いんだよ~」


「それは……」


さっきのこともあって、嘘を感じなかった何より。姉ノルカの報告書にも、記載があったからだ……、



バツが悪そうに。頭を描きながら。


「結果として~補助系魔法が、あってただけなんだけどな~」


「カール行けそうか?」


結界を調べてたカールは、肩を竦めながら、


「此くらいならね~。エルのスパルタ式結界より簡単かな~」


「なっ……」


そんな単純な結界ではない。軽薄そうにヘラヘラ笑ってたカールは、手袋を外して、数秒何等かの魔法を唱えていた。


「しばらく穴を開けとくから~、中腰に入ってよな~」


あっさり結界に穴を開けて見せた。


「こんな軽薄男が……」


つい本音がぽろり。


「ん~本音でも。内緒のが、嬉しいよ~」


苦笑を漏らしながら、カールが先に、オーラル、レイカが追従した。


「オーラル今気が付いたが、武器持ってないよな?、使うか」


ナイフを差し出す。少し考え。ナイフを受け取り、手近な樹から、小枝をナイフで落として、葉っぱを丁寧に集める。


「これで十分……」


ナイフを返して、葉っぱを懐にしまっていた。


「はっ?ちょっ……」


声を上げようとした瞬間、手で口を塞がれた、それも二人に……、屈辱に真っ赤になるレイカだが、



━━灌木の先に……、人の気配を感じた、


「相手は五人、2人行けるか?」


カールは一つ頷く。


「1人頼むぞ」仕方なくレイカも頷いた。


オーラルは音もなく、気配すら消して、木の葉の揺れを利用して見張りの死角をついて移動する。背後の二人を狙うつもりらしい。


「あんたは俺が、二人を相手してる間を狙えよ~」


最初からそのつもりだったのだが、しゃくだけど素直に頷いていた。



━━カサリ、くぐもった声がして。二人が倒れた瞬間。



━━カールが飛び出しナイフを投げた。見事狙った相手の喉を突き刺さり倒れた。


もう1人がカールに気付いて、剣を引き抜いき身構えようとした瞬間、カールは一歩後ろに下がり。低く身構えてから。


「シッ」


鋭い踏み込みから、一気に間合いの内側に入り込むと。何時の間にかレイピアが、抜かれ剣を構える間もなく。心臓をひと突き、刺突(チャージング)と呼ばれる。レイピアの技だ。


残された1人は、カールを睨み。剣を油断なく構えてる。


相手が彼一人ならば、有効だった……、


レイカは、木々の幹を利用して、三角飛びをし弧を描き宙を舞う、手に黒塗りのナイフが何時の間にかあって、頭上から翻り。一瞬にして、最後の一人の喉を切り裂き。鮮やかに暗殺していた……、


レイカは五人の遺体を、木陰に隠し偽装を施す。オーラルが倒した二人を、カールと運ぶ途中。月明かりで見たのは、首の半ばまで切り裂かれ、残されていたのはたたの葉だと気がついて、ぞっと寒気がした。



……開けた場所に出た、



元は隠し金山があった場所である。小さな集落跡を、見付けた。


「昔……、坑夫と家族の住まう。集落だったわ」


三人は、辺りに気を付けてながら、集落の残された屋敷後を視界に捉えた。


「あそこね」


三人が見張ってると。時折明かりが、漏れてるから、人が要るのは一目瞭然である。


「あの屋敷では……、テロで使われた、炸裂弾の製造所になってるわ」


驚くほど真剣な眼差しをしていた。アレイク王国の闇を見てきた一族。黒衣の一族であるレイカは、オーラルの判断を仰ぐべく伺っていた。


「カール……、あれやろうか」


考え込んでたカールは、オーラルに考えを見透かれた気がして、照れ臭そうに笑う。


「オーラル知ってたのかい?、もう少し広域で、使えるようになってから驚かせようと思ってたのにな~」


カールの肩に、信頼を込めて、手を置いた。


「やってみるさね~」



━━カールは、木陰から飛び出して、足音と気配を消しながら魔法によって視覚的に見えなくしてから、素早く屋敷に走りより、窓の真下に陣取っていた。



あの場所ならば、例え見張りが見回りしていても。視界に入らない絶好の場所である。カールは座り込み。魔力を高め。歌うように呪文を唱え始める。



魔法の詠唱に入り30分過ぎた頃か、全身全霊に魔力を這わせ。練りに練っていた濃密な魔力を空に放たっていた……、



……深夜に未明。夜明までまだ時間はある時間帯。


集落は、静寂に包まれていた……。


耳鳴りがするほどの静寂。痛みすら感じた時だった。



ぽつりと……一滴。


雨が、地を濡らした。


1拍の時間を空けて、ポツリからポツポツ、


ポツポツからパラパラ。


パラパラからザーっと、バケツをひっくり返したような、豪雨が降りだしていた。


「これはまさか……」


視界すら阻まれた雨に。にわかに屋敷の中から声がした。


「おっ、おい雨だ」


「なんだって!、大変だ、火薬が湿気る。手伝え」


慌てる声に急かされ、足音とパタリ扉の閉まる音が、僅かに聞こえていた。


驚き目を見張るレイカは、自分の身体を確かめ、目を細める。うっすら魔力のベールで、雨から守られてると理解して。余計なことをと思いつつも。安堵していたこの格好で雨に濡れると色々見えてしまうから、



改めて突然の天候変化に……、顔が強ばっていた。


「まさか……」


「そのまさかさカールは補助系。最強の攻撃魔法……、天候魔法をマスターしている」


「あの軽薄男が……」


唖然と辺りを伺ってると、


「ここは危険だ!、あの樹に登るぞ」


雷雨では無いための判断だろうが……、あまり樹に近付きたくはない。顔に出たレイカに、


「土石流(どせきりゅう)で死にたくなければ、言う通りに」


訳も解らず。オーラルの切羽詰まった声音に。素直に従っていた。



雨の雨量は膨大で、ここの所晴れに見舞われた暑い日々が続いていた。そのため鉱山後なんかの山も水分を含まない土や岩が剥き出しになっていた。



集落を望む山間まで及び。大量の水分は、泥濘を産み出していた。



しかし……。



雨は強まる一方で……、



木々の根が、顔を出し始め。岩盤を叩く衝撃は、なだらかな坂上にある巨大な岩肌に、亀裂すら生じさせた、カールは頃合いを見はかり、屋敷から足早に離れて行った。



自分も急ぎ巨樹をよじ登り始めた時だ。



屋敷の裏手にあった崖から、轟音が響いた。



「崖崩れ!?」


気付いた、わなわな唇を震わせレイカは、目を見開いていた。



巨大な岩肌が崩れ落ちた、だが屋敷まで届かない。騒ぎを聞きつけて、数人が、屋敷から現れた時だった。



崖の崩れた場所から、鉄砲水が吹き出した、それはそれは凄まじい勢いで、水は流れ出したのだ。


━━鉄砲水は、瞬く間に屋敷の周囲を池のように泥を造り上げる。



━━水は徐々にいきおいがついて、流れ始める、まるで川のような、濁流を産み出していった。



ゴゴゴゴ……、



ギシギシ。嫌な音が屋敷から響いていた。



ガコン……、遂には屋敷までが流れ出していた。


呆気に取られた男達を巻き込み、再び土砂崩れが起こる。



━━ついに……地滑りと相まって。土石流が発生したのだ、巨大な岩が、集落を飲み込み。凄まじい勢いで、小さな木々を根こそぎへし折る。恐ろしい光景に、血の気が引いたレイカは眼を反らすこと見ていた。





エピローグ





こうしてカールの魔法によって、テロ組織を壊滅させた第一分隊であったが、レイカは後に知る。第一分隊の面々が、皆優秀な人材だったことを。













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