アレイク王国の闇
………翌日、
母に頼まれて、姉にお弁当届けてから、孤児院に顔出した。
久し振りにと、お土産に用意した沢山のお菓子は、あっという間に無くなっていた。
昼前には帰ろうと……、大聖堂の前を通ると、見覚えのある軽薄そうな男を見掛けた……、
━━視線を感じてか、オーラルと目が合い。気まずそうに目を反らして、カールが立ち去ろうとした。が……、急に立ち止まる。
「よお……後輩。少しいいか?」
小さく頷き、カールの後を付いて歩いてく、
━━カールが向かったのは、中央公園近くの小さなボロい安居酒屋に入る。人の目が気にならない奥の席にした、
ひっそりとした店は………、老人が1人でやってる店だ、適当頼み。しばらく酒で、唇を湿らせていると。カールが、話しだすまで待つことにした。
「なあ……母さん…元気だったか?」
暗い顔をしていた。不安そうでいて、何かに押し潰された者特有の匂いがした、オーラルにとってカールの様子は見に覚えがあるものだった。何となくだがカールの気持ちに気が付いた……、彼だって本当は……、問われるままエレーナ母様の最近の様子を、話して聞かせた。
酒の力か……、カールが重い口を開き。様々な思いと、昔話を聞いた。
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━━数日前。
━━カレイラ師団長室。
アロ・ジムスの提案書を一読して、カレイラはすぐさま保管されてる。師団が有してる砂糖の備蓄を調べさせた、
すると………、
アロ・ジムスの指摘通り、かなり高価な砂糖、香辛料が、手付かずのまま大量に保管されたままで備蓄されてたことが解った。
カレイラはすぐさま、アロを、現場責任者にして、商人との交渉役につけた、が、カレイラの予想以上に、師団の財政が潤ったのだった。
「いやはやこれは……」
後日、緊急性がありとケレル殿下、シルビア=カレン・ダレス財務官に、結果の報告書を作成させて、定例会議で見せた上で、ガロン師団、近衛連隊、フロスト騎士団に、同様のことをするよう進言した。
「カレイラ准将……実は」
シルビアもその毎に気付き、既に、調べあげ、書類を作成してた段階だったと聞く。
「アロ・ジムスとは、どう言った人物なのですか?」
少し興味を持ったようである。
「オーラルの上司にあたる人物です。シルビア財務官殿」
ケレル殿下は、連日話される交易の収益が減り。財政難に陥る可能性について話していたので、険しい表情をしていたが、ふっと、新たな『オールラウンダー』のことを思い出す。
口内で、その提案が、理にかなってるか吟味しながら、一つの決断を決めていた。
「カレイラ、そして皆も、魔王が動いているのはもはや隠しきれない事実である」
殿下がなるべく避けていた事案を。わざわざこの場で口にしたことに。カレイラは虚を突かれていた。そして殿下の口にされた策を聞いて。同席していたフロスト騎士団長ブラレールと見あった。が、幾つか協議した結果。同意していた。
数日後━━━。
真新しい、豪奢な馬車を、漆黒の巨馬の二頭が引く、気持ち良さそうに走らせながら。
並足で護衛の馬が並走していた。
都から出た馬車は、西の街道を南下して。途中から北上して。東に進んで行く。以前オーラルが、空の試練で訪れた。アルファードの街を、山なりに北上する遠回りのルートである。王族が近隣の国に赴く時は、わざと遠回りして、なるべく沢山の街や村を通る為だ。
馬車の手綱を握るオーラルは、御者をしていて。
━━馬車を中心に三方を、第1分隊の面々。アロ中隊長、クエナ、カールが、馬上で、辺りを警戒する。
なぜ人員不足で、名誉部隊の第一分隊に。こんな仕事が舞い込んだか、理由は分からなかったが、僅かな人数しかいない第1分隊にとって、初めて部隊としての命をうけた。
話は、休暇が終わった翌日と……、かなり急なことだった。
「また来たぞオーラル!」
今日、何度目かの襲撃。オーラルは手綱を素早くしごき、馬車を走らせるスピードを上げた。
カツンカツン、複数の矢が、魔法の風壁に弾かれる音がした。
「その程度の矢、当たらないですの~」
舌ったらずなエルの呟きが微かに聞こえた。思わず苦笑いしていた。
「オトリだから……、大人しくして欲しいものだ……」
第一分隊に与えられた任務とは……、
公式の行事として発表された公務、ミレーヌ王女の護衛……。
そもそも第一分隊の設立は、ミレーヌ王女を守る為に作られた部隊である。表向きの話ではね……、
まだ設立間もなく。色々と足りないのが現状だ。
━━あれは昨日のことだ……。オーラルが隊舎の自分の部屋に戻ると、窓の外から僅かな気配に気付いた。
「流石だね……あたしの気配に気付いたかい。流石……『オールラウンダー』おや…?」
訝しむ女の前に、湯気のたつ紅茶が置かれた。
「黒衣の一族は、初めてでは無いので、僅な花の香り、気配で、女性と判断しました、毒は入ってませんのでどうぞ」
「なっ……」
呆気にとられる女に、
「そうそう……、
足取りに疲れが見えたので蜂蜜を入れてありますよ。お好きですよね?」
息を飲む女は、迷いつつ素直に、テーブルに着いて、注意深く匂いを確かめてから。口を付ける。一流の黒衣の者は、毒の味が解ると言うが………、彼女の行動は黒衣なら自然だ、端で見てると違和感丸出しで、まどろこしい。
「ん……」
黒衣の女は、黒髪だが……、紅茶を飲む姿……、横顔は似ていた……、オーラルの先輩である。ミラに……。黒衣の一族である。何の用にしても。素直に答える筈はない、ちょうどよい……、反応を見る策に使える。
「ミラ先輩の親族ですよね?」
安心して、口に含んだ瞬間を見逃さず。
「ブッー。ゴホゴホ……、あっあんた……」
怒りの光を浮かべた一瞬を、オーラルは見逃さない。にこやかな笑みを見て、謀られた毎に気が付いた。
「チッ……、」
悔しそうに歯噛みしながら、女は直ぐに表情を消して、一枚の命令書を見せる。
『隣国、神国ラトワニアに、ミレーヌ王女が親善訪問する。表向きは……、裏で噂を流す。ラトワニア皇子との婚約の為ではないかと……』
チラリ女を見て、全く表情が動かない。怒りを買ったようだ。
「成る程……。第一分隊に、囮をやらされるつもりですね?」
書面だけの僅かな情報から一瞬で。ケレル殿下の考えを読みといていた、やや女は顔青ざめさせるも。小さく首肯する。
「すると……、陛下から第1分隊は、表向き、護衛任務命令が降ると言うことか……、わざわざ俺に、黒衣を差し向けた以上は、命令は一つではなく。また目的も一つとは限らないかな……」
オーラルの呟きを耳にして、徐々に顔色が蒼白くなっていた。
「ケレル殿下が、わざわざ報せる理由がある。あんたはそれを口頭ではなく。書面を見せて、俺の反応を見てから、伝えるように言われたね」
ゴクリ……、思わず唾を飲み込み、ハッと顔を強張らせていた。そしてオーラルの視線を受けて無表情を作ろうとしたが失敗、諦めたように素直に頷いていた。
「カレイラ准将には、何か言われてたようだね」
「全く……『オールラウンダー』て奴は……」
忌々しそうに鼻を鳴らした。
「一応……、知らせたからな?」
「確かに」
微笑するオーラルをやや睨み付けながら、窓枠に脚をかけ外に出ようと。半身が出た瞬間。
「頭の怪我治ったようですね」
「なっ……、おま……、あっ……」
身体を半分以上外に出した状態で、慌てて振り返ったことで、バランスを崩し。女は落下、
ドサリ……何か落ちる音がしたが、自業自得だと溜飲を下げたオーラルとは違い。やたら怒ったような気配は、しばらくうろうろしてたのだが、オーラルはさっさと窓を閉めて、明かりの消えた部屋を目にして。地団駄踏みながら、間もなく気配は消えた。
「本当に。世の中は狭い……」
小さく呟き、ほどなく寝息を立てた。
━━第一分隊、護衛任務主発直前。
━━アロ中隊長の元。急報が入った。
書簡の文明を見て、血の気を失い。今にも倒れそうな様子にクエナが、不安そうな顔を浮かべた。
━━書簡による文面には━━。
`魔王ピアンザの配下による。襲撃の恐れがある´
……命令変更が伝えられた。
━━任務内容は同じ、だが……、第一分隊を囮とした、と命令が下る。
その間。ミレーヌ王女は、別のルートで護衛と既に。ラトワニア神国に向かっていた。とのこと━━。




