過去との邂逅、地の試練再び
━━━あの事件から数日後……、
オーラルは、オリベ老に呼ばれて、土竜達の世話を終えてから。厩舎に向かう、するとゲルマンとJr.がいた。
「ピュー♪、ピュー♪」
甘えた声を出して、オーラルにすり寄ってくるJr.。これには些か、複雑な、表情を浮かべるゲルマンだ。オリベ老と目が合うと、小さく、寂しそうに笑う。
「オーラルや、先日は苦労させたな……」
改めてお礼を述べられ、照れ臭そうに笑みを浮かべていた。
「気にしないで下さい……、俺は出来ることをしただけです」
右目を隠すような仕草を見て、二人は顔を見合せて。優しく笑っていた。
「お前さんは、暴君Jr.に認められた騎士だ……」
「……今、なんと?」
唐突なこと言われて、戸惑いより狼狽を浮かべる、そうだろうなとオリベ老も頷き。だが構わず、ゲルマンを見やると、意を決意したゲルマンは唇を噛み締め。複雑な顔をしながら、一つの真新しい。赤い手甲をオーラルに手渡していた。
「これは……、」
驚くのも無理はない、オリベ老は、Jr.の爪を見せて、語る。
「土竜は、自分の認めた者に、己の爪を与える……」
厳かに、とても大切なことを語ってると感じ。耳を傾けた。
━━いつの間にか、助手や見習い達が手を止めいた。
「土竜騎士とは。土竜の信頼を受け、生涯の友と認められた者……、家族と認められた証を、得た者の称号である」
初めて知る話に、自分の右手にある。古い土竜騎士の証たる。赤い手甲に触れていた。
「まさか……」
知らず知らず。肩が震えた……、
「生涯騎士は、一匹の土竜と共に生きる。だが、希に一匹の土竜が、複数の者を認めた例もまたあった」
オリベ老は静かに呟き、ゲルマンは懐かしそうな、ほろ苦い笑みで、オーラルの年期の入った赤い手甲に触れた。
「オーラル……。お前は、生涯Jr.の騎士として、友として、家族として、生きるか?」
様々な思いに溢れる涙を噛み殺し。オーラルに迷いはない。
「我が、友として……、我が家族として、生涯1人と一匹は………」
オーラルは誓う。オリベ老とゲルマンの二人もそっと目を拭っていた。
━━20年前。ハウチューデン家
━━━。
「オーラル、お前は生涯騎士として、生きるか?」
幼きオーラルは、小首を傾げながらも、
「僕の友達のためなら、誓います!」
━━━現在。
「ふっ………ふははははは、ふははははは」
珍しい事が起きた。オリベ老の爆笑と言う、あり得ない事態に、戸惑う一堂。
「まさか……もう一度、同じ言葉が聞けるとはな」
感極まったゲルマンは、涙を拭う。
「お前なら、良い土竜騎士になるだろう……」
━━━20年前……。
暴君と呼ばれる。特別な土竜王が居ました。人間から暴君と呼ばれた彼は、
強く。頭がよく。気高い━━、
美し毛並みの白毛の土竜でした、
しかし彼は、人間を嫌っていました。バカな人間は、餌を運ぶ。ただの奴隷……、暴君はそう思って、生涯生きる。そう決めていいました、リブラと言う人間に、出会うまでは━━━、
暴君は、やがてリブラと契約を結んで、彼だけを信じる土竜となったのです。
そう━━それだけのはずだった、リブラの子供オーラルに出会うまでは……、
土竜は、人間に爪を与えると、生涯その爪だけは生えなくなる。だから土竜が、爪を与えるのは、とても神聖な行為とされていた。
何時からかその行為は神聖なものとされ。土竜使いは、騎士と呼ばれるようになっていた。
そう………、
女王より、剣を賜る。騎士の如く、
暴君は、幼く、気高い子供の人間を認め。人間を愛することに決めた。
オーラルが最後に、ターミナルで、父を見送る日。暴君はいかなることがあろうと、2人の友を……愛すると違っていた。そう……それだけの物語は……、
━━━現在。
大洞窟。北の大陸入り口付近。身体中傷だらけの白い毛皮、片目を失った、巨大な土竜は友と2人、曇り空の下で。快走して、逃げに逃げていた、それはまた━━別の話である。




