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少尉ですが何か?改修  作者: 背徳の魔王
第三章
31/123

地の試練。過去との邂逅、土竜騎士となる


オーラルが、ターミナルに来るのは実に久しぶりで……、懐かしい土の香りに、


「何をにやついてる!」


「すいません。つい懐かしくて」


オリベ老は、おや?っと眉を潜めた。


「小僧、お前はここにくるのが、初めてではいのか?」


訝しむ老親方━━恐らく土竜師に、小さく頷き、普段首から下げて、服の中にしまっていた笛を見せた。


「土竜笛じゃないか………、」


幾分険しさを和らげていた。



土竜師である老親方の営む土竜ファームは、古い通路の奥側にあり、大きな厩舎が幾つも並び、ぐるりと広大な土地に、コースが造られていた。若いライダー達が、土竜を訓練してる様子が、見受けられた。


「そうか……、お前の親父はリブラだったのか……」


懐かしそうに呟く、そして父リブラが、見習いの時。土竜王と呼ばれた。暴君と父の世話をしてくれたのが、オリベ老だと言う……、奇縁とはよくいったな……、語られる昔話に耳を傾けつつ、その日は終わった……、



━━━翌日、早朝から。若い助手達に混じり、オーラルは、土竜の世話をした。


土竜とは、竜種に数えられるが、その姿は巨大なネズミに似ていた。

鼻は長く尖り、愛嬌たっぷりの目が、とても愛らしい姿である。だが大変頭が良く。人に慣れると一生の家族として、土竜騎士の相棒となる。

また土竜は、成竜になってから数十年生き、子孫を残したら、旅に出ると言う……、



━━昔話だろうが、山のような巨大な土竜を見たと、とある騎士は語る。


不思議なことに土竜は、モンスターに殺された以外の死骸を見せたことがない。また死骸をみたことも、確かにないことから……。多くはギルド内の秘密。または土竜騎士達の伝説になって、語られるくらいであろうか………、


「キュイー、キュイー、」


人懐っこい何体かの子土竜が、オーラルに身体をすり寄せて来た。あんまり可愛がり過ぎない程度にあしらいながら。オーラル達は、食用ミミズを与える。



一通り仕事を終えて、一休みしている時だ。


「オリベ老師。あのご相談が……」


近隣の土竜調教師か?、中年のがっしりした男が、青白い顔をして、おずおずオリベ老に話掛けてきた、話を聞き終えるや真っ赤になって、


「この馬鹿者!、何をしていた」


烈火の如く怒鳴り散らす。突然の怒声に首を縮こませる中年男、凄まじい形相のオリベ老と、見習い達しかいないから、オロオロするばかりである。

仕方なく、オーラルが、オリベ老の前に出て、


「オリベ老、子土竜が恐がります。

他所でやってくださいね」


静かに笑むオーラルだが、眼は笑ってない、ハッとして渋面を作り。ばつが悪そうな顔をした。


「むう……、済まぬ、いささか我を忘れいた……」


周りいた見習いは、安堵したのは言うまでもない。


「こほん……、オーラルお前もこい。お前にも関係ある話だ」


訳は解らないが、首肯していた。



オリベファーム、住居のある建物の一階。オリベ老の部屋に、中年調教師と助手の1人、オーラルの4人が、応接間に腰掛ける。


「ゲルマン、話せ」


「はっはい……、」


オーラルを気にしながら、唇を噛み締め泣きそうな顔で、とつとつと語り出した。


「………オリベ老より預かっていた、暴君の子、Jr.が……、助手の監視を掻い潜り、脱走しました、それは何時ものことです……、ですがその先が……」


言い澱んでいた、


「……ん?、何処かで(聞いたような話だ)」


オーラルは……、妙なデジャブーを覚えた……、それがなんなのか……、


「ゲルマン、お前がわざわざ来たのは……、Jr.があの廃道に入ったと思っているからだな?」


やや怒りを納めたオリベ老に、迷いながらも静かに頷いた。


「あのオリベ老、廃道とはなんですか?」


チラリ視線をよこして、迷いを浮かべる。複雑な目を伏せて、


「お前は、知らぬだろうが……」


意味ありげな眼差しが、とても気にはなるが、今は情報を得ることが大切と感じ。口は挟まない。


「廃道とは、人喰いワームの巣になってることが多いのだが……、こいつが言った今回も迷い込んだ廃道は、少々意味合いがあっての……」



━━今回?……、妙に含む言い方な気がした……、




━━過去にもそんな事が……?、



妙に気になった……、老師は前置きした、何となく理解する。土竜の主食とされる食用ミミズ以外に好物がある。土竜には、宿敵を狩る本能が存在する……、


「ワーム……」


かつて土竜が、東大陸に多く住み着いた理由があった。この地下迷宮に住む最大の理由が……、



ワームとは、巨大ミミズの俗称で、獰猛な肉食で、巣を作り群生する。小さい物で人喰いワームは、体長1m程もあり、人間の腕より胴体は太く、貪欲で、大きなワームなら15mにもなると聞く。


「まさか……、その子土竜は?」


厳しい顔のまま静かに頷いた。


「もっともJr.は成土竜ですが……、オリベ老、先程この青年と、暴君Jr.が関係あると、言ってましたが……」


ゲルマンに頷き、真っ直ぐオーラルを見る目は、とても優しい光を点していた。過去……オリベに意見を言ったり、たしなめたり出来た者は、一人しかいない。


「オーラルは、あの暴君のライダー、リブラの子だ……」


これには驚いたのか、アングリ口を開けて、目を丸くした中年調教師は、


「あのリブラの……」


仕切りに首を振りながら、懐かしそうに呟いていた。


「オーラル……、ゲルマンは当時。暴君………お前の父の土竜を、世話をしていた助手だったのだよ……」


懐かしむように。目を細めるオリベ老の眼差しに、胸が突かれた……、ゆっくり瞼を閉じて……、オリベ老が、オーラルを同席させた理由を、全てを………、


「そうか……ここは……」


思い出した……。

そうだあの日の出来事も。



ゆっくり顔を上げたオーラルは、

決意を堅め真っ直ぐ三人を見渡し……、


「廃道の場所、教えてください!」




━━オリベファームから、少し離れた場所には、小屋の中に。地下に降りる小さな階段がある。



本来は何らかの事故によあって、土竜馬車が運行出来ない場合。迷宮の脱出に使われる非常口に使用するのだが……。

オーラルは荷物を漁り、使える道具をピックアップしていく。ちょうどワイバーンを仕留めた時の装備をそのまま持ち歩いてたのが役に立つ。

鉄を織り混ぜたロープと。折り畳み式の槍を右腕に持って、肩には強弓を掛けてから。リュクの底に仕舞われていた父の赤い手甲を見つけ。迷ったが着ける。父リブラからお古を貰ったと。オーラルは今でもそう思ってる。



オリベ老と中年調教師は、現れたオーラルの出で立ちにハッと息を飲んでいた。右腕にある年期の入った赤い手甲は……、見覚えのある土竜騎士の証である。これは強靭な、爪を誇る。土竜の爪から作られる。土竜の加護を与えられた手甲は魔法、毒、鋼の武器を受けようとさえ、手甲に傷を付けることは出来ない、



……そして……。

この手甲こそ、世界に2つとない特別な品である。土竜とは……生涯で、ただ1人だけ、人間の友とを選び契約を結ぶ……、それは土竜が、家族と認めた証である。



━━━だから友であり家族に、土竜は強靭な力が宿る自身の爪を与える。


━━それこそが契約であり、土竜騎士だけの栄誉である。



オーラルは思い出した……、父よりもらい受けた、赤い手甲にそっと触れ。唇を噛み締めていた。




━━20年前。ターミナルの街、廃道、


幼き日のオーラルは、父に連れられ。オリベファームに遊びに来ていた………、

行方不明になった父の土竜を助けるため。幼いオーラルは、単身廃道に入っていた……、まさに同じ廃道に……、



━━━現在。

オーラルも知らない思い出がある……。

暴君の左の爪は、二本欠けてる理由を……、そして父がいない今、それを知るのはオリベ老と……、


「オリベ老……、あの子が……」


涙ぐむゲルマンを優しく見ながら、考え深く、皺を深くした。


「若き土竜騎士に。再び会えるとはな……」


廃道と言っても。巨大ワームが通るため。恐ろしく天井が高く曲がりくねっていた。最近は土竜ですら近寄らず。危険なためギルドの管理下に置かれていた。



風化した入口とは違い。変わりにワーム独特の酷い匂いが、廃道中に漂っていた……、

長年発酵させたキツイ臭いのチーズを。壁中に擦り付け長年放置したような。酷い悪臭に。吐き気を催したが気合いを込めた。風の消音魔法スニーク。足音を消した、ワームは、音や振動に敏感なモンスターだ、



……さすがに振動は消せないから、せめてもの準備である。



坑道の奥に行くにつれて、匂いが更にきつくなる。


「ん……」


小さな鳴動を感じた。罠を仕掛けるならこの辺りか……、念のため二種類の罠を仕掛ける。


「そんな化け物は、居ないだろうがな」


ワイバーンを狩ったばかりで、その強靭な生命力は脅威だった。嫌な予感がするのだ。



準備を済ませ。オーラルは奥に向かって再び歩きだした、徐々に振動は強く。気になるほどに……。


「ピューィ!」


土竜の警戒音が、微かに聞こえた、


「近い……、」


息を整えると、加速の魔法を唱え。走り出した、



━━足場の悪い場所ながら軽快に走破し。一気に駆け抜けた。突然視界が広り。広い空間に飛び出した。



「ピー!」

眼前の下方で、軽快な動きを見せる土竜が、縦横無尽に人喰いワームを翻弄していた。


「あれが暴君Jr.……」


初めてみた真っ白い体毛の土竜は、ワームの体液でまだら模様になっていた。素早く辺りを見回して、下に降りる道を探しながら、周囲の地形を即座に把握した。



白い毛皮……、土竜の多くが茶色で、白い毛皮の土竜を、アルビノと呼ばれる。希少種で、非常に頭が良いと知られていた。Jr.は、鋭く頑強な前歯で、何匹目かのワームを倒していた、自慢の白い体毛は、ワームの体液で汚れたが、まだまだ戦える。


━━暴君Jr.は、普通の土竜より小さい為。誤解されがちだが、成土竜である。


━━人間は、嫌いではない、でも素直に言うことなんて聞きたくなかった……、


━━偉大なる父の友程の人間なら、契約をしてやってもいいが……、暴君Jr.は飢えていた、自分は強い。強い。なのに……と、憤りを感じ暴走したのだ。

だから……、ワームの巣を襲い、一匹で戦い、殲滅したら……、そう思うだけで、四肢に力が入り。たかがワーム、俺の歯で、爪で倒せる。そう考えていた。


ズン!


ワームの体液の匂いを敏感に感じ、食欲を意識した、はぐれワームは、いつの間にか、身体の上に乗ってる。岩を一気に砕いた、


「ピューィ!」

一瞬。空に投げ出された暴君Jr.は、真下を見た。ワーム数匹を一口で食らった、黒い巨大なワームの姿を……、

警戒音で鳴きながら、降り注ぐ岩を避けつつ。慌てて距離をとった。



ワーム達も黒い、巨大なワームに、反撃するが、意に反さず。悠然とワームを喰らう光景に、オーラルは目を細め身構える。



……あまりの出来事……、


暴君Jr.は恐れ。我を忘れて、助けを求め鳴いた。


オーラルは咄嗟に土竜笛を口でくわえながら。下に飛び降り鳴らした。



━━その時、微かな、土竜笛の命令が聞こえ。


″後ろに数歩下がれ゛


暴君Jr.は咄嗟に従って下がった瞬間だ。ドカリ瓦礫が眼前に落ちていた。


「よっと、生きてたか」


そいつは暴君Jr.の傍らに降り立ち、気遣う声をかけてきた。目の悪い土竜は、鼻先にあるサーモセンサーで、人間と認識する。



……見たことない人間……、ん?、

ふっと微かに、懐かしい、匂いをかぎとる。人間の右腕からだ……。


「流石に、気付かれたか……」


あれだけいたワームを、全て食らいつくした黒い巨大なワームは、巨大な鎌首をもたげ

ると。強力な酸を含む涎を足らした。



そして……、



オーラル達を喰らうため。猛然と迫り来る。


オーラルは、素早く強弓を構え、残った矢を放ち、素早く魔法を唱えた。


「因子を解き放つ、業火の矢(ブレイズアロー」


山なりに放たれた矢は、黒い巨大なワームに当たる直前。爆発して、火炎を撒き散らした、油分の塊であるワーム。そのワームを喰らうはぐれワームは、同じく豊富な油分を体に蓄えてるため。炎から本能的に逃げた。



やはりな……、そうするとあの罠が役に立つな。ほくそ笑み土竜笛で、


゛作成開始、あいつを引き付ける。手伝え″


「行くぜJr.!」


「ピーイ!」


思わず。嬉々と返事をしてしまい、ハッとしたJr.は戸惑う……、何故かこの人間は懐かしい……、逆らいがたい気持ちを抱いた。あの手甲は……、今だけ、今だけだ、手を貸してやる!、



人間に並走するように、暴君Jr.も走り出した……、僅かな喜びを感じながら、



迫る。はぐれワームの体当たりを、的確に見切り。正確な命令で暴君Jr.は避けた……、右に、左と、Jr.は段々この遊びを気に入り、楽しくなり始めていた。

徐々に嬉々として、オーラルの命令に従うようになって。


゛今!、右に飛べ゛


「キューイ!」


避けた瞬間━━━。



ガッガガガガガ……、

岩盤を削り取り。小石が毛皮を掠めた。ゾクゾクするような恐怖。巨体が擦れる。身の毛のよだつ音が迫る。

それでもオーラルは、はぐれワームの動きを、全て読み切り。ギリギリでかわす信頼感。右に。左に。紙一重のタイミングで……。


まるで鬼ごっこである。子土竜は、鬼ごっこが大好きで、勿論Jr.も誰にも負けない自信があった。土竜は、洞窟内を低く。跳ねるように走るため、一歩が大きい、だが傍らの人間は、余裕で並走していた、尚且つ。


「因子を放つ。大地のジャベリン


はぐれワームが、再び目的を見失い、洞窟の壁に当たった瞬間……。砕いた岩盤から、はぐれワームの身体を貫く、岩の槍が伸びた。凄まじい怒りの咆哮。皮膚が、泡立つ程の恐怖が、とてつもなく楽しい!。


「暴君Jr.愉しいな」


突然、同じ思いをしていたと人間は言った。何を言うのだこの人間はと……。呆れを抱いた時だった。


「お前がいれば、俺はアイツを倒せるからな!」



━━ドクン……、



━━ブルリ……、



毛が粟立ったような感覚。はぐれワームを見た時に受けた、恐怖とは違う……、強い歓喜が……、身体の内から溢れ……、そう……、まさに総毛立った。



……そうだ……あの手甲。あの匂いは……、……忘れる訳がないではないか、あれは偉大な父の爪だ、まさか……こいつは?父が認めた、人間なのか……?、そう考えた瞬間。不安や不満は霧散していた。



歓喜を持って、

゛左に避けて、一撃゛


人間の命令に従っていた。


やがて……、はぐれワームの怒りの咆哮は、段々弱々しくなり始める━━。



我がパートナーは、悠然と立ち止まり、槍を構えていた。はぐれワームは、本能で迷うが、最後の力を持って、喰らいに来た。このまま喰われるのか?。僅かな恐怖に暴君Jr.は、


「キューイー!?」


人間を……、いやパートナーの信頼を選んだ。


「大丈夫……、俺を信じろ」


息を飲んだ、視力の弱い筈の土竜なのだが。はっきり見えた気がした、優しい笑みが……、



━━瞬間、はぐれワームの身体が、宙で動きが止まっていた。オーラルが仕掛けた罠が項をそうした。無数のロープに辛めとられ、はぐれワームの動きが鈍る。鉄を織り込んだロープを張り巡らせていたのである。いかな凶暴なはぐれワームとて、そうそう抜け出せない、オーラルは魔力を込めた槍を、黒ワームの口内に投げ込み、素早く離れた、

傍らには、信頼の眼差しをオーラルに向ける暴君Jr.を従えて。



ブチブチブチ、ロープの切れる音。怒りの咆哮で、洞窟内はビリビリ振動する。このままでは崩落の危険がある。


「因子を解き放つ。爆炎ボム


爆音と砂ぼこりが、オーラルの隠れていた。場所まで届いた。

もう一本の槍を組み立て、1人と一匹は、砂塵が収まる中………、はぐれワームの様子を見に行く。


「ピューイ!?」


洞窟を埋め尽くすような、巨体を横たえ、頭部を失った、はぐれワームは……、死んでいた、


「やれやれ……、ワイバーンより厄介だったな」


嘆息していた、傍らを見ると。暴君Jr.は、何かを待つように、静かにオーラルを見ていた。


「Jr.ご苦労様。助かったよ」


優しく首筋を撫でられ。喜びにうち震えた。ついに見付けたよって、


「ピュー!、ピュー!」


嬉しそうに何度も鳴いていた。



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