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天と地と月影の姫  作者: 冬華白輝
番外編
24/24

王弟――豪

番外編は一話完結を目指します。

番外編UP毎に完結表示します~。

 罰を受けた。


 しかし、その罰は(おい)からの贈り物でもあった。


 (ごう)は深い森の入り口に立ち、呆然とまわりを見渡した。


「・・・これが、外周世界」


 くるりと振り返り森の方へと一歩踏み出すと、ぐにゃりと視界が(ゆが)み、また森を背に立っていた。


「やはり、入ることはできないのか・・・」


 とはいえ、豪は帰るつもりなど毛頭なかった。


 ようやく得た自由。(あこが)れの外周世界がどんなものなのか見もせずに帰りたいなどと思えるはずもなかった。


 豪は森から離れて草原に出ると、街道(かいどう)を探す。


 街どころか村の影すら見えない草原で、豪は太陽に向かって歩き始める。


「・・・文明はどうなっている?我々の世界よりも(おと)っているのか進んでいるのか・・・」


 この場所にいてはそんなことすらもわからない。日にちも時間もあちらと同じものなのか、それ以前に言葉は通じるのか、つらつらと考えながら豪は休まずに足を進める。




***




 どれ程歩いたのか、そろそろ足が重たくなってきた。


 しかし、相変わらず見渡す限りの草原で、人のいる気配すらない。


「まさか・・・外周世界は既に滅んでいるのか・・・?」


 いよいよ不安になってきたその時だった。


 豪の目の間で空間が歪み、大量の魔力が練り込まれている“球体”が現れた。


 地面についた途端にドロリとその球体が溶け、中から甲冑(かっちゅう)を着た男が3人現れた。


「お前は鍵か?」


 3人のうち一番前に立っていた男に前置きも何もなしに問われ、豪は目を丸くしながら首を横に振った。


「いや・・・鍵の身内だ」


「そうか。・・・ここは“錠の世界”の外だということは理解しているか?」


「・・・あ、ああ」


 自分達が住んでいた世界は“錠の世界”と呼ばれているのか、と頭の隅で考える。


「我等は“鍵の守人(もりびと)”と呼ばれる組織に属している。ここは各国の不干渉区域(ふかんしょうくいき)に指定されており、どのような立場の者であろうとも、我等“鍵の守人”から許可を得ずには入れないようになっている」


「物理的に、か?」


「そうだ。結界も張ってある故、中から出て来た者でない限りこの場に立つことは不可能」


 だからこそ、怪しい人物でありながらもいきなり捕らえられるようなことがなかったのか、と豪は納得する。


「・・・見渡す限りの草原なのは、それが理由か」


「そうだ。我等もこうして中からの客人を回収するためにしかこの不干渉区域には立ち入らない」


「私が来たことは、すぐにわかったのか?」


「ああ、わかるようになっている。・・・そういう結界も張ってあるのでな。では、詳しい話は我等の本部に来ていただこうか」


「わかった。なにぶん、何もわからぬままこちらに来たので、説明してもらえるのはありがたい」


 豪が素直に従う様子を見せると、リーダー格の男がわずかに首を傾げた。


「・・・何もわからぬのに、こちらに来たのか?」


「罰なのだ。私は鍵の力を利用し、この外周世界に行こうとした。完全に私的な理由で鍵の力を使おうとしたのだ・・・だから、追放された」


「・・・罪人か。しかし“錠の世界”での罰が外への追放ならば、もはや罪は償ったと言えよう。我らは“錠の世界”の研究者でもある。新たな情報源となるだろう貴方を粗末に扱うことは無いと断言しておく」


「・・・ああ、この罰は鍵の温情なのだ。鍵――柚緋(ゆうひ)の。あの子は私の望みを叶えてくれた」


 フッと穏やかな笑みをうかべる豪に、男がほぅ、と溜息を吐く。


「そうか、貴方は鍵ととても近しい存在だったのだな」


「ああ・・・あの子は、私の・・・大事な甥、だったのだ」


 面と向かっては言ってやれなかったが、豪は柚緋が大事だった。だからこそ、厳しく接した。


 それは鍵だからではない。自分と同じような道を柚緋がたどらないように、柚緋を悪意から護るために。


「――では行こうか」


「・・・ああ」


 男達は3人で呪を唱え始め、その足元に魔法陣が現れる。


「この魔法陣の中に入ってくれ」


「・・・転移は3人掛かり、ということか」


 なぜ3人で現れたのかということに気付いた豪が呟くと、男はクツリと笑う。


「“錠の世界”から魔力が供給されているが、その量は多くない。“魔力持ち”も徐々に数を減らしている。だからこその研究だ」


 それでも“光の道”に頼り切っているこちらの術師などよりずっと優秀だ、と豪は思うが口には出さない。


 ろくに休みもせず、連続して転移の魔法が使えるような術師は、魔導協会にもほとんどいなかったはずだ。


「・・・なるほど、な」


 笑みをうかべて頷き、豪は魔法陣の中に入る。


「「「転移・アクオフェーヴォ」」」




 外周世界での第二の人生はなかなか楽しそうだ。


 豪は転移の直前に視界に入った深い森のむこうにある世界を想い、呟いた。


「さようなら、私はこちらで生きていく」

 と、いうわけで、豪叔父さんのその後?でした。


 中途半端な感じはありますが・・・メインの人ではないし、外周世界もメインではないので。こんな感じで。


 ちなみに、外周世界では魔力に頼らずに生きる人々が多くいて“錠の世界”よりもずっと文明が進み、栄えています。(とはいえ、中世ヨーロッパレベルですが)


 “鍵の守人”という組織は、外周世界を支配している組織の一つで、錠によって外に逃がされた鍵が作り出した組織です。

 あの甲冑は魔力増幅器の役割を持っています。(なので3人で転移が可能なわけです)


 なんていう蛇足的な設定がありますが、生かされてません(笑)


 この後の番外編予定は、火印くんあたりに頑張ってもらおうかと思っています。


 ではまた次の番外編にて。

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