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悪魔みたいにかわいい彼女は、本物の悪魔でした  作者: わしお


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最終話 - 今日もまた恋をする

 うるさいくらいのセミの声を聞きながら、大輝はかの有名な犬の像の前でスマートフォンの画面に手を滑らせる。木陰なのに、照りつける太陽が木を貫通するように大輝を焼いている。端的に言うと、暑い。

 開いたSNSを、大輝は見ているようで見ていない。実際に見ているのは左上の時計だ。待ち合わせの人物が来る時間が迫り、時計が進むたびに心臓の音が大きくなる。

 その時計を隠すように、一件の通知が来る。「着いたよ(*^^*)」という短い文字に、大輝の鼓動が大きく跳ねる。予定より早く、まだ心の準備ができていない。


(大丈夫大丈夫……。集合場所も今日の服装も伝えたから合流できるはず……。髪が跳ねてないかも確認したし、服のタグもちゃんと取った! よし!)


 大輝はメッセージアプリに「了解」とスタンプを送り、スマートフォンをポケットにしまう。空いた手でショルダーバッグのベルトを掴んだのは、不安の表れかもしれない。

 大輝はドキドキと駅の出入口を見つめる。もうつき合って一年以上経つのに、つき合いたてのような気持ちだ。


 しばらくして、出入口から美しい女性が現れる。何度も見ているはずのその姿に、大輝は目を奪われた。


 白いレースのカーディガンと水色のワンピースは、彼女が好んで着るコーディネートだ。亜麻色の髪が、暑さを吹き飛ばすように爽やかに揺れる。

 その天使のような……いや、一周回って悪魔のような彼女は、微笑みながらまっすぐに大輝に近づいてくる。


「大輝くん」


 小鳥がさえずるような、しかし芯のある声が響く。大輝はその瞬間だけ、周囲の全員が黙ったように静かに感じた。

 しかしすぐにはっとして、大輝は彼女に手を振る。


「天音、久しぶり」

「うん! 久しぶり!」


 ぎこちない大輝の笑顔に、天音は満面の笑みを返す。ちゃんと合流できたことに、大輝はひとまずほっとした。

 久しぶりと言っても、実際に空いたのは一週間程度だ。しかし二日に一回は会っていた大輝たちにとって、一週間は長い。おかげでサークルで描いた絵は完成したが、やはり寂しさはある。


「ちょっと早いけど、行こうか」


 大輝が手を差し伸べると、天音は当然のようにその手を取る。握った直後に大輝は手汗の存在に気づいたが、拭ったところで、この暑さではすぐに汗をかくだろう。


「大輝くんの絵の展示を見るの、久しぶりだね。一年ぶり?」


 天音の無邪気な声に、大輝は一年前のことを思い出す。九月の文化祭から正確には一年経っていないが、気持ち的にはそれくらいだ。


「もうそんなに経つのか……。あのときもひまわりだったな」

「今回もひまわりなんだね」

「あ……」


(題材、言わなかったんだった……)


 大輝は己の迂闊さに頭を抱える。天音を驚かせたくて秘密にしていたのに、自らばらしてしまうとは。


「うん……そう……」


 認めるしかなく、大輝は項垂(うなだ)れる。しかし前を向いて笑う天音は気にしていなさそうだ。


「嬉しい! 楽しみにしてるね」


 その明るさに大輝は救われる。そういえば映画でもアニメでも、天音はネタバレを気にしないタイプだ。

 その笑顔を見ながら、大輝はふと思う。


「天音は、なんでひまわりが好きなの?」


 天音は持ち物も服も水色なのだ。水色の花が好きでも不思議ではない。ひまわりにまつわる話を、今までに聞いたことはなかった。

 交差点の信号が変わり、止まった天音は恥ずかしそうに目を伏せる。


「もともとは、おばあちゃんが生けてたひまわりが綺麗だったからなんだけど……今は違うかも」

「そうなんだ」


 今はどんな理由なのか。それを聞こうとした大輝を、天音は頬を染めながら見つめる。その顔で、大輝は察してしまった。

 今度は大輝が恥ずかしくなり、思わず目をそらす。今の大輝の顔は、コンクリートより熱いかもしれない。本当にそんなにあったら帰った方がいいが。


 信号の色が青に変わる。少し反応が遅れた大輝の手を、天音は強い力で引く。


「大輝くん」


 花よりも空よりも眩しく天音は笑う。その姿は女神のようだと大輝は思う。


(……なんでもいいか)


 女神でも天使でも悪魔でも人間でも、天音は天音だ。太陽に焦がれるひまわりのように、大輝は今日もまた、天音に恋をする。

 『悪魔みたいにかわいい彼女は、本物の悪魔でした』をお読みいただき、ありがとうございました。いかがでしたでしょうか。少しでも楽しんでいただけていたら嬉しく思います。


「頭を空っぽにできるラブコメが書きたい」


 そんな動機で書き始めたこの話。結果的には、過去一頭を悩ませて書いていました。ラブコメは向いていないかもしれません。

 テンポが難しかったですね。軽く、でもわかりやすく書くというのがなかなか難しく、最後まで「これでいいのかな……」と思っていました。


 ネタは夢で見た物語から取ってきました。起き抜けに書いたメモには「学園もの。ヒロインは悪魔。眼鏡の従者がいる」としか書いていませんでした。雑ですね。


 最初は五万文字くらいに収めようとしていました。ところが書き始めてみると全然収まる気配がなく、気づけば十万文字を超えていました。計画性のなさが異常ですね。

 十万文字書くなら、計画の段階でもっと悪魔やエクソシストに焦点を当ててもよかったですね。書き直す機会があれば、彼らの能力をもっと生かしたものにしたいと思います。

 ですが、とりあえず書ききれてよかったです。けっこう行き当たりばったりで、終わらないかと思いました。着地も決めていた方向とは若干ずれてしまい、本当にどうしようかと……。

 なんとかなって(?)よかったです。


 改めまして、お読みくださりありがとうございました。

 また次回の物語でお会いできることを楽しみにしています。

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