表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無敵の隠密おじさん、国境を超えて爆破してきたが、Xのフォロワーは3人  作者: ゼンショー・シマァス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/30

第28話 オフ会

「フォロワー100万人突破記念、オフ会をやります」

 佐藤がそう呟いた瞬間、ネット界隈には激震が走った。


 正体不明、神出鬼没。世界中の諜報機関を出し抜いた伝説の隠密おじさんに会える。

 特定班は開催場所の予想に明け暮れ、メディアは特ダネを狙ってカメラを準備し、熱狂的なファンたちは「本物の英雄」を拝もうと、指定された場所へと詰めかけた。


 指定された場所は、都内にあるごく普通の、どこにでもある区民ホールの会議室。

 だが、当日、そこには一万を超える人間が押し寄せ、ホールの周りは身動きが取れないほどのパニック状態になっていた。


「おい、おじさんはどこだ!?」「あの大理石の椅子に座ってるのか!?」

 殺気立つ群衆と、混乱を鎮めようとする警察官たち。


 そんな喧騒の中、一人の男がホールの入り口で、黄色いTシャツを着て立っていた。

 佐藤(45歳)である。


 彼は現在、イベント運営会社から派遣された「会場整理の新人バイト」として、そこに立っていた。


「あ、すみませーん。こちら列の最後尾じゃありませんよー。あちらの公園の方に並んでくださーい」


 佐藤は、自分を探して血眼になっているファンの目の前で、一生懸命に誘導灯を振っていた。

 ファンたちは佐藤の顔を何度も見ている。……しかし、誰も気づかない。

 目の前にいるのは「100万人の英雄」ではなく、「今日入ったばかりの、仕事が覚束ない交通整理のおじさん」だからだ。


「おい、おじさん! 本物の『隠密おじさん』は中に入ったのか!?」

 一人の若者が、誘導灯を振る佐藤に詰め寄った。

「あー、自分も新人なんでよく分からないんですけど、たぶん、もう中に『溶け込んでる』んじゃないですかねぇ」

「そうか! クソ、出遅れたぜ!」


 若者は佐藤の横をすり抜けてホールへ走っていく。

 佐藤は「お気をつけてー」と見送ると、こっそりと胸のポケットからスマホを取り出し、自分を探して右往左往する一万人の群衆をバックに、自撮りをした。


【無敵の隠密おじさん:@lonely_shadow_45】

『100万人記念オフ会。皆さん、集まってくれてありがとうございます。私は今、皆さんのすぐそばで「新人」として頑張っています。見つけられるかな?』


 送信。

 群衆が一斉にスマホを見る。どよめきが広がる。

「えっ、すぐそば!?」「この警備員か!?」「いや、あっちの清掃員か!?」


 人々は、隣にいる人間を疑い、疑心暗鬼に陥る。

 だが、佐藤の「新人オーラ」は完璧だった。彼はその後も三時間、一万人のファンに囲まれながら、一人の「無名な新人」として完璧に会場整理をやり遂げた。


 結局、誰一人として佐藤の正体に気づくことはなかった。


 夜、イベントが終わった後の静かな公園。

 佐藤はバイト代の8,000円を握りしめ、自動販売機で缶コーヒーを買った。


 ベンチに座ると、隣に一人の女性が座った。


「……お疲れ様、おじさん」


 聞き覚えのある声。佐藤が驚いて顔を上げると、そこにはスマホの画面越しではない、現実の「アナ(ポエム垢)」が微笑んでいた。


「……え、あ、ポエムさん?」

「アナよ。……やっぱり、あなたを見つけられたのは私だけみたいね」


 彼女は、世界で唯一、佐藤の「新人顔」を見破っていた。

 100万人が見逃した真実が、今、月明かりの下で向き合っていた。



会議室の予約。誰がやったん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ