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✴︎追放令嬢は闇魔法で無双する✴︎第二章  作者: ちょこだいふく


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34話✴︎後日談…光と影は共にある

数週間後。


アーリントン侯爵邸には、穏やかな日常が戻っていた。


南方での一件は、表向きには“海域異常の調査”として処理され、深淵や女神の存在を知る者は限られている。


だが確かに、世界は少しだけ変わっていた。

港町では原因不明だった発光現象が消え、海流も安定した。

漁師たちは「海が静かになった」と口を揃え、航路も徐々に復活しているらしい。


そして何より、クラウディアの中から、あの“ざわつき”が消えていた。



午後。


クラウディアは執務室で、山積みになった書類と格闘していた。


「……どうして視察から帰ったあとって、いつも書類が増えてるのかしらね」


机に突っ伏しそうになりながら呟く。

フィンはその隣で、淡々と資料を整理していた。


「クラウディア様が問題を持ち帰るからでは?」


「語弊があるんじゃないの?」


「事実ですよ」


即答だった。

クラウディアがじとっと睨む。

フィンは平然としていた。

最近の彼は、以前より少しだけ表情が柔らかい。

ノクティスがいなくなってから落ち込むかと思えば、

逆だった。

いや、むしろ…


「……フィン、それ、何?」


クラウディアが視線を向けた先。

机の端には、びっしり文字の書かれた分厚いノートが積まれている。

フィンは静かに答えた。


「ノクティス観察記録です」


「まだ続けてたの!?」


「当然ですとも。成長記録は継続することに意味がありますので」


「いや本人いないじゃない」


「いますよ」


「え?」


フィンはさらりと言った。


「昨夜も来ました」


クラウディアは固まった。


「…は?」


その瞬間だった。


「きゅるるーっ!!」


聞き慣れた鳴き声。


ばしゃあああっ!!


庭の池から、盛大な水しぶきが上がった。

クラウディアは勢いよく立ち上がる。


「えっ、ちょっ…え?」


廊下の向こうから、セリーヌの悲鳴が聞こえた。


「きゃあっ!?また来たわ!?」


「母上、“また”って何!?」


クラウディアは慌てて庭へ飛び出した。



池の中央、そこには


「きゅるっ!」


——ノクティスがいた。


以前より少しだけ大きくなった幼竜は、嬉しそうに尻尾を振っている。


その周囲には、淡い海色の光。

柔らかな気配。


女神だ。


セリーヌは服を濡らしながらも、すでにノクティスを抱き締めていた。


「もう、急に来たらびっくりするでしょう!?」


「きゅるる!」


全然反省していない。

シリルは腹を抱えて笑っている。


「はははっ!また池から出てきたぞこいつ!」


「“また”なの!?」


ルーファスはすでにメモを取っていた。


「興味深いな…海域を介した空間転移の可能性が——」


アレクとセレナまで庭に出てくる。

セレナは光景を見るなり吹き出した。


「ちょっと待って。“何度でも会いに行く”って、本当にそのままの意味だったの?」


アレクは呆れながら笑う。


「いや来すぎだろ!?」


ノクティスはそんな声も気にせず、クラウディアへ一直線に飛び込んできた。


「うわっ!?」


どんっ、と抱きつかれ、クラウディアはよろめく。


「……重くなってる」


「きゅる!」


誇らしげだった。

フィンが静かに近づき、真顔で確認する。


「……鱗の光沢、前回より安定していますね。魔力循環も向上している」


「ここで分析始めないで」


「重要なことです」


ノクティスはフィンにも擦り寄る。

完全に家族だった。

その様子を見守るように、海色の光が穏やかに揺れる。


もうそこに、孤独も苦しみもない。

ただ静かな、優しい気配だけがあった。


クラウディアは思わず笑ってしまう。


「……ふふ、まあいいわ。おかえり、ノクティス」


光が、優しく瞬いた。

その時、屋敷の奥から低い声が響く。


「……騒がしいと思えば」


全員が振り返る。


レオンハルトだった。


彼は庭の光景を見るなり、わずかに目を細める。

ノクティスは嬉しそうに鳴き、勢いよくレオンハルトへ向かった。


「きゅるー!」


「ぐっ」


侯爵の腹に突撃。

さすがのレオンハルトも少しよろめいた。


——沈黙。


次の瞬間。

シリルが吹き出した。


「父上、完全に懐かれてるじゃないですか!」


セリーヌまで笑い始める。

珍しく、レオンハルトが少しだけ困った顔をした。

だがその大きな手は、自然とノクティスの頭を撫でていた。


「……元気そうで何よりだ」


ノクティスが嬉しそうに喉を鳴らす。

その光景を見ながら、クラウディアは静かに思った。


きっとこれからも、光と影は共に在り続ける。

離れるのではなく、混ざり潰れるのでもなく。

互いを認識し、支え合いながら。


空を見上げる。


柔らかな光が、穏やかに揺れていた。

読んでくれてありがとうございました!おしまいです!

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