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✴︎追放令嬢は闇魔法で無双する✴︎第二章  作者: ちょこだいふく


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30✴︎女神の伝承

宿に戻る頃には、

町はすでに朝の活気を取り戻し始めていた。


魚を運ぶ声。

網を整える音。

人々のやり取り。


どれもが、昨夜よりはっきりと届く。


だがクラウディアたちは、その変化を言葉にすることなく、

そのまま部屋へと戻った。


扉が閉まると、再び静寂が落ちる。


フィンが口を開いた。


「……状況は好転しています。

 ですが、根本的な解決には至っていません」


「ええ」

クラウディアは頷く。

「“整った”だけ。元に戻ったわけじゃない」


セレナも腕を組む。


「音も、まだ完全じゃない。

 奥の方で、何か引っかかってる感じがする」


アレクがため息をついた。


「つまり……まだ終わってねぇってことだな」


クラウディアは静かに答えた。


「ええ」


短い沈黙。


そのあと、クラウディアは迷いなく言った。


「父上に、もう一度連絡するわ」


フィンがすぐに頷く。


「状況の共有は必要ですね」


クラウディアは通信魔導具を取り出し、机の上に置いた。


指先から魔力を流す。


淡い光が広がり、空間が揺らぐ。


やがて——


レオンハルトの姿が、静かに浮かび上がった。


「……続報か」


「はい、父上」


クラウディアは落ち着いた声で報告する。


海の状態が一時的に改善したこと。

深淵での接触。

そこに“存在”があったこと。


そして


それが敵ではないと感じたこと。


レオンハルトは黙って聞いていた。

その表情は変わらない。

だが、わずかに思案するような間があった。


「……ワシも調べておった」


低い声が落ちる。


クラウディアの視線がわずかに鋭くなる。


「古い記録だ。…断片的だが、似た記述がある」


「“光の女神”に関するものだ」


空気が変わった。


アレクが思わず息を呑み、

セレナの視線が揺れる。

フィンだけが、静かに続きを待った。


レオンハルトは淡々と語る。


「かつて、光と影は均衡していた」


「だが人は、光だけを求めた。…影を忌み、遠ざけた」


「その結果、均衡は崩れた」


クラウディアの胸が、静かに鳴る。


「女神は、それを戻そうとした。だが…力が強すぎた」


「暴走すれば、世界そのものが壊れる」


静かな声。


「だから——」


クラウディアが、自然に言葉を継ぐ。


「……自らを封じた」


レオンハルトは頷いた。


「海底に封じられた光…それが今、揺らいでいる」


それ以上の説明はなかった。

だが、もう十分だった。

クラウディアの中で、すべてが繋がる。


深淵で感じたもの。

あの“苦しさ”。

そして…


閉じ込められているのではなく、留まり続けている存在。


(……そういうことだったのね)


クラウディアはゆっくりと顔を上げる。


「……もう一度、行きます」


レオンハルトは一瞬だけ沈黙し、そして短く言った。


「任せたぞ」


それだけだった。

だがその一言は、何よりも強い許可だった。


光が消える。


通信が切れる。


部屋に、静かな空気が戻った。


クラウディアは、はっきりとした声で言う。


「……終わらせましょう」


その言葉に、全員が応えた。


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