ラウンド1
「おめェら行くぞ!」
開始と共に不良集団は数の利を生かして俺たちを囲いこもうと動き出した。
だが、それはお見通しだ。
「サラ、今だ」
俺は隣に立つサラに事前の打ち合わせ通りに指示を出した。
「了解しました」
サラは俺から離れるように走り出した。
さぁこれでどうなる。
俺を叩くか?それともサラに一極集中するか?
「さぁ始まった今年度最初の決闘試合!まず仕掛るのはサイキックだ!」
実況のアナウンスに観衆たちは歓声を上げる。
「おっとここでサラ選手がラバル選手から離れていきますね。これはどう見るべきでしょうかフローラ先生」
「そうだな、おそらくどちらが狙いなのか見極めるためだろう」
「つまり、ラバル選手を狙っているのかサラ選手を狙っているのか、それを探っているということですか」
「ああそうだ」
ラバル、いくら同じAクラスだとしても四対一は無理だぞ。
一体お前は何を考えている?
この試合は数的有利な不良共が鍵を握っている。
アイツらがどれだけ強いかは知らない。
だが、いきなり俺を狙うバカではないと思いたい。
確実にサラを仕留めてから俺を全員で倒しにかかると俺は予想している。
「おめェら、首席様は後だ!まずはあの女からだ!」
やはりな。
「まったく、俺に背を向けるとかアホなんじゃねぇの」
ラバルは燃え盛るフェニックスを構えた。
そして地面を蹴り不良たちとの間を詰める。
「おおっと!ここでラバル選手が動いたぁ!」
ラバルが動き出したことに観衆たちのボルテージも上がっていく。
「速い!なんて速さだ!」
ラバルの驚異的な瞬発力に会場はどよめく。
「月影神明流初伝・壱の型『月光』」
ラバルはサラに襲いかかろうとする不良たちに背後から強襲した。
「そんなのお見通しなんだよなぁ!」
俺の一撃は岩の壁で弾かれた。
さすがにこんなあからさまな不意打ちは通用しないか。
レベルが高いな、さすがは学園都市。
「首席様ともあろうお方がこんな卑怯な手を使うとはなァ!」
「しかも防がれちまってなァ!」
俺の攻撃を防げたことに機嫌を良くしたのか不良たちは隙を見せた。
「神装起動『戦女神の神殿』」
サラは青く光る魔法陣に包まれた。
「な、なんだ!?」
不良たちは何が起こったのか分からず慌てふためく。
「いいから攻撃しろ!」
相手のリーダーと思われる奴がサラを攻撃するよう指示を出す。
いい判断だな。
コイツは冒険者になっても活躍できるかもな。
だが、そうはさせない。
「俺の事忘れてもらっちゃあ困るなぁ」
俺は近くの不良二人に斬りかかった。
「こ、これはなんだぁ!?サラ選手が青い魔法陣に飲み込まれたぞ!」
実況は目の前で起こったことに驚き惑って声が上ずる。
「これはサラの神装ね。話では聞いていたけど、実際に見るのは初めてね」
アリアは戦況を見ながら冷静にそう判断する。
「そうみたいだね。俺も初めて見るよ」
「今まで一切見せてこなかった彼女がここで使うとは。ラバルも隅に置けませんね」
「それにしてもラバルは何を考えているのでしょうか」
「ンなもん知るか」
「ダニが言いたいのは、サラを一度囮に使ったということかい?」
「ええそうです」
「確かにラバルの戦いにしては消極的ね」
「ンなもんどうでもいいだろ」
幼馴染だからこそ分かるラバルのこの戦いの不自然さ。
「もしかして、サラさんの神装には何か特別な発動条件があるとか?」
「なるほどねー。有り得るかもな」
「と、するとラバルはサラに神装を起動してもらうために囮にしたってわけ?」
「そう考えると合理的だな」
「でも、なんだか引っかかるのよね」
アリアは首を傾げながら戦況を見つめる。
「チッ!数では俺たちの方が上だ!首席様に俺たちの強さを見せてやるぞ!」
サラの魔法陣を攻撃するのを諦めて不良たちは俺に狙いを定めて攻撃してきた。
「俺を楽しませてくれよ!神装起動『不死鳥の焔翼』!」
「構うな!突っ込め!」
「いけゴーレム!」
俺が初めに斬りかかった不良が巨大なゴーレムを作り出し、俺に向かって攻撃してきた。
「そんな程度で俺を倒せると思っているのか!?」
俺はゴーレムの振り下ろされた腕を一刀両断、切り落とした。
「風の精霊よ俺に力を!霊装起動『風の魔人』」
風の鎧を纏った不良その2も俺に突っ込んできた。
そして風の砲弾を俺目掛けて発射した。
「面白い!『烈火』」
俺はそれを掻き消すように薙ぎ払った。
「俺たちも行くぞ」
「おう!」
残る二人も俺に向かってきている。
コイツらはどんな能力なんだろうか。
楽しみだなぁ。
「他所見してんじゃねーよ!」
ゴーレムの不良が壊れた腕を直しもう一度襲いかかってきた。
「月影神明流初伝・弐の型『魁星』」
それはもう見切ったよ。




