ラウンド2
「ラバル選手を取り囲むチームサイキック!だがしかし!ラバル選手さすがは首席!いとも簡単に攻撃を躱す躱す!」
ラバルは不良たちの包囲網を巧みに掻い潜りながら闘技場を右へ左へ動き回る。
「だがしかしここは数で上回るチームサイキックが次々と攻撃を繰り出す!」
不良たちはラバルを追い込むように遠距離技や飛び道具を使う。
しかしラバルの巧みな剣さばきに全て弾き返される。
そんなラバルの華麗な闘いぶりにどよめきのような歓声が上がる。
「フローラ先生、ラバル選手は大技を繰り出していませんが、何か理由があるのでしょうか?」
「さぁな。あたしに聞かれても困る」
あたしの知っているクソガキの戦い方じゃない。
こんな行き当たりばったりな戦い方を嫌うはずなんだがな。
もっと合理的に動き、全ての動きを計算し尽くした、気持ち悪い戦いをするが、今は違う。
なんと言うか、感覚的?それとも感情的と言うのか?だが、そんなような戦いぶりだ。
変わってしまったのか?
サラが来るまで耐えるという作戦だったけど、これはまずいな。
さすがに相手を舐めていたかもしれん。
「月影神明流中伝・壱の型『盈月』」
躱しても斬ってもキリがない。
四対一はさすがにフェニックスだけじゃキツイな。
要鍛錬だな。
「おいおい首席様はそんな程度なのか!」
「大口叩いてた割には大したことねぇな!」
うるせぇ羽虫共が!
こちとらいつもの半分の力やねん!
鬼の力もレーヴァテインも封印しとんねん!
「それでも本気かテメェ!」
「手ぇ抜いてるわけねぇよなぁ!」
「だァー!うっっせぇなぁあああ!!!!」
怒ったかんな!
「そんなに死のたいのなら、お望みどおり殺してやらァ!『神速の焔翼』」
まず俺はゴーレムの核を目掛けて飛び上がり切り刻んだ。
そして空中で一回転してゴーレムが飛び散るのを回避する。
次は風の精霊の力を纏った奴を急降下して海鳥のようにそいつに突っ込んで地面に押し倒す。
そしてフェニックスを振り下ろそうとすると――
「水の精霊『ウンディーネ』行けッ!」
俺目掛けて水の精霊が突っ込んでくる。
「『烈火』!」
咄嗟に防御するために炎の壁を作るも、ウンディーネはいとも簡単に突破してきた。
そして俺に体当たりを仕掛けてきた。
まるで10トントラックにぶつかったような衝撃が俺の右腕を襲った。
少し油断しすぎたな。
まぁ壁にぶつからなかっただけでもいいと思うか。
「『大地の恵』」
「かなりまずいな」
ウンディーネの不良は俺を追い込もうと立て続けに大技を繰り出そうとしてきた。
「間に合え!『起死回生』!」
水の精の波動は、高速で俺の前に現れた鎧を纏った女戦士によって防がれた。
「遅くなりました」
白銀に輝く鎧、兜、槍、そして禍々しい紋様の円盾。
美しきアテナの武装をその身に纏うサラが俺とウンディーネの間に割って入り、ウンディーネの攻撃を相殺した。
「もう少しで死ぬかと思ったわ!もうちょい早よ来て」
「仕方ないじゃないですか。時間がかかるんですから」
「まぁいいこれで形勢逆転だ。勝ちに行くぞ!」
「はい!」
これで全て揃った。
勝てる。
「怯むな!首席様はダメージを受けちまってるからな!」
どうやら相手の狙いは俺らしい。
いい作戦だ。
だけどまだまだだねぇ。
だって――
「よぉーく見てみな節穴共!」
俺は天井から吊るされるモニターを指さした。
「なにィ!?」
そこには水人形の残りHPが表示されていた。
「あんな攻撃効くわけねぇだろ」
俺の残りHPは99%。
10トントラックにぶつかった衝撃など鬼の筋力の前には無意味だ!
「月影神明流中伝・参の型『朧月夜』」
俺はウンディーネを高速で切り刻むと、その精霊術師との間を一気に詰める。
「月影神明流中伝・肆の型『偃月』」
術師を一撃でノックアウトすると、サラの援護に入るために、炎を身に纏った剣闘士に近づく。
「『神速の焔翼』」
爆発的な加速力でサラの背後を狙う剣闘士の背後に迫る。
「危ねぇ!」
「なにィ!?」
「月影神明流中伝・伍の型『紅夜月』」
反応する間もなく剣闘士を斬り裂いた。
「サラ大丈夫か?」
「大丈夫です。あと二人ですね」
「そうだな」
残りはゴーレムの不良と風の不良。
「それじゃあ作戦その2で」
「はい」
サラが前で俺が後ろというフォーメーションに変更し、あとの二人の動きを待つ。
「何だあの構えは!?」
「構うな!岩でも投げつけてやれ!」
「ああそうだな!」
あんなふざけた構えなんて俺様の大岩に当たれば意味ねぇっての!
「いけゴーレム!」
ゴーレムの不良は予想通りだ。
風の不良はどう出る?
「サラ受けれるな!」
「当たり前です」
「死ねぇ!」
ゴーレムが自分の体と変わらないほど巨大な岩を持ち上げ、サラ目掛けて投げた。
「『アイギスの盾』!」
禍々しい盾が黄金に光り始めた。
そして周りの魔力を吸い込み始めた。
「何が起こってやがる!?」
大岩はその魔力の流れに捕まり、ゆっくりとアイギスの盾へと引き寄せられていく。
「喰いなさい『アイギスの盾』」
サラがそう言うとアイギスの盾が大岩を吸収した。
「なんなんだよその力は――!?」
「ふざけるなよ……」
「さぁ観念しなさい。『奥義・アイギスの審判』」
サラの背後から怒り狂ったアテナが現れた。
天井に届きそうなほど巨大なアテナの虚像が不良二人に槍を振り下ろした。
不良二人は絶叫と共に気絶した。
すると会場にはビィーというブザーが鳴り響いた。
「し、試合終了!」
それは試合終了の合図だった。
実況も解説も観衆たちも、サラの必殺技に呆気に取られていた。
「か、勝ったのは、ラバルアンドサラチーム!」
ワンテンポ遅れて観衆たちからの拍手と歓声が滝のように溢れ出した。
「すごいわね……」
「なんだありゃ化け物かよ」
「とんでもないものを見てしまった気がします」
「……」
「まさかこの試合の主役はサラ殿だったとは」
ラバルの活躍を見たかった幼馴染たちだったが、サラの圧倒的な強さと力に驚きを隠せなかった。
それはAクラスのメンバーも同じだった。
「彼は実力を隠したか」
「でも、その片鱗は見せた」
「君を打ち負かした新入生の本気を見たかったんだけどねぇ」
「あの野郎、全部一撃でノックアウトしてやがった。相手はHP100%だったってのによォ」
「まぁいい。いずれにせよMr.ラバルは強いという事だ。それじゃあ帰ろうか」
彼らは立ち上がると、興奮冷めやらぬ会場を後にした。




