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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第四章 トラキア連邦
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第五十六話 宣戦布告

--夜 バレンシュテット帝国 辺境派遣軍 飛行空母 艦橋


 艦橋にジークとヒマジンがやってくる。


 ジークが口を開く。


「・・・頃合いだな。ヒマジン伯爵、全軍をトラキア連邦国境まで、進めてくれ」


「了解しました。帝国東部方面軍、及び帝国機甲兵団は、既に大型輸送飛空艇に分乗を済ませております。・・・それで、陛下からの通達に対して、トラキア連邦からの回答は、どのように?」


「トラキア連邦からの回答は、未だ無い」


 『回答が無い』と聞いたヒマジンの目付きが変わる。


「ほう? トラキアごときが、皇帝陛下を・・・帝国を無視すると?」


 ジークが不敵な笑みを浮かべる。


「そういう事だ」


「随分とナメられたものですな。・・・これは、身の程を教えてやらねば」


「回答期限の零時になれば、父上がここに来られるだろう。まだ兵を起こす必要は無い。寝かせておけ」


「判りました」


 帝国辺境派遣軍は、飛行空母、飛行戦艦、大型輸送飛空艇に分乗して、州都キャスパーシティを出発し、夜の星空をトラキア連邦国境へ移動していく。







 帝国辺境派遣軍が、トラキア連邦国境に到着した頃、程なく艦橋の一角に転移門(ゲート)が現れ、ラインハルトとエリシスが現れる。


 ジークは、父である皇帝ラインハルトに一礼し、ヒマジンは最敬礼をとる。


 ラインハルトはジークに尋ねる。


「ジーク。こちらにトラキア連邦からの回答は来たか?」


「いいえ。来ておりません」


 ジークからの答えを聞いたラインハルトは、鼻で笑う。


「フッ・・・。良い度胸だ」 


「父上。折り入ってお願いしたい事があるのですが」


「お前から願い事とは、珍しいな。・・・なんだ? 言ってみろ」


「トラキア連邦との戦いに勝利した暁には、飛び級で士官学校を卒業させて下さい」


「良いだろう。百回の座学より、一回の実践経験のほうが重要だ」


「ありがとうございます」


「ところで・・・、何故、卒業を急ぐのだ?」


「・・・早く身を固めて、父上の助けになりたいと思いまして」


 ソフィアとアストリッド。


 二人の妃の為にも、ジークは勝たねばならなかった。


「・・・そうか」


 ラインハルトは、子供達の中で最も自分に似ていて、父である自分を目標として、背伸びをしてでも懸命に頑張る長男ジークが可愛くてしょうがない。


 ジークの言葉に顔の表情こそほとんど変化は無いが、口元がにやける。


 ラインハルトは、内心ではジークの言葉が嬉しくてしょうがなかった。







--零時。日付が変わる時間になる。


 ラインハルトが口を開く。


「・・・時間だ。トラキア連邦は、帝国からの通達に対し、愚かにも無視するという選択をした。我がバレンシュテット帝国は、トラキア連邦に宣戦を布告する! トラキア連邦ごと鼠人(スケーブン)を叩き潰せ!」


 ジークとヒマジンは、宣戦布告を告げたラインハルトに深々と頭を下げる。


「畏まりました」


 ジークが口を開く。


「開戦の勅命は下った。ヒマジン伯爵!」


 ヒマジンが口を開く。


「ハッ! 飛行戦艦へ伝達、『花火を打ち上げろ』!」


 伝令が答える。


「了解しました」


 ジークとヒマジンは、艦橋の窓際へ歩いて行く。


 やがて、飛行戦艦の主砲が一斉に火を吹き、トラキア連邦領内にある国境を監視している櫓を吹き飛ばす。


 主砲の一斉射撃を受け、爆煙を上げて木っ端微塵に吹き飛ぶ櫓を望遠鏡で眺めながら、ヒマジンが口を開く。


「『花火を確認』。・・・砲手に伝えろ。『良い腕だ。今朝の朝食は、オレの奢りだ』とな!」


「ハッ!」


 ラインハルトとエリシスは、窓際にいるジークとヒマジンの元へ来る。


 ラインハルトが口を開く。


「ジーク。後は任せたぞ。吉報を期待する」


「お任せ下さい」


 エリシスがヒマジンに片目を瞑って微笑み掛ける。


「それじゃ、頑張ってね。イケメンさん」


「あいよ」


 ラインハルトとエリシスは、再び転移門(ゲート)で皇宮へと帰って行った。







 ジークが口を開く。


「ヒマジン伯爵。得意の電撃戦を見せて貰おう」


「心得ました。帝国辺境派遣軍は、これよりトラキア連邦に侵攻! 一気に敵首都ツァンダレイを叩く!」


「了解!」


 伝令が答える。


 帝国辺境派遣軍の飛行艦隊群は、国境を越えてトラキア連邦領内へ侵攻する。


 飛行戦艦、飛行空母は、四隻毎の雁行陣を取り、その後を大型輸送飛空艇群が隊列を組んで続く。


 帝国辺境派遣軍二十五万の大軍の前に、トラキア連邦の運命は、まさに風前の灯火であった。







--未明 トラキア連邦 首都ツァンダレイ 議長府


 湯浴みを済ませたフェリシアは、一人、暗い部屋の中で議長席に座り、目を閉じて瞑想していた。


 ドアをノックする音の後、職員がドアを開ける。


「議長! ここでしたか! 一大事です! バレンシュテット帝国が『宣戦布告』してきました!  既に国境の監視櫓は、帝国軍の砲撃によって破壊され、連邦領内に侵攻中とのことです!」


 フェリシアは、目を開いて答える。


「遂に・・・来ましたか」


 フェリシアは、立ち上がると職員の方を向く。


「・・・議長」


「帝国が攻めて来ました。全軍、全国民に開戦の知らせをお願いします」


「判りました」


 フェリシアは、再び暗い部屋の中で議長席に座り、目を閉じて瞑想する。





 トラキア連邦は滅びるだろう。


 だが、できる限りの事はしよう。




 フェリシアは、悲壮な決意を胸にしていた。 


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