番外編:マイル先生とお嬢様
「シルヴィア嬢、お気持ちは嬉しいのですが、私は貴女と婚姻を結ぶことは難しいと思います。」
色々な陰謀が渦巻くお嬢様とマイル先生のお茶会の席で、意を決したようにマイル先生が切り出す。
「貴女のお気持ちは嬉しく思います。けれども、貴女はアルマージュ商会を継がないといけませんし、私は自領の領主です。ですので…」
真摯な表情でお嬢様にそう告げるマイル先生。
お嬢様は俯き、少し震えている。
そうですよね、でも…その言い方じゃ…マイル先生…
「マイル様!!本当ですの!?私の気持ちが嬉しいと、そう仰って下さるなんて!ご心配いりませんわ!跡継ぎの問題ならすでに片付いております!!」
「…え…」
「私の従弟がアルマージュ商会を継ぐことになりましたの!」
ええ。マイル先生、外堀は埋まっていますよ。
「旦那様の弟であられるダルス様のご次男様は、とても優秀な方でして、以前よりアルマージュ商会の跡目にと…。なので旦那様はお嬢様のご希望される男性との婚姻をお望みです」
爵位は無いが、国内外問わず展開し今や大商会となっているアルマージュ商会のご息女であれば、ご貴族様のナイル先生の妻としては申し分ない存在である。
追い詰められてますね、マイル先生。
逃げて─!!と言いたいが、俺の天使様も一枚噛んでるこのお茶会…裏切るわけにはいかないいんだよね…!
ごめんね!マイル先生!!
「それでは…、アルマージュ商会の跡継ぎ問題は…、良いということですね」
少し茫然とした様に言うマイル先生。
お嬢様はにっこりとほほ笑んでいる。
「私は…貴女より10も年上のおじさんですよ。それでも…いいのでしょうか…」
うんうん。攻めるとしたらそこしかもう無いよね。
でも…
「全く!!全く問題ありませんわ!だって…私の初恋はマイル様ですもの!少し…寄り道は致しましたが、ずっとお慕いしていましたわ!!」
寄り道……。
お嬢様恐怖症にまでなった友人の切ない顔が一瞬浮かんでしまった。
マイル先生はお嬢様の熱烈な告白に少し顔を朱くする。
え…、マイル先生…?
「では、遠慮はいりませんね。シルヴィア嬢。私の妻となり、共に領地を支えてくれますか?」
そう言ってお嬢様の前でマイル先生が跪く。
え…いいの?マイル先生、早まってない…?気は確か!!?
「はい!勿論ですわ!!」
マイル先生の手を取り、お嬢様が幸せそうに微笑む。
チェックメイト──。
こうしてお嬢様とマイル先生は婚約されたのだった──。
「ふふふ、これからが大変ですね」
俺の天使様、エリシア様が微笑みながら言う。あー可愛いなあ。
髪の毛結ってるー!似合いすぎて昇天しそう…。
「そうですね、マイル先生もお嬢様に苦労されるんでしょうね…」
俺の言葉にエリシア様はキョトンとする。何その表情!!可愛すぎるんですけど!!!
「違いますよ!!シルヴィアが、です。お兄様の愛は重たいですからね。大変ですよー、絶対。」
「へ……?」
「あれ、気が付いてなかったんですか?全てはお兄様の掌の上ですよ。まあ、シルヴィアがお兄様を好きだと言うので協力はしましたが…。」
そう言って複雑そうに微笑む天使様。
可愛さにも驚くが、その無い様に吃驚する。
まさか…マイル先生…嘘ですよね…
一体いつから…
マイル先生の好みにお嬢様を小さい頃から教育していた…なんてことは…
無い…ですよね…?
1つの恐ろしい疑惑が生まれたが、必死に頭から振り払う。
それを知っていて…お嬢様に協力した天使様…
「どうしました?ロイ?」
「い、いいえ!!今日もエリシア様は可愛くて美しくて、最高です!!」
ルーエント兄妹は絶対に敵にはしてはいけないと…心に誓います!!
番外編…END
マイル先生とシルヴィアのその後、如何だったでしょうか?
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