表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呼び出し英雄物語  作者: 東京多摩
22/27

Uエンド

召喚者「偉大なる猫」

 人影があった。

 長い脚に細身の胴、指もちゃんと五本ついている。

 そして、頭の部分も丸い。

 だが、その大きさが普通の人とは違った。

 召喚者の頭は、猫であった。

 それも、とても凛々しい山猫そっくりであった。

 王は恐る恐る猫頭人身の召喚者に近寄り、頭を垂れた。

 そして、召喚者に魔物によって世界が危機的状況であること、魔王と呼ばれる存在がその頭目であること、そして『救世主』として魔王を倒し、この国を救ってほしいと伝えた。

 『救世主』はふかふかの顎に手を当て首を傾け、口を開いた。


「別にいいけど、その後ちゃんと元の世界に帰れるのよね?」


 鈴の転がるような澄んだ、女性の声だった。

 面食らった王がどもりながら、「もちろんです。」と伝えると、『救世主』は魔王の居場所を聞いた。

 大臣が持ってきた地図を確認し、魔王の城に印をつけると『救世主』は「行ってきます。」とだけ言い残し、走って離宮を飛び出していった。

 常人では出せないほどのスピードで、王や近衛たちが慌てて外に出た時には、すでに『救世主』の姿はなかった。

 そしておおよそ2週間後、『救世主』がひょっこりと帰ってきた。

 手には倒したとの証である、魔王の首を持って。

 その話はすぐに城下へと広まり、『救世主』を称える物語や書籍などが国に溢れ返った。

 当の本人は、魔王を倒すとさっさと元の世界へと帰ったため、誰も名を知らなかった。

 そのため、『救世主』は国の言葉で、偉大なるという意味のバス、猫と言う言葉のテトの二言を合わせた「バステト」と呼ばるようになった。

 いつしか「バステト」は国の主神となり、人々はとても猫を大切にするようになっていった。

 『救世主』バステトによって、国は救われたのだった。



 それから数百年後、国は戦に負け、滅びた。

 猫を体に括り付けた兵士が敵国によって投入され、主神の化身である猫を切れない兵士は皆倒されたのだった。

 皮肉にも、全く同じ存在によってこの国は救われ、そして滅びたのだった。

 『救世主』バステトによって。

 当の彼女はそれを知らないだろう。

 なぜならば、神などこの世界に居ないのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ