食事
「素泊まりで安いとこがあったから良かったものの、明日からどうするんだよ?」
「そういうのは下僕が考える事じゃろう?主をこのような粗末な宿に泊まらせて申し訳ないと思わんのか?」
「思わねえ。」
いよいよこのガキ魔法使いとの関係を考えないといけないな。いつまでも一緒にいてもしょうがない。かと言ってこいつも俺もまったく当てが無いからな。誰か俺の代わりになってくれる人がいればな…。
あ、こんな事ならタヌシのじいさんに任せれば良かった。
そんな事を考えていると、部屋の外に気配を感じた。我々の部屋は二階の一番奥なので、この部屋に用事があるのは明白。
まさか俺か…?
部屋の扉の前に進み構える。殺気は感じないから大丈夫とは思うが、感じさせない達人だったら恐い。
『トントン』
ノック?いよいよ気軽な訪問者を装える達人か!?
「入れ。」
マリアがあっさりオッケーした。
ドアが開いて顔を覗かしたのは、銀髪の男だった。なんだ?昼間のイケメンじゃねえか。
「ほう、見かけた顔じゃな?何用じゃ?」
「ようやくお会いすることができた。僕の女王様!」
イケメンは部屋に入るなり興奮した表情でマリアの前に膝まずいた。
出た、ヤバイヤツだ…!
「ウルファスと申します!」
「よし、ウルフよ。お主はわからわの下僕じゃ。」
「ありがたき幸せでございます!」
勝手にやってろ。
一応マリアを押し付けられる人材は得たが、本当に大丈夫か。
いや、まあいいんだけど。変態ロリコン野郎でも。剣の腕もあるし、イケメンだし、いいんだけど。なんなんだ。この気に食わない感じは。
「まあ、よろしく。コンゴウです。」
とりあえず右手を出した。
「…よろしく。」
ウルファスは握り返してくれたが、さっきと明らかに態度が違った。やっぱり気に食わねえな、こいつ!
「よし、とりあえず今日はもう寝るぞ。」マリアがベットに飛び乗りながら言った。
「そうだな、じゃあおやすみ。」俺もベットに入ろうとした。
「たわけか!主と同じベッドで寝る下僕がおるか!だいたい見張りがいるじゃろうが!ウルフで交代でせんか!」
「はあ!?見張りなんかいらねえだろ!」
「はい、おまかせください!」
そう言いながらウルフは部屋のいすをドアの方に向けて座った。
え、イスを使われると寝る場所が…。仕方なく床に寝転んだ。
「じゃあ、まあ、よろしく…。」
「ちょっといいかな?」ウルファスは話しかけてきた。
マリアはもう寝息をたてている。
「あ、俺?」顔を向けて聞いてみた。
「君はどうやってマリアント様の下僕になったんだ?失礼だが見た目では分からなくてね。」
失礼なら言うんじゃねえ。
「知らねえよ。別に頼んでなった訳じゃねえ。」
「自慢か?」
は?
「マリアント様が気に入ってくれたとでも言いたいのか?」
「いや、そんなつもりじゃないけど…。」
「確かに君は腕っぷしは強そうだが、マリアント様とは合わない。結局僕のような存在が居なかっただけに過ぎない。」
「つまり?」
「君は所詮優れた下僕が現れるまでの代用品に過ぎないという事だ。」
「俺はお前みたいな変態とは違ってよ、なりたかった訳じゃねえ!」
「うるさいわ!静かにせんか!」
マリアに怒鳴られた。
「とにかくマリアント様の下僕にふさわしいのは僕だ。」
「はい、はい、わかりました。」
別になりたい訳でもないが、気に食わないヤツに気に食わない事を言われると単純に腹が立つ。といってムキになるのもおかしいしな…。
まあ、いいや。もう寝よう。
夜中にふと目が覚めた。
いや、理由が無い訳じゃない。
…殺気を感じた。
すぐにウルファスの方を見る。
ウルファスは変わらずイスに腰掛けて入り口の方を見ていた。
どうやらこいつが殺気の元では無さそうだな。
というか、寝てんじゃねえのか?何が見張りだ。
「どうやら、ただの木偶の坊では無いようだな?」
起きてやがった。
「ふん、分かってるなら行かないのかよ?」
「ふう、頭は弱いようだな。僕は見張りなんだ、見張りが持ち場から離れる訳ないだろう。」
いちいちこの野郎は。
「じゃあ、」