夜
もう我慢の限界だった!
「おおーい!早く起きろ!もう無理だ!」
「…なんじゃ、騒々しい。寝てられんぞ。」
やっと部屋の中から、声がした。
何時かも寝ていて何言ってやがる!
「いいから、早く魔法を解け!漏れる漏れる!」
「…、…、…、ほれ。」
「うおおおお!!」
体がふっと軽くなったような気がした瞬間、俺は走り出した。
ようやく外に出られた!
外の便所に駆け込んだ。
ふ~。
この歳になって、お漏らししそうになるとはな…。
便所から出るとすっかり外は暗くなっていた。
なんともすごい一日だったなあ。
初めて旅に出て、変な幼女にあって、生まれて初めて魔法見て、それの手下になって、ゴリラにされて…。
本当に元に戻るんだろうか?
手を洗おうと、桶の所に行く。
桶の中に突っ込んだ手がいつもの手だった事に気づいた。
「あっ、戻ってる!?」
手だけとかじゃないよね?
顔や体を触ってみると、たわしのような黒い硬い毛は無くなっていた。
良かった~。
「きちんと見張りをした褒美じゃ。ふわ~…、よく寝た。」
いつの間にかマリアが後ろにいた。
「なあ、なんであんなとこにいたんだ?」
ずっと疑問に思ってたけど聞けなかった事を聞いてみた。
なんで聞かなかったと言われると自分でも分からないが。
どっかでただの幼女の戯言だと思いたかったのか、偉そうな事を言って地元から飛び出しておきながらおかしな事に巻き込まれるのを避けてたのか。
「…わからん。」
「お前!分からない事あるか!お前が分からなかったら誰がわかるんだよ!」
「分からんものはしかたあるまい。思い出せないだけか、記憶がないのかもわからんしな。まあ妾が起きてしまえばこっちのものよ。何人が来ようがな。明日はすぐ旅立つぞ。早めに寝ておけ。」
「えっ?どこか行く当てでもあるのか?」
「妾ほどの者がこんなとこにいつまでもおれるか。もっといろんなものがあるところに行くのじゃ。」
つまり当てはないってことね…。
そう言い残してマリアは再び小屋の中に戻った。
わからないか…。
あいつ自身もなんであんな事になっていたかはわからない。
わかってる事と言えば、魔法を使える女の子って事くらいか。
でもわからないってのも面白いかもしれないな。
俺が聞けなかったのははっきり知りたくなかっただけか。
あいつの素性や目的を知って、一緒に居たくなくなるかもしれない事を恐れてたのかも。
せっかくつまらない日常から離れたかったんだ。
ちょうどいい。
あいつが何者か、何が目的か、一緒にいて見極めるもの悪くは無い。
そう思い、俺も小屋の中に戻った。




