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彼女を寝取られた俺、ショックで歌い手活動に没頭してたら死ぬほど人気が出てしまう~復縁したいと言われてももう遅い~  作者: 住処


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45話

 月曜の朝、駅から学校へ向かう道がいつもより少し落ち着かない。

 昨日モールで選んだジャケットは当然着ていないけど、七海に勧められたシャツを制服の下に着込んだ。

 髪は美容院で整えた形を保つようにワックスで軽くセットしてきた。


 鏡越しに見た自分は、確かに昨日までの俺とは違っていた。


 なんだか妙に視線が多い気がして恥ずかしくなる。

 高校デビューってタイミングでもないのに、いきなり見た目を変えるのは変だろう。

 俺だってクラスメイトがいきなり大きく変わったら二度見してしまうかもしれない。


 教室のドアを開けた瞬間、空気がわずかにざわついた。


「……あれ、朝倉?」


「なんか雰囲気変わった?」


 そんな小声が聞こえる。

 制服は同じはずなのに、髪型と着こなしを少し整えるだけでこんなに違うものか。


「おおっ! なんか、朝倉くんすごくカッコよくなってる!」


 佐原が勢いよく駆け寄ってきた。

 俺の顔をまじまじと見ながら、子犬みたいな笑顔を向けてくる。


「そ、そうか?」


「うん、そうだよ!」


 隣の席の七海は、ニヤニヤと俺を見る。


「ほら見ろ、昨日の成果だ」


 なんて耳打ちしてきた。


「やっぱ似合ってる」


 咲も小声でと言ってくれて少しだけ視線を外す。

 その笑顔を見た瞬間、昨日の服屋での光景が一瞬よみがえった。


 ふと前の席の方へ目をやると黙ってノートを開いていた玲奈が、何気ないふうを装ってこちらを見ていた。

 一瞬だけ視線がぶつかる。

 驚き、戸惑い、そしてほんの少しの悔しさが混じったような色が、その瞳に浮かんでいた気がした。


 俺はすぐに視線を外す。

 心の奥で「これが俺だ」と言い放ってやりたい気持ちと、昨日のあの不安げな顔を思い出す。

 胸の奥に沈む気持ちが、同時にうずく。


 ……あいつのことは、まだ何も解決していない。


 それでも、こうして笑われたり褒められたりしている自分に、少しだけ罪悪感が混ざる。


「おい、ボーッとしてんなよ」


 七海が俺の机を軽く叩いて声をかけてきた。

 その瞬間、教室のざわつきに意識が戻る。


「……悪い」


 平静を装ってそう返すと、何事もなかったかのように視線を黒板へ向けた。


 昼休み、弁当を広げた俺の机に、七海と咲が当たり前のように椅子を引き寄せてくる。

 七海は唐揚げをつまみながら、配信当日の進行案をさらっと口にした。


「開始の挨拶は短めにして、すぐ一曲目入る。で、歌ったあとに軽くトーク。質問コーナーとかどう?」


「……あー定番って感じの流れだな?」


「そんなもん。テンポ命だし、変に奇をてらうよりいいんじゃない?」


 咲は箸を止めて、少しだけ笑う。


「リスナーさんきっと喜ぶよ。だって……智也くん、今日はすごくいい顔してる」


「……そうか?」


 言葉にすると照れくさいが、その笑顔に押されるように頷く。


 だけど、ふと頭の隅に玲奈の視線がよぎる。

 あのときの驚きと、何かを飲み込んだような表情。

 配信の準備は整いつつある。

 だけど、胸の奥にはまだ解けない結び目が残ったままだった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

よろしければ☆で応援してもらえると、とっても嬉しいです٩(ˊᗜˋ*)و

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