33話
廊下を抜けると、外の空気が甘ったるい匂いで満ちていた。
焼きそば、チュロス、かき氷、フランクフルト。
文化祭の屋台が並ぶ中庭には、制服姿の生徒たちが楽しそうに行き交っていた。
「よーし、まずはチュロスでしょ」
七海がまっすぐ屋台に向かい、注文を終えると、3種類の味が入った紙袋を持って戻ってきた。
「はい、きなことシナモンとイチゴ。一本ずつ、シェアしよ」
「え、いいの?」
「文化祭の糖分は共有が基本だから。JKルール」
七海がドヤ顔で袋を差し出してくる。
俺はシナモン、咲はチョコ味を選んで、そろって一口。
「……うま」
「ね、文化祭補正で1.5倍はあるよね」
咲も控えめにかじって、ぽつりと「甘くて美味しいね」と呟いた。
その小さな声に、なんだか妙に満たされた気持ちになる。
次に向かったのは、輪投げコーナーだった。
景品は駄菓子とスマホスタンド。男子たちが盛り上がっている。
「朝倉もやってみなよー」
七海が景品を指差して笑う。
渡された輪っかを受け取って、的を見据える。
「よしっやってみるか」
1本目、命中。
2本目、かろうじで成功。
3本目、外れて壁にカンと跳ね返った。
「あーっ!」
七海と咲の声が同時に重なった。
二人とも、まるでドラマの失敗シーンを見たようなリアクションで、逆に笑ってしまう。
「ごめん、全然入らんかったわ」
「ナイスチャレンジ!」
「むしろ盛り上がったからオッケー」
二人に手を振られながら、よくわからない駄菓子の詰め合わせを景品にもらった。
正直、成功より楽しかった気がする。
数件まわって、手元には輪投げの景品、キャンディの包み、あと意味不明な手作りキーホルダーがぶら下がっていた。
「……俺、文化祭で戦利品持ち歩いたの初めてかもしれん」
「え、青春してんじゃん」
七海が笑った、その直後だった。
「ななみーっ!」
少し離れた場所から、明るい声が飛んできた。
振り向くと、七海と同じギャルグループの子たちが手を振っていた。
「一緒に回る約束してたじゃん! 行くよー!」
「あー! まじか、やっべ!」
七海が思わず駆け足で数歩進みかけて、振り返った。
「ごめん、ちょっとだけ抜ける!」
「了解」
こっちが言うより早く、七海は走り出していった。
ギャルたちに囲まれて、笑いながら去っていく。
その姿を見送ってから、ふと横を見た。
咲と、俺。
二人きり。
なんとなく、空気が変わった気がした。
ほんの少し、時間の流れがゆっくりになったような。
「……えっと」
咲が何かを言いかけて、でも言葉を飲み込んだ。
その仕草だけで、こっちの心拍数がほんのり上がった気がした。
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