↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女を寝取られた俺、ショックで歌い手活動に没頭してたら死ぬほど人気が出てしまう~復縁したいと言われてももう遅い~  作者: 住処


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/56

24話

 教室に入ると、何人かの視線を感じた。

 特別目立つようなことはしてない。

 でも、明らかに前とは違う「注目」がそこにあった。


「……あの動画、朝倉じゃね?」

「名前も声も似てるよな、てか、あの感じ……」


 ぼそぼそと交わされる声が、すぐ後ろから聞こえる。


「え、マジ? えーあれ本人?」


 興味本位の好奇心、軽口。


 俺は、前を向いたまま無反応を貫いた。けれど、背中にはじっとりと汗がにじんでいた。


 休み時間。昼食を終えた後のゆるい空気の中で、七海がぽつりと口を開いた。


「最近すごいじゃん。朝倉」


「なにが?」


 わざとらしくとぼけると、七海は鼻で笑った。


「ほら、再生数。ちゃんと見てんだからね」


「……ああ、うん。まぁ、ちょっとは伸びてる」


「ちょっと、ねえ……」


 七海はそう言いながら、咲と顔を見合わせて笑い合う。。


「でも、すごいことだよ? わたし、朝倉くんが投稿始めたころから見てるから……なんか、うれしいな」


 俺はその言葉に、照れくさくて目をそらした。


 教室のざわめきと、二人の沈黙。

 名前を呼ばれるでもなく、正面から褒められるでもない。

 でも、変化は確かに始まっていた。




 放課後、机を片づけていたら、視界の端にひょこっと影が差した。

 すぐ横では、七海がスマホをいじっている。


「……あのさ、ちょっといい?」


「おっと〜、朝倉に話すときは私を通してもらわないと?」


 七海が冗談めかして口を挟む。


「いや、誰のマネージャーだよ」


 軽く突っ込みつつ、視線を佐原に戻す。


 見れば、同じクラスの女子。地味目な髪型に眼鏡、おとなしい印象の女子だ。


「あ、うん。どうかした?」


「えっと……その……もしかして、sakuraAって……」


 一瞬、心臓が跳ねた。

 でもすぐに表情を作り直す。


「んー? なんの話?」


 ごまかすように笑ってみせると、佐原は慌てて手を振った。


「ご、ごめん! 違ったらほんとごめん! でも……なんか、すごく声が似てたから……」


 その目は、真剣だった。茶化すでもなく、詮索でもなく、ただ純粋に確認したいという顔。


「……ばれた?」


 苦笑まじりにそう言うと、佐原の目がぱっと見開かれる。


「やっぱり!? わ、嬉しい……! わたし、あの投稿、めっちゃ好きで……! なんか、声に真っ直ぐさがあって……ごめん、うまく言えないけど」


「いや、ありがとう。なんか、嬉しいわ」


 言いながら、頬が少し熱くなるのを感じた。


 まさかこんなかたちで誰かから感想をもらえるとは思ってなかった。


「これからも聴いていい?」


「もちろん。むしろ、聴いてくれるなら励みになる」


 佐原ははにかんで笑って、軽く頭を下げた。


「じゃ、じゃあ……またね!」


 そう言って、弾むように教室を出ていく。


 その背中を見ながら、俺は少しだけ、深呼吸した。


 誰かに知られるのは、やっぱりちょっと怖い。

 でも、こういう出会いがあるなら――悪くない。


(……次も、ちゃんと投稿しないとな)

最後まで読んでいただきありがとうございます!

よろしければ☆で応援してもらえると、とっても嬉しいです٩(ˊᗜˋ*)و

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。