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彼女を寝取られた俺、ショックで歌い手活動に没頭してたら死ぬほど人気が出てしまう~復縁したいと言われてももう遅い~  作者: 住処


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13話

 カラオケを出たときには、空がうっすら紫に染まりかけていた

 七海は肩を回しながら、大きく伸びをする


「ふぃ~~っ、歌った歌った! ねぇ、お腹すかない? ファミレスいこ、ファミレス」


「いきなり元気だな……」


「当たり前っしょ! カロリー使った分は補給しないと」


 咲も笑いながら「うん、わたしもパンしか食べてないし……」と同意する

 三人の足取りはそのまま、駅前のファミレスへと向かう


 が、店の看板が見えた瞬間――七海が立ち止まった


「……あっっっぶな!!!」


「な、なんだよ」


「バイト! 今日バイトだった!!」


「えっ」


 七海はスマホを慌てて確認しながら、うわうわって声を上げていた


「やば、完全に忘れてた……チャリ飛ばせば間に合うか……!」


「行け、間に合え」


「お前あっさりすぎるっしょ!? でも行く! 咲、朝倉、また今度ね!」


 七海はパタパタと走り出して、振り返らずに手を振って消えていった

 その後ろ姿が、いつも通りすぎて、逆に妙に安心感があった


 残された俺と咲は、ファミレスの前にぽつんと立つ

 街灯と看板の明かりが、足元をオレンジ色に照らしていた


「……あ、どする?」


 俺がぽつりと聞くと、咲は一瞬きょとんとした顔をして、すぐに笑った


「行こっか」


「……あ、ああ」


 誘われた形になって、思わず少しだけ間が空いた

 でも、断る理由なんてなかった


 自動ドアが開く音がして、ふたりでファミレスに入った

 温かい空気と、コーヒーの匂いが出迎えてくれた




 ファミレスの窓際の席に、対面で座る

 注文を済ませると、ちょっとだけ静かな時間が流れる


「今日の投稿、聴いたよ」


 咲が、何気ない口調で言った


「え、マジで?」


「うんこっそり、通知オンにしてる」


「……えっ」


 思わず声が裏返りそうになる


「前より、声がまっすぐ届くようになった気がする」


「……そ、そうかな」


「うんなんか、安心するんだよね」


 その言葉は、ちょっと不思議だった

 安心するって、歌に対して向けられる感想としては少し違う気もしたけど

 だからこそ、響いた


「……ありがとう」


 素直に言えた

 多分、咲だから

 この子の言葉は、変に構えなくてもいい気がする


「わたし、歌とか全然詳しくないけど……でも、好きだよ」


「……そっか」


 たぶん、今の俺は、顔が少しだけ熱い

 咲はそれに気づいてないふりをして、ドリンクをちゅーっと吸ってた


 外はすっかり暗くなっていた

 窓の向こうに、街灯の灯りがちらちら瞬いている

 この時間が、なんとなく、終わってほしくないと思った


 駅へ向かう途中、咲がふと足を止めた


「……ねぇ」


「ん?」


「また聴かせてね智也くんの歌」


 その言葉は、どこまでも優しかった

 押しつけがましくなくて、でもちゃんと期待してるって伝わるような


「……ああ」


 俺は短く返した

 でもそれだけじゃ足りない気がして、もう一言だけ付け足した


「……練習しとくわ」


 咲はふっと笑って、手を軽く振った


 それを見ながら、俺は思った


 うまくなりたい理由って、こんなふうに誰かに向けられることもあるんだな、って


 咲はふっと笑って、手を軽く振った。


 スマホを開くと、通知がいくつか増えていた。

 たまたまかもしれないけど。

 今日の投稿、いつもより少しだけ、伸びが早い気がした。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

よろしければ☆で応援してもらえると、とっても嬉しいです٩(ˊᗜˋ*)و

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