6話 ダンジョン
「今日は性能の確認から始めますか」
次の日ログインした私は、早速ウエストポーチの性能確認を始めた。
「まずはどれぐらい入るかを試してみますか。とは言っても入れる程アイテムはないから.....」
私はそう言ってウエストポーチの口を開け、手を入れていく。
すると肩まで入ったところで指先にバッグの端が当たり、横幅も同じぐらいのようだった。
「おお〜、小でもこれだけ入るんだね。使ってみたら案外足りなかったりするのかな?それじゃあ次は自動修復の確認をしますか」
何となくの大きさを確認し終わり、次は自動修復の確認へと移る。
もし戻らなくてもわからないよう、ベルトの内側を短剣で傷つける。
そのまましばらく待っていると、じわじわと傷は塞がっていった。
「どれぐらいまで直るかはさすがにやらなくてもいいとして、汚れがどうなるかは確かめようかな?お金を稼がないとだし、沼で素材を集めながら確かめますか」
そう決めた私は宿屋を出て、沼へと向かう。
しばらく歩いて沼に着くと、昨日以上に人の姿は見えなかった。
「人がいないと、色々試しやすくていいよね.....っと」
早速私は軽く泥水をウエストポーチにかける。
すると、ウエストポーチは防水加工がされているかのようにその水を弾いた。
次に私は泥水を塗り込んでみる。
染み込んだ泥水は傷と同じように消えていった。
「これなら汚れる心配はしなくてよさそ.....そういえば水から出てしばらくすれば消えるんだったね。なんにせよ汚れる心配はない訳だし、アイテム回収にいきますか!」
検証が無駄だったことに気が付いたが、気を取り直して探索を始める。
それから私はスライムを絞ったり、睡蓮を回収したり、魚に足を噛まれたりしながら、沼を探索していった。
◆◆◆◆◆
それから一時間ほどが経ち、私は光を放つ青い渦を見つけていた。
そんな面白そうなものを前に行かないという選択肢はない。
「なにか面白そうなもの発見!行ってみますか!」
こうして私は渦へと足を踏み入れたのだった。
その瞬間視界が光に包まれ、視界が戻るとそこは霧に覆われた薄暗い沼地だった。
「おお~雰囲気ある~ここならいい素材が取れそうだね」
そう呟き、私は沼の奥へと歩いて行った。
この沼は元の沼より水深が深く歩きにくかったので思うように進むことはできなかったが、その分流木、手のひらほどの大きさの鱗、睡蓮などの素材が多くあった。
そして沼の探索を初めて数分が経ち、犬ほどの大きさの蛙を発見する。
「あれは蛙かな?とりあえず戦ってみますか!」
短剣を抜き、蛙へと切りかかる。
あまり早くはうごけないので切りかかるというより近づいていくと言った方が正しいかもしれないが。
そんな私に対し、蛙はこちらを見ると眠たげに薄めていた目を開き、舌を伸ばしてきた。
驚くほど早いスピードで伸びてきた舌は、私が本当に驚いて倒れたことで体を掠めるだけで済んだ。
「ちょっと速くない!?」
そう叫びながら、立ち上がろうとする私に容赦なく蛙の舌が襲いかかる。
舌が肩刺さった肩に注射器で刺されたような痛みが走った。
その痛みに顔をしかめながらも立ち上がって蛙に近づいていく。
舌を受けること二度、ようやく私は短剣が当たる位置までたどり着いた。
そして短剣を振り抜くその直前、蛙は今までの舌攻撃ではなくその体を膨らませ私に何かを吐きかけてくる。
体に液体がかかるが、スライムで慣れていた私はそのまま短剣を突き立てる。
短剣が刺さった蛙はその体を光の粒子に変え、その場に皮を残し消えていった。
「やった、勝っ.....た?」
しかし、それと同時に体から力が抜け視界が赤く染まる。
そして、リスポーンしますか?はい いいえと文字が表示された。
「最後のあれが毒かなにかだったのか、出血状態にでもなってたのか.....なんにせよ回復アイテムが必要だね。とりあえずリスポーンしますか」
少し死因について考えてから はい を選ぶ。
すると、ダンジョンに入った時と同じように視界が光に包まれ、光が収まるとそこは街の宿屋だった。
「さて、採ったアイテムがどうなったのか確認しますか」
死んだのだから何かしらは起こっているだろうと思い、ウエストポーチの中身を確認する。
「えっと、睡蓮と石、スライムの死体.....」
しばらく中身を確認し、ある結論に行き着く。
「ダンジョンの中で採った素材だけが無くなってるみたいだね。経験値は減ってるかもしれないけどそもそもがわからないから問題無し!」
アイテムの確認が終わると、錬金術ギルドに残ったアイテムを売りに行くことにした。
◆◆◆◆◆
「すいません、素材を売りたいんですが」
素材売場に着き、カウンターに立っていたお兄さんに
話しかける。
「ああ、売りにくるのは初めてかな?買取所まで案内するからついてきて」
「はい、わかりました」
お兄さんはカウンターを出ると、売場の奥へと歩いていく。
売場はそこそこの大きさがあり、その間を繋ぐためかお兄さんが話しかけてくる。
「そういえば、この前急いで火の魔石を買ってたよね。その時は成功した?」
「成功しました!このウエストポーチを作ったんですけど、我ながら上手く出来たと思ってます!」
「綺麗な見た目だね。もし良かったらちょっと見せて貰っても大丈夫?」
「あ、ちょっと待ってください」
私は少し考えてそう言い、ウエストポーチを外すとお兄さんに手渡す。
「あ、ありがとう。けど、盗まれるかもしれないから、信頼できる人にしか渡さない方がいいよ?」
すると、お兄さんが心配するような顔でそう言う。
「大丈夫ですよ。今のところギルドの人は信頼してますから」
「今のところかぁ.....ちゃんと信頼してもらえるように仕事頑張るよ。それじゃあ失礼して.....」
お兄さんはそう言って懐からメガネを取り出すとウエストポーチを改めて見る。
すると、お兄さんは真剣な表情になり言った。
「.....ちょっと素材売場で話そう」
え?
何かやっちゃった?




