13話 冒険者
魔法玉かぁ.....
どんなスキルを作ろうかな?
やっぱり火魔法とか水魔法とか?
通りを走りながらまだ見ぬ魔法玉に思いを馳せていた私は、横の通りから人が走ってくるのに気づかずにぶつかってしまった。
私が飛び出て来た人の横から当たったこともあり、私はその場で転ぶ程度で済んだが、飛び出してきた人は斜め前へと顔面スライディングを決めていた。
私はそれを見て急いで立ち上がり、綺麗な顔面スライディングを決めた男に近寄ると声をかける。
「すいません、大丈夫ですか?」
「大丈夫なはずがあるかっ!.....ああ?てめえあの時のガキじゃねえか!」
立ち上がってこちらを向いた男は、私の体感時間では昨日錬金術師ギルドで割り込んできた冒険者だった。
「ああ、あの時の変態さんでしたか。それにしてもこんなところでぶつかるなんて、難癖をつけるために待ち伏せでもしてました?」
あの時の冒険者だとわかった私はとりあえず相手を煽った。
特に理由はない。
ただそうするべきだと本能が言っていたのだ。
「んなはずあるかこの自意識過剰が!今俺は急いでんだ! 」
前と同じように斬りかかってくることもあるかと思っていたが、意外なことに冒険者はそう言うとどこかへと走っていった。
その場に何かが入っている袋を残して.....
「.....流石にこれは届けようかな。というか最後何か言ってた?」
それにしてもこの人いちいち行動がテンプレだよね。
割り込みにせよ落し物にせよ.....
そういえばさっきのも角でぶつかるって恋あ.....
うん、これ以上は考えないようにしよう。
そこまで考えて思考を止めた私は袋をウエストポーチに入れ、今度は誰かとぶつからないように注意しながら冒険者を追って走り出した。
しばらくは冒険者の背が高いこともあり、見失わずに追いかけられていたのだが、冒険者が通りを外れ路地に入った直後に見失ってしまった。
「これは行くべきかどうか悩むね...」
路地は見えるだけでも10を超える道があり、この中に考えなしで入る場合、迷う未来しか見えない。
冒険者がどこに行ったかもわからない状態でここに入るには自殺行為だろう。
というか、道に迷ったら本当に自殺しなければいけなくなるかもしれない。
そう考えて私は路地の前で冒険者が戻ってくることを信じて待つことにした。
それから10分程経ち、路地から誰かが叫ぶ声が聞こえてきた。
「くそっまだ落ちてるといいんだが......」
路地を見ると、奥から例の冒険者がこちらへ走ってきていた。
「あ、ちょっと待ってください!」
「またお前か!何度も言うが俺は急いでんだ!」
私は冒険者を呼び止めるが、冒険者はそう叫び私の横を通り過ぎていこうとする。
仕方ないので私は足をかけて、冒険者を転ばせる。
こうして、冒険者は今日2度目であろう顔面スライディングを決めた。
「......俺に恨みでもあんのかお前は!急いでるって言ってるのがわかんないのか!?」
「いや、急いでるって言うから。探してるのはこれでしょ?」
そう言って私は袋を取り出す。
「ああ、それだよ!ありがと、なっ!?」
冒険者は袋を受け取ろうと手を伸ばすが、直前で私は袋をしまい直す。
「また落としそうだから、これは私が持っててあげるよ。そうゆうことで案内お願いね」
何か面白いことが起こる予感がして私はそう言う。
「.....仕方ない、なら行くぞ!」
冒険者は少し考えた後そう言うと、私の手を取り走り出した。
冒険者に手を引かれ、路地を走りながら思う。
本当にテンプレ好きだね?
しばらく路地を走り、冒険者が入っていった場所は普通の家だった。
「今度こそ持って来たぞー」
ある部屋の前で冒険者がそう言うと、中から声が聞こえてきた。
「あ、おかえりー」
冒険者はその声を聞くと扉を開けて部屋へと入っていく。
片付いているとは言えないその部屋では、1人の少女がベットに座っていた。
はっきり言って冒険者とは全く似ていない。
「お兄ちゃん、持ってきたってその人のこと?手を繋いでるしもしかして彼女さん?」
少女は私たちを見てそう言った。
「いや、違うぞ!?」
その言葉を聞いて、手を繋いだままでいた事に気がついた冒険者は急いで手を振り払って言う。
「そうなの?お兄ちゃんが少女趣味なのは知ってるけど誘拐はダメだよ?」
似てないけど多分妹だよね?
妹からも少女趣味認定されてるんですか.....
「誰が誘拐なんてするかよ!そもそも俺はそんなんじゃねえって言ってんだろ!」
「違うの変態さん?」
そんな言葉が口からこぼれる。
「お兄ちゃん変態さんなの?」
少女はその言葉に素直に反応する。
「なんで初めてあったこいつのことを信じるんだよ!?」
冒険者はそう言って否定するが.....
「うーん.....お兄ちゃん怖いから?」
バッサリと切り捨てたその言葉を聞き、冒険者はその場に倒れ込んだ。
「.....俺、そんなに怖いか?」
そんな冒険者を見て、少女はベットから立ち上がると冒険者の元へ歩いていこうとし.....
「ゴホッゴホッ.....」
直ぐに咳き込んで倒れた。
私は何とかその体を受け止め、ベットへと運ぶ。
「.....ねえ変態さん。もしかしてこの子病気?」
「ああ、そうだ。だから俺は回復の魔法玉を買って病気を治そうと.....」
そこまで聞いた私は冒険者の言葉を遮って言う。
「.....ちょっと表に出ようか」




