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プロローグ

 やってしまった。

 正確には、見られてしまった。



 こんな寒い時期だと言うのに、薄手のパーカーに短パン、素足にスニーカーという出で立ちで、晒されている肌は白すぎて室内でも寒さを感じてしまう。

 子どもではないだろう、大人と言うにも幼い気のするその人はただじっと私のことを見つめ、今しがたの会話を真似してくる。



「うんうん重いよね。交代する?」

「いや……気にしないで。独り言だから」



 私たちの目の前に積まれているのは百円ショップの真っ白な食器が並ぶエリア。その一角になかなか売れないでいる平皿があって、埃の被り方からかなり長い間そこに “いる” ことが分かる。



「じゃあ買ってあげる?」

「……そうだね」

「良かったね!」



ーーーーアリガトウ。



 良かったね! と声をかけられた真っ白な平皿、目も鼻も口もないけれど、嬉しそうに “お礼を述べる” から、本当は丼茶碗を買いに来たはずだったのに、買わざるをえなくなった。


 今月もまた節約するしかあるまい。



「ねぇ」

「何かな?」



 レジが済んでもう会うこともないとさっさと店をあとにしたはずだったのに、防寒具をしっかり着込んだ人達とすれ違う街中で、不釣り合いな格好のその人は私の後ろをずっとついてくる。



「ホットケーキ知らない?」



 お腹が減っているのだろうか?



「コンビニとかにもあるんじゃないかな」

「違うよ、お店の名前」

「あぁそれなら私の店かな」

「あなたが店主さん!」



 キラキラした瞳が私をじっと見上げたかと思うと、嬉しそうに飛び跳ねて腕を引いてくる。



「帰りましょ!」

「え?」

「ホットケーキ食べに来ました! お腹ぺこぺこなので今すぐ食べましょう」

「……強引だなぁ」



 幸い今日の予定はこの人のお陰で早く済んだわけで、予定としていたものと違うとはいえ必要なものも買えたわけだ。いつも悩みまくる時間を減らしてもらえたので、お礼をしても悪くない気はする。



 そうして人がごった返している中を進んで行くけれど、不思議なことに一度も人にぶつかること無くスイスイ進む。



「ちょっと待って」

「何ですか? まだ買い物ありますか?」

「店の場所知ってるの?」

「知りません」

「反対だよ」

「早く言ってよー」



 まったく悪びれた様子もなく、勢いよく方向転換したかと思うと、今度は私の背中を押す。


 まるで人混みが私たちを避けるように道が空いて楽々歩けるようになった。



「ホットケーキ、どんな食べ物かなぁ。早く食べたーい」



 嬉しそうにスキップまで始めたので、仕方ないかと背中を押されたままお店まで歩く事となった。



 ちなみにここから店まで、バスで十五分もかかる距離である。


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