4.45 スザンヌ・ラルクバッハ4
それから、同じラスク国から送られた物をかき集めて、私のジルベール様が見てくれた。
1妃様の侍女に、渡った手鏡にも呪があったようだ。
侍女も呪われており、解呪をしていた。
私のジルベール様は、すごい。
10歳とは思えない。
どうも、前世を覚えている雰囲気は無いが、私の中ではシン様の生まれ変わり決定。
少し気分が興奮して眠れなかったので、侍女達を連れて庭を散歩すると、愛しのジルベール様発見。
すれ違って、通り過ぎようとするので、思い切って声をかける。
私を選んでもらえる可能性があるのか思い切って聞こう。
「メルミーナ様は、あなたが、マリアの婚約者で決まりみたい言ってるけど、私にも権利があるのよね。
見ていると、あたなが特別マリアを気に入っているとは思えないけど、どうなの?」
「とても悩む問題ですね。どちらかを選べと言われても、はっきりと選べるほどお二人を知っている訳ではありません。
その中であえて選べと言われれば、マリア様が優勢です」
「どうして?。メルミーナ様に言われたからなの?、それとも聖女が欲しいの?」
「いえ、スザンヌ様も、マリア様も、とてもお綺麗で、
私が選ぶような立場には無いと思っていますが、
しいて言うなら会った順番でしょうか。
実は、私は、マリア様の誕生日に王城に来ていたのです。
会食の準備要員として、我が家の料理長と一緒に来ていました。
その日の朝です。
庭で猫が木に登って困っているマリア様にお会いしています。
と言うのが理由ですが、やはり明確に選べるほどではありません」
「そう、私と最初にあっていれば、私を一番に選んでくれたということかしら」
「えっと、おそらく。
少なくとも両方ともに嫌いではなく、どちらかと言うと、好きです。
今もドキドキして緊張しています」
やった!。嬉しい。
ドキドキなんて、私の事も好きなのね!
「解ったわ。
まだ、チャンスはありそうなのね。
私の希望は、貴方が1番でお父様に話すわ。
心にとどめておいてね」
と、可能性について説明する。
とわいえ、妹と真剣に争うにはいやだ。
私もマリアが好き。
前世と一緒で、2人とも選ばれると良いのに。
「はい。選んでいただけたことは光栄です。では、おやすみなさい」
とジルベール様が答える。
「明日、1日があなたの隣に入れる最後かもしれないから、明日は遠慮しないわ。ではまた明日」とにっこり笑顔。
実は、とても思い暗い話だ。
あまり真剣な顔をすると、ジルベール様も負担だろう。
明日も、笑顔を見せよう。
とわいえ、明日1日。
どうなってもしょうがない。
あたって砕けろ、そして、明日を楽しもう。
お見合い三日目
朝ごはん、メルミーナ様はいない。
おかあさまに頼んで、おかあさまと私の間にジルベール様が座るようにしてもらう。
「今日はよろしくね」と、ウインクすると、愛しのジルベール様は顔を赤くして照れている。
かわいい。
食事が終り、今日も朝の稽古をするようだ。
積極的に、愛しのジルベール様の手を握り、昨日の場所へ連れて行く。
ああ、幸せ。
フィリップが変な顔で見てくるが無視。
私は、今が人生で一番に幸せ。
生まれ変わって良かった。
さて、本当は訓練を見たかったが、時間が無い。
急いで支度をして、稽古が終わるタイミングで上手く戻る。
愛しのジルベール様に、タオルと水を渡す。
ああ、かっこいい。
私は、他の候補生を迎え入れないといけないので、先に会場へ行く。
今日は候補者が、10人に減りました。
もともと最初からはずしても良かったらしいのですが、一応私が気に入る可能性がないか、見せただけのようです。
私の為に、ごめんなさい。
と心の中で謝る。
皆が集まった頃にジルベール様が入ってきた。
私はすすすと動き、ジルベール様の横をキープ。
ジルベール様の横から候補者達を見ると、あれ、ロベール様がいない。
マリアの候補が帰ってる?
もしかして、この10名。全部私のための候補生?
まあ、気にしたら負けだ。
不可能を可能にするには、私の意地を見せるしかない。
と、お母様が近づいて来て、ジルベールに近づきすぎと怒られた。
少し離れたが、王宮魔道士副長ジェローム様が現れ、皆がそちらを見ている間に、こっそりジルベール様の横に近づいた。
まずは、魔法を見せて欲しい。
と言うことで、ジルベール様の近くで魔法を見る。
ジルベール様は、聞いたことも無い呪文を唱える。
「地に眠る水よ、大気に留まる水たちよ、我が命ず、塊となりて、障害を消し去れ、出でよ水龍」
そして、1mほどの水龍が具現化し、土壁にあたる。
小型の竜の威力はすごかった。
土壁を壊し、後ろの魔力障壁にぶつかった。
ジルベール様が、魔力少なめにしたけど、強すぎたか? と小声で話すのが聞こえた。
すごすぎです。
でも、私はシンの魔法を知っている。
たしか、彼の得意な魔法の一つに、水龍の聖獣を呼び出し、攻撃する技があった。
今のは、それを小型化したものに酷似していた。
王宮魔道士副長ジェローム様が、魔法について質問してきた。
「今のは、水と土魔法の合成ですか?」
「そうですね。土と水を混ぜて概観をつくり、頭の部分を、氷と土魔法で強化。
体の部分が水の流体に見えますが、中は泥と硬質の石を混ぜ、外側に電気を纏わせて完成です。
今回は電気が少なめ、水系も氷の温度はそれほど下げてません」
私は、もう一歩近づき「すっごいです。複合魔法なんですね。他にもできますか?」
「そうですね、とりあえず後、炎、風、土の複合魔法、フェニックスの舞も得意ですよ」
と答えた後、私のジルベール様が、こっそりマリアの方へ近づいたのを見逃してはいない。
マリアも、なぜか私のお母様が私のジルベール様のほうへ押して近づけている。
ああ、お母様まで味方になってくれないなんて。
とはいえ、お母様も私を引き離すわけではなかった。
ジルベール様の両脇を、マリアと私で囲み、皆様の様子を見ていたら、
ジルベール様がオレリアン様の魔法を見て「違うな」と言う。
そして、オレリアン様の近くに行って「光と結界は使わないのですか」と尋ねた。
光魔法は、使い手の少ない希少な魔法。
ジルベール様が、ジェローム様に、オレリアン様は光魔法に適正があるから、誰かが教えられないのかと頼んでいた。
いないなら、自分が見せなきゃと言っているのが聞こえたが、
王宮魔道士の中から、光魔法を使える人がいるらしい。
その人が急遽呼ばれて、オレリアン様に少し指導をすると、オレリアン様は、本当に光魔法を使った。
あらあら、すごいわ。
オレリアン様は従兄だ。
母の2妃は、ハイルデン公爵の妹。
なので、小さい時から良く知っている。
彼は、いつも、兄と自分を比較し、出来が悪いと自信を失っていた。
光魔法が使えるとわかったら、かつて魔法剣士として有名だった元将軍のレイブリング様のように活躍できる可能性がある。
きっと、彼は自信を取り戻し、前向きに生きれるようになるのではないか。
今日のお見合いが、従兄の転機となったなら、それは良かった。
ミシュル様が、私のところに来て、話をしたいと。
私はジルベール様と話をしたかったが、今日は公式には私のためのお見合い。
それは拒否できない。
ミシュル様と話してみると、一つ下とは思えない、しっかりした考えを持つ青年だった。
ジルベール様に会う前だったら、彼を選んだかも知れない。
自分の中でも結構好印象。
ミシュル様が離れたので、再び愛しのジルベール様の隣に行った。
ジルベール様は、グレイ様と話をするように言うが、私は彼とは良く話をしているので断る。
すると、マリアは「お姉さま」とつぶやく。
「あ、ごめんねマリア。あなたが気にする必要はないのよ。
あなたもジルベールが好きなんでしょ。
もう解っているの、あなたとジルベールが婚約するのは。
だから私がジルベールの近くにいれるのは今日だけなのよ。
今日だけだから、今日は譲って。お願い」
「お姉さま」
と繰り返すだけのマリア。
私の覚悟を話すと、解ってくれたみたいだ。
ジルベール様からの提案を、1妃様に相談すると、
結局、昼からは、グレイ様を入れた4人で話をする事になった。
----------マリア視点-------------
どうしましょう。
どうしましょう。
メルミーナ様から、昨日の夜に、ジルベールもマリアの事を気に入っているようだし、
マリアも気にいったようだから、決まりだなと言われました。
メルミーナ様に、スザンヌお姉さまもジルベール様を気に入ったと言ってます。
と言ったが、それは心配するな。
ジルベールもスザンヌを嫌っていないのは知っている。
侍女との対応は全て耳に入れておる。
しかし、私には最終的な秘策がある。
マリアが心配する必要は無いよ悲しませるようなことにはしないから。
と言われました。
どうするのでしょ。
とりあえず、現在グレイ様を入れた4人でお話をしています。
グレイ様も、なかなか良い男ですよ。
でも、ジルベール様と比べると、1段、いや2段は劣る。
すべてにおいて、ジルベール様は、比較できる相手がいません。
運命の人だからなのでしょうか。
単に顔を気に入ってしまったのでしょうか。
性格でしょうか。
能力でしょうか。
悪いところが一つも無いです。
しいて言えば、現在の爵位ぐらいでしょうか。
でも、私と結婚するならば、メルミーナ様が後継者とおっしゃるぐらいですもの、
侯爵位以上にはしてくださるはす。
そうなると、やっぱり欠点が無いです。
ああ、ありました。唯一の欠点。
お姉さまも好きになってしまったことです。
ああ、どうしてジルベール様はジルベール様なのでしょう。
マリアの話は、蛇足かな。