4.23 ルカ・ラルクバッハ3
その日の夜、決めやすいほうから議論が行われた。
当然のようにマリアの婚約者はジルベールで決定した。
そして問題の第1王女。
スザンヌも、この少年を選んでいる。
通常、婚約者を複数持つなどありえない。
しかも相手は伯爵家の長子。
王は、どうしてもスザンヌを他国に出したくないし、スザンヌの要望をかなえたいとごねた。
それはものすごいごね方だった。
王妃に、政務でもこういうことがあるのか聞いたら、ここまでごねるのは初めてだと。
ものすごい親ばかだ。
それならマリアではなく、スザンヌとジルベールを婚約させマリアの婚約者を変えればよいと言ったがそれではマリアが泣くじゃろ と。
なんとかジルベールに2人ともくっつけれられないかと。
その場にいた、2公爵から、たかが「右目」「左目」が金眼で、どうしてそんなに。
と言った直後に、お互いが異なる目の色が金と言った事に、何を言っていると突っ込む両公爵。
結局、王からあれは両目が金だと伝えられ、ハイルデン公爵とアレクサンドロ公爵は驚くも王やスザンヌ王女の拘りに納得した。
会議は長引いたが、遅れて来たメルミーナ様があっさりとそれを解決した。
本来は、自分の後継者5名の候補者を競わせ公爵を決めるつもりだったが、比べるまでも無い。
すでに解っている能力値から、現段階でジルベールを後継に指名すると決定した。
そうすれば、公爵位を持つ者は、妻を2人とれる。
めったにあることではないが、最初から婚約者を2名立れば良い。
王は3人の妻を娶れるが、王ですら同時の2人の婚約者を立てることは無い。
あまりに強引。
しかし、そんな前例の無さなどもう知らず。
決まったと話は次へ。
なぜか、そのまま話は未来へと。
3公爵が、生まれる子供の取り合いを始めた。
話が発散したから、これで中断。
次の日に、再度確認の場が設けられたので、意を決して聞いて見た。
「それほど優秀なら、公爵位ではなく、王位継承権を1位にしないのか?」と。
するとメルミーナ様が
「そもそも、あれを王にすると他国の動向が不安じゃ。
他国側が、危険を感じて攻めてくる恐れもある。
じゃから王への推薦はしない。
あれには、そのような教育もしておらんし、心構えも持っておらん。
意思や思考は、年齢どおりではなく、すでに大人と同じだ。
将来に対しても、かなり考えておる。
しかし、王を支える教育をしてきたせいか、王なぞ興味も持っておらんぞ。
そもそも、あれの性格は、王には向いていない。
あれは、誰もかれもを全てを救いたがる。
その辺は子供じゃが、恐らくは変わるまい。
まああえて言うなら宰相もむいてないがな。
確かに、才能はすごい。
空間魔法も使いこなし、領地では新たな産業を起こし、
民の生活を向上させているが、どちらかと言うと研究者じゃな。
文官の中の研究所にいる連中と全く一緒だ。
本来は、あやつは研究所にこもるタイプじゃ。
だが、多方面の能力を発揮させるには宰相の地位がよいじゃろう。
本来の宰相としての仕事は、副宰相がやれば良い。
まあ、あれが宰相であれば、国民は幸せになれそうじゃ。
気をつけんと、国と国の駆け引きなんぞ、まったく興味を持っておらん。
やらせると大胆に攻めるかもしれんが、周りが、そしておぬしが王として情勢を見極めんと行かんぞ。
宰相に据える時は、周りの体制を少しかえる必要がある。
副宰相にマクシミリアン王子を置けば、丁度良いのではないかと考えておる。
あと、王弟と言う役職を与える方法もある。
まあ、いろいろ手はあるが、王の後継は殿下以外にはおらぬよ」
ながい説明がありましたが、解ったような解らないような。
メルミーナ様からは、ジルベールが宰相、あるは王弟となった時の私の役割も説明してくれた。
しかし、かなり難しい。
要するに、国内に古竜に匹敵する魔法兵器を抱えているわけだ。
意思の疎通が取れる分、古竜よりはマシ。
他国と上手く交渉して、ジルベールがもたらす益を国民に配分するのが役割。
そして、ジルベールがいなくなっても機能するように仕組みを作ることも必要。
マックと一緒になって、国を作れ、一人で何から何までやるものではない。
成人するまでの準備期間はあるから心配するな、と言われはしたがいろんな意味で不安でしょうが無い。
結局は、自分で確認するしか無いようだ。
ジルベールは婚約者に会いにちょこちょこ王城に来るらしい。
機会があるたびに私も声をかけて、会うようにしよう。
私の専属侍女の妹が第2王女の侍女の中にいる。
なのでジルベールからの情報を流してもらうようにして貰った。
ジルベールは毎週、週末に王城に来るようだ。
昼か、夜の食事は、王城で一緒になる。
2妃様が客間を変更して、ジルベール専用の部屋にしていた。
これは、非常に特別なことだ。
公爵家となる教育を、ここでもするだと言っていた。
なので、これからは良く泊まりに来ることになるらしい。
しかし、ジルベールが来るたびに、私も話をしようとするが、予想外に第4王女がジルベールと遊んで欲しいと駄々をこねる。
お兄ちゃんと遊ぶと言って聞かない。
同じ年なら、フィリップもいるのに。
フィリップとは、そんなに遊んでいない。
なぜか、第4王女は、ジルベールが非常にお気に入りのようだ。
そのせいで、私はあまりジルベールと話ができない。
女とは、その年でも敏感に優秀な遺伝子をかぎ別けるものなのか。
そしてそれを見て、王が3人も娘はやらんぞと警戒している。
毎週の様に、スザンヌ、マリア、シュミットがジルベールにべったりで、ジルベールと王の攻防が繰り広げられる。
まあ、見ている分にはなかなか面白い。
最近、母の1妃は、ジルベールが泊まるたびに配属する侍女の選別を楽しんでいる。
可愛い系が終わったから、次は、巨乳系ねとか、言ってるのが聞こえた。
フィリップと同い年なので、やることが一緒なのだろう。
私も、10歳の頃にやられたあれかと、思い当たる節がある。
ジルベールは、年に似合わず大人と同じような事を考え、しゃべるが女性の扱いは年相応。
どちらかといえば苦手なようだ。
なので、この王妃のお遊びは、将来役に立つだろう。
これも王家に連なる公爵家なら、超えねばならぬ道だ。
がんばれジルベール。