3.15 マリア・ラルクバッハ7歳
今日は私の7歳の誕生日。
先週父からプレンゼントにと、前から飼いたいと言っていた猫を頂いた。
生き物なので誕生日まで待つより譲渡されたらなるべく早く慣れた方が良いだろうと、誕生日の前に先渡ししてもらった。
実は私は前世の記憶がある。
自分の名前や両親の事は覚えていないが、家で猫を飼っていたことを覚えている。
今世の初猫は白の長毛種。
近隣国のアルフォンス生まれの優秀な血筋の猫様らしい。
でも猫の名前は<たま>です。
何でも良いと言われたので前世の王道名をつけました。
さて本日は7歳の誕生日まで生きられた感謝を神様に報告すため、教会でお祈りをします。
しかし朝食後に少し時間があったので、たまを連れて庭を散歩していました。
そこでちょっと油断。
たまを庭で遊ばせようと庭に降ろして様子を見ていました。
最初は私の近くで遊んでいたのですが王宮のどこかで大きな音がし、それにたまが驚いき木に登ってしまいました。
すぐに降りてくるかと思ったらやはり子猫。
登った先で怖くて動けなくなってしまった。
どうしよう。
侍女が近くの騎士に頼みに行ってきますと離れたが暫くしても戻ってこない。
そうこうしているうちに、そろそろ教会にいかなければならない時間に。
私はたまを一生懸命呼びますが相変わらずたまは動けず、私は困っていました。
そこに突然後ろから少年の声がしました。「お困りですか?」と。
そちらを見ると金髪で茶色の目をした10歳前後の少年が立っていました。
とても利口そうなしっかりした顔立ち。
服は貴族向けの服では無く仕事着?。
こんな少年が王城で仕事をしているのか?疑問ですが、とりあえず状況を説明すると自分が助けると言ってくれた。
とは言うものの猫がいる位置は大人の身長よりも遥に高い、4mはあると思われる高さ。
どうするのだろう思っていると少年が手に持っていたハーブを持っていて欲しいと渡して来た。
そして危ないから後ろに下がってと。
まさか飛んで助けようと言うのか。
やはり子供。
無謀にも飛べると勘違いしているのか、確かにこちらの世界は前世の人々よりも身体能力の高い人がいる。
騎士の試合も何度か見たことがあるがさずがに4mの高さに手が届くほどの身体能力は見たことが無い。
何をするだろうと離れたところから見ていたらほんとに飛んだ。
ありえない。
たまに手が届きそれも一瞬空中で止まっているかのようにゆっくり抱き上げる。
まるで時間の流れが遅くなっているかのように。
なぜか落ちる時もゆっくりと降りた。
羽が生えているような、そんな感覚。
気のせいだろうが一瞬笑った笑顔の男の子が天使に見えた。
私はびっくりし茫然と立っていたら少年が近づいて来て、ハーブと猫を交換した。
私はとても嬉しかったので「ありがとう」
と言うと少年は「どういたしまして。では、ほんとは近づくなと言われているので、さっさと退散しますね。できれば内緒でお願いします」と。
あっさりと調理場に向かって走り去っていきました。
調理場にいる誰かの子供だろうか?。
しかしこの普通にはありえないこの出会い。
もしかして運命の出会いかな?。
と思ったが、とりあえずこれで教会へ移動できるとほっとした。
ちょうど入れ替わりで、侍女が第1王子のルカお兄様を連れて戻ってきた。
侍女が近くの頼りになりそうな男性を探したが、皆教会の準備でいなかったので、ちょうど通りかかったお兄様を連れてきてくれたそうだ。
侍女は、ルカ王子を見てボーとしている。
頼りになりそうな男性を探していたのではなくて、お兄様を探していたのではと疑ってしまうが、まあ良いでしょう。
お兄様が「猫が自分で降りてきたのか、良かったね」と頭をなでなで。
今の少年の話を上手くごまかせる話も思い浮かばなかったのでお兄様の言われたとおり、勝手に降りてきたことにした。
そして私は準備のために急いで部屋に戻り、お兄様は教会に向かった。
準備と言っても髪形の最後の調整と飾りつけ程度。
すぐに支度が完成し、急いで教会へと向かった。