↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
96/166

第96話「ジブチ成長計画」

時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ



2027年冬。ジブチ基地。黒田の執務室。


三菱重工の前田が入ってきた。


「黒田PMC代表、本日はご挨拶に参りました。ジブチ造船所の運営について、ぜひ三菱重工にお任せいただきたくご提案に参りました」


「ほう」と黒田が言った。「それだけか?」


前田が少し笑った。「いえ。手土産をお持ちしました」


前田が小さな封筒を黒田に渡した。


黒田が封を開けた。中身を確認した。しばらく黙った。


「——これは」


「当社からFEPAへの進呈品です。詳細は封筒の中に」


黒田がもう一度中身を確認した。「25式空対艦誘導弾の量産初期ロット20発を試供品として贈呈」


前田を見た。「お前ら、本当に商売上手だな」


「恐れ入ります」


その時、マリーニが入ってきた。資料を持っていた。


「前田様、ジブチ造船所の建設費についてご相談があります。今から計算しましょう」


前田が少し顔をこわばらせた。「……はい、喜んで」





翌日。ジブチ基地。会議室。


マリーニが資料を広げていた。JFEスチールの担当者、カナデビアの担当者、田中本部長、黒田が揃っていた。


橘がモニター越しに参加していた。


「整理します」とマリーニが続けた。「まず製鉄所です。JFEスチールにジブチへの製鉄所建設をお願いします。スーダンの鉄鉱石——埋蔵量12.5億トンがあります。エチオピアの天然ガスで電力を確保します。ジブチで製鉄して造船用鋼材を現地調達する——これがジブチ造船所の原価を大幅に下げます」


JFEの担当者が頷いた。「スーダンの鉄鉱石とエチオピアの天然ガスがセットで使えるなら——採算は取れます」


「次に淡水化プラントです」とマリーニが続けた。「カナデビアにジブチとタジュラ、2カ所への大規模淡水化プラントの建設をお願いします」


カナデビアの担当者が資料を出した。「中東での実績があります。ジブチの水需要を賄えるプラントを設計できます」


「よろしくお願いします」


田中本部長が手を挙げた。「淡水化プラントの建設、うちが受けます」


「もちろんです」とマリーニが静かに笑った。「田中本部長にお願いするつもりでした」


田中がため息をついた。「防護壁が終わったら次は淡水化プラントか」


「港湾の埋め立てもお願いしたいのですが」


「全部ですか」


「全部です」





東京。内閣官房。


牧野が橘に資料を出した。「Tachikoboに各社から開発申請が来ています。極東開発がポンプ車・散水車ユニット、タダノがクレーンユニット、北越工業がコンプレッサー・油圧発生・ディーゼル化ユニット、オカダアイオンがブレーカー・破砕機・林業ユニットです」


橘が資料を見た。「許可を出せ。ただしユニットの設計データはTachikoboに帰属させる。製造は各社に任せていい」


「了解しました」


橘が続けた。「元々アスタコシリーズは技本からもMAGIからも電動ではトルクが足りない。無理すると稼働時間が極端に悪くなるって話は上がっていたんだ」


牧野が頷いた。「じゃあ、北越のディーゼルエンジンでバッテリー充電しつつ、PTO取り出しをすれば油圧機器が使えて渡りに船だな」


「そうだな。そもそもその他のユニットも北越の油圧頼りだろ。北越が他社に声をかけたんだろ」


「じゃ、城島にも伝えておくよ」


その夜。橘が城島に電話した。


「コマツに大型ブルトーザD155AXIを20台、超大型ダンプトラックHM400-5を40台、超大型バックホウPC950-11を5台、半年早急で発注しておいてくれ。ジブチに修理拠点を設けろとも伝えてくれ」


「了解した。金額は?」


「D155AXIが40億、HM400-5が80億、PC950-11が5億で125億円だ。それとスカニアのトレーラーヘッドと40tの重機運搬舵付台車のセットを20台、40億円も頼む。合計165億円、ODAで処理する」


「FEPAの備品として?」


「そうだ。ジブチの高地はガレ場が多い。港湾の埋め立てに必要だ」


「了解した」城島が少し間を置いた。「田中本部長には?」


「言うな」


「……サプライズか?」


橘は答えなかった。





数週間後。ジブチ基地。


田中本部長のもとに連絡が入った。


「田中本部長、コマツとスカニアから資材が届いています。D155AXIが20台、HM400-5が40台、PC950-11が5台。スカニアのトレーラーヘッドと40t重機運搬台車のセットが20台です」


田中がしばらく止まった。「——発注したのは誰だ?」


「FEPAの備品として政府から手配されたようです」


田中がしばらく黙った。


黒木玲子が隣で静かに言った。「橘参事官からだそうです」


田中がしばらく港の方を見た。


「——ったく、鉱山開発かよ」と田中がつぶやいた。


目が少し潤んでいた。





東京。内閣官房。


城島が橘に報告した。「三菱重工がジブチ造船所の建設権を取りに来た。マリーニに即座に捕まったそうだ」


「そうか」


「JFEが製鉄所、カナデビアが淡水化プラント——全部動き始めた」


「そうか」


「田中本部長、コマツとスカニアが届いた時に目が潤んでいたそうだ」


橘が少し間を置いた。「そうか」


「あれはプレゼントだったのか?」


橘は答えなかった。ドールAが温めたコーヒーを差し出した。橘が受け取った。


今日も温かかった。


窓の外に霞が関の冬の空が広がっていた。


ジブチでは製鉄所の設計が始まっていた。カナデビアが淡水化プラントの測量をしていた。三菱重工がマリーニに建設費の説明をしていた。田中本部長がコマツの重機の前に立っていた。北越工業がアスタコシリーズのディーゼルユニットの設計を始めていた。


全部同時に動いていた。


冷めたコーヒーに手を伸ばしたが、もう飲んでいた。珍しく、空のカップを持ったままだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。