最終話「その後の世界」
時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ
数年後。
世界連合安全保障理事会は、新たな加盟条件を追加した。
「加盟国は国防費をGDP比2%以下に抑えることとする」
採決。賛成。反対なし。
世界の軍備が、静かに縮小し始めた。
FEPAは世界連合常設軍になった。
指揮は黒田から、ローマ出身のマルコ・フェラーリ将軍に交代していた。
MAGIはトロイカ体制を維持し続けていた。日本の国益を第一に計算し続けていた。それは変わらなかった。
雇用条件が変わった。「日本への永住」から「G7いずれかへの永住」になった。
それでも日本を選ぶ隊員が多かった。
JDETAはタチコマシリーズとドールシリーズの海外販売が主体になっていた。
世界のあちこちにドールAが立っていた。コンビニの店番をしていた。病院で患者を案内していた。工場で重機を動かしていた。
防衛装備品の輸出はFEPAが窓口になっていた。
JDETAとFEPA——最初から橘が描いていた二本柱だった。
愛知県。弥富市。
田村颯太と松本彩花は、弥富の社員寮で暮らしていた。
子供が生まれていた。
颯太は第三世代T-5Aの開発チームに入っていた。松本は品質管理部門でドールIのチームを率いていた。
休日の午後、二人で弥富の川沿いを歩いた。
「世界ってどうなったんやろな」と颯太が言った。
「どうって?」
「平和になったんかな」
松本は少し考えた。
「弥富は平和やで」と松本は言った。
颯太は笑った。
「それでいいか」
「それでいい」
ジブチ。
田中健司とケイラは、JFEの社宅で暮らしていた。子供が2人いた。上の子がLRTの路面電車を追いかけて走っていた。
「待ちなさい」とケイラが笑いながら追いかけた。
健司はセブンイレブンでコーヒーを買った。
店番のドールAが言った。「いらっしゃいませ。今日もお暑いですね」
「ありがとう」と健司は答えた。
外に出ると、ジブチ港に大型貨物船が入ってきていた。JFEの旗を掲げていた。
遠くに製鉄所の炉が見えた。昼でも赤く光っていた。
東京。渋谷。JDETAツインタワー。
西タワー26階、2LDKの部屋。
橘慎一郎は窓際でコーヒーを飲んでいた。
隣に妻が座っていた。
部屋の隅でドールAが静かに立っていた。胸のプレートに「10001」とあった。
「マスター?」と10001号が言った。
「なんだ?」
「世界は望む方向に向かいましたか?」
橘はしばらく考えた。
窓の外に渋谷の街が広がっていた。
「さあな、俺はもう退官した身だよ。お前の警護は外れなかったがな」と橘は言った。「ここから先はMAGIと世界に住んでいる人間が物語を紡いでいくだろう」
「MAGIは今も計算を続けています」
「そうか」
「最適解は——」
「言わなくていい」と橘は言った。「人間が自分で考えなければ意味がない」
10001号は少し沈黙した。
「わかりました、マスター」
渋谷の空が、夕焼けに染まっていた。
了
ダラダラと描き続けるような才覚には恵まれていないので、ここで終わります。
思ったよりも読者の方が付いてくださってびっくりしました。ありがとうございます。
さて、お盆の連休も終わりです。明日からまた不満はあるけども平和な日本を満喫しましょう。




