第143話「平和」
時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ
2030年6月。
愛知県。JDETA中部拠点。
An-124が次々と離陸していった。
10機全て。ジブチ、アンコーナ、キーウの3方向へ。30式のユニットが分散して積まれていた。空自の部隊員はJDETAの社員証を胸に入れていた。
牧野が見送りながら電話を切った。三菱重工の追加生産ラインが動き始めた。
ジブチ共和国。ジブチ市。
市街地の中心に、見慣れないものができていた。
セブンイレブンだった。
看板はフランス語・アラビア語・ソマリ語・英語の4言語が並んでいた。店内は明るかった。おにぎりとサンドイッチとホットスナックが並んでいた。レジの横にドールAが立っていた。
地元の男性が入ってきた。
「……Bonjour」
「Bonjour」とドールAがフランス語で答えた。「何かお探しですか」
男性はしばらくドールAを眺めてから、棚に並んだ飲み物を手に取った。
店の奥に小さな部屋があった。
制服を着たジブチ警察官が一人座っていた。モニターが並んでいた。市街地のあちこちに設置されたカメラの映像がMAGI-1経由でリアルタイムで流れていた。
3ブロック先の路地で、男が刃物を所持していた。警察官が無線を取った。
「3区画北の路地。刃物所持。急行してくれ」
30秒後、パトカーが現場に到着した。
これがコンビニ兼交番だった。日本の交番システムをジブチに輸出した形だった。FEPA保安部が監修し、JDETAが整備した。市内に50店舗を展開する予定で、すでに15店舗が稼働していた。
市郊外。
部族のリーダーが銃を持ったまま立っていた。
内務大臣の代理人が向かいに立っていた。
「返納すれば現金5万ジブチフランと就労支援を提供します」
リーダーは鼻で笑った。
「俺たちは銃があるから守られてきた」
その時、後ろでドールIが動いた。
ドールAと見た目は変わらなかった。しかしステンレス製の外装が陽光を反射していた。リーダーの部下の一人が試しに石を投げた。ドールIは微動だにしなかった。
リーダーはしばらくドールIを見ていた。
拳銃を地面に置いた。
「就労支援とはどこで働けるんだ」
ジブチ市内。新設のLRT路線。
路面電車が静かに走っていた。
工業地帯——港湾——市街地を結ぶ路線だった。沿線の工事現場ではタランが資材を運んでいた。1トン級の4足歩行ロボットが、重い鉄骨を抱えて足場の間を歩いていた。
車内に乗り合わせた日本人技術者と地元の若者が、ぎこちなくフランス語で話していた。
「日本人?ジブチ好き?」
「ああ。住みやすい」
「最近ずいぶん変わった」
「そうだな」
電車が港を過ぎた。窓の外にJFEの製鉄所の炉が見えた。昼でも赤く光っていた。
市郊外。ENEOSの油田プラント。
1日の原油生産量が5万バレルを超えていた。ジブチ政府への税収は月ごとに増えていた。
隣ではJAPEXの天然ガス液化設備の建設が進んでいた。工期はあと半年だった。
現場監督の日本人技術者が足場の上から眺めた。
「タランが入ってから工期が早くなった」
「夜中も動きますから」と部下が言った。「文句は言えませんよ」
ジブチのSNSに投稿が増えていた。
「セブンイレブンができた。おにぎり食べた。うまかった」
「銃返したら仕事もらえた。弟も返した」
「街が明るくなった。夜歩けるようになった」
「コンビニのロボットにフランス語で道を聞いたら完璧に答えてくれた」
【国際情勢スレ】
1 名無しさん
ジブチにセブンイレブンができたって本当か
2 名無しさん
>>1
4言語対応でドールAが店番してて
奥に現地警察官が常駐してるらしい
コンビニ兼交番システムだって
3 名無しさん
銃器返納で現金と就労支援か
日本式だな
4 名無しさん
ドールIに石投げたら微動だにしなかったって話が出てる
それ見て銃を置いたリーダーがいるらしい
5 名無しさん
ジブチのLRTが開業したのか
タランって4足ロボットが工事してるらしい
6 名無しさん
ENEOSの油田が1日5万バレルって
ジブチが産油国になってる
7 名無しさん
夜歩けるようになったって現地の人が言ってるの
治安がそこまで変わったのか
8 名無しさん
日本が街ごと作り直してるじゃん
ジブチ




