第134話「拒否」
時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ
2029年10月〜11月。
テルアビブ。首相府。
F-35が2機撃墜されてから2週間が経った。
EU側からの文書が届いていた。最後通牒だった。
「ヨルダン撤退および停戦を確認次第、経済制裁の段階的解除を開始します。なお、ヨルダン川西岸パレスチナ地区からの撤退については引き続き協議を継続します」
首相は文書を読み返した。
ヨルダン撤退はのめる。パレスチナは——内閣が割れていた。右派は絶対に認めないと言った。軍部は燃料が持たないと言った。
燃料備蓄は3週間分を切っていた。
首相は静かに言った。
「ヨルダン撤退の受け入れを通知しろ。パレスチナは協議継続で返す」
誰も異論を言わなかった。
ワシントン。ホワイトハウス。
ドランプは電話を握っていた。
「レールガンを載せてくれ。お願いだ」
回線の向こうの高道総理の声は変わらなかった。
「申し訳ありませんが、レールガン技術の移転は現時点では検討しておりません」
「じゃあレーザーだけでも」
しばらく間があった。
「レーザーターレットについては、FMS価格でご提供できます。1基15億円になります」
「何基つけてくれる」
「それは米国側でご判断ください」
ドランプは受話器を置いた。
補佐官が静かに言った。
「レールガンは断られました」
「わかってる」
横須賀。JMU横須賀スマートドック。
12月。就役式の朝。
DDG(X)の6隻が岸壁に並んでいた。船体は完璧だった。推進システム、電子システム、通信システム——2年で建造したJMUの仕事に一切の瑕疵はなかった。
ただ、レールガンの砲座には54口径127mm砲が仮搭載されていた。米海軍が長年使い慣れた、古典的な艦砲だった。レーザーターレットだけが、新しい光沢を放っていた。日本製だった。
在日米海軍司令官が式典壇上に立った。
「本日ここに、DDG(X)の就役を宣言します」
拍手が起きた。
城島防衛審議官が隣に立つ野中に囁いた。
「127mm砲か」
「はい」と野中が答えた。「米国製レールガンの納入は来年以降になるそうです」
「レーザーターレットは」
「日本製を搭載しています。1基15億円、6隻で合計……」
「いくらになる」
野中が小さく答えた。
「艦ごとに搭載数が異なりますが、合計で相当な額になります」
城島は式典の方を向いた。星条旗が風に揺れていた。
「日本が売った分だけは回収できたな」
愛知県弥富市。
田村颯太は仕事終わりに松本と並んで3LDKのリビングに座っていた。
テーブルの上に、指輪が二つ光っていた。
「式はどうする」と松本が言った。
「志摩でいい」と颯太が答えた。「英虞湾が見えるところで」
松本がしばらく考えた。
「郵船トラベルに頼む?」
「ジブチじゃないのにか」
二人は笑った。
窓の外の弥富の夜景に、工場の灯りが点々と連なっていた。




