26さらに進んで
『ドラゴンテイマー』の【ジョブ】を得た人間のリック。
『呪導師』の【ジョブ】を得た半魔人のレーナ。
2人して、不遇職を得たリックとレーナは、危険な魔物が生息する「漆黒の森」に追放される。
そこで、2人を待ち受けたのは、黒竜。
けれど、その黒竜は寿命が迫っていた。
そこで、2人に自身の子供を託し、光となって消える。
生まれた黒竜の子供をクロと名付け、リックとレーナとクロは、「漆黒の森」の”向こう側”を目指して、進む。
「クロちゃんがいれば、怖いものなしですね」
『えへへ』
レーナに褒められて、クロが照れる。
確かに、レーナの言う通り。
ここまで来るまで、レーナが半魔人としての戦闘力もあったが、クロの戦闘力は並外れている。
殆どの魔物を持ち前の爪と牙で倒すのだ。
強敵が現れても、炎のブレスで焼き尽くす。
「漆黒の森」の魔物は強力であるのは事実。
けど、それもクロの前では赤子同然。
まさに、怖いものなしである。
2人と1匹は休憩を取る。
『ところで、何でママの目は金色なの?』
クロが突然、ママであるレーナの目のことを聞く。
レーナの金色の目が興味を引いたのだろう。
「それはですね、クロちゃん。私が半分、魔人だからですよ」
『マジン?パパとは違うの?』
クロは魔人が分からないらしい。
「パパ…リックは人間ですね。私が半魔人です」
『ハンマジン?う~ん…』
クロは可愛らしく、小首を傾げる。
それはそうと、レーナの金色の目は、彼女の言う通り、魔人特有だろう。
レーナの父であるシンギュラル公爵も、レーナ曰く、彼女の母も目は金色では無いそうだ。
つまり、レーナの目が金色なのは、彼女が半分魔人であるが所以である可能性が高い。
『マジンだと、何か凄いの?』
「えっと…そうですね。人間に比べれば、力が強く、頑丈だってことぐらいでしょうか?」
『そうなんだ。他には、何か凄い能力とか無いの?』
「能力ですか?そう言ったものは……」
レーナは返答に困る。
レーナ本人も、魔人のことは実はよく知らない。
魔人が昔いたことは知っている。
その魔人が人とは、かけ離れた身体能力を持ち、さらには人間の【ジョブ】に値する特殊な能力を持っていたことぐらい。
でも、肝心の自分の特殊能力が何か、レーナは知らない。
レーナも半魔人といえ、魔人なので、特殊能力は多分持っているはず。
でも、感覚的に分かる。
自分の特殊な能力は、"血"に関係する何かであると。
僕たちは休憩を終え、また進む。
『ガオ!』
僕たちに迫る獅子のような魔物。
金色の体毛に、僕を一瞬で噛み砕けるような長い牙。
サーベルライオンと呼ばれる魔物だ。
強敵である。
普通の人にとっては、
「ふ!」
サーベルライオンの飛び込みを、レーナは華麗に躱す。
躱しざまの無防備な横っ腹に、
「〈呪闇・痺〉」
闇を纏った拳を叩き込む。
ドス!
大きな音が響く。
レーナは半分、魔人なので、人間離れした肉体からの正拳突きは、かなりの威力。
でも、それだけでない。
『グルアァ?!』
サーベルライオンは、体を一瞬痙攣させる。
その隙を見逃さず、
『うら!』
クロが爪の薙ぎ払いで、サーベルライオンを切り裂く。
これによりサーベルライオンは絶命。
レーナとクロの連携で、見事に仕留める。
先ほどの闇を纏ったレーナの拳は、レーナの【ジョブ】である『呪導師』の力。
本来なら、持続時間や効果そのものが低い闇を近接で使うことで、飛躍的な攻撃力を出す。
さっきの〈呪闇・痺〉も、痺れ効果のある闇で、サーベルライオンを一瞬痺れさせ、そこをクロが仕留めた。
ここまで、来るのに大体この連携で魔物は倒せている。
これなら、比較的安全に漆黒の森を抜けられそうだ。
そう思っていると、
「…………ん?あれは?」
「どうしたの、レーナ?」
「この先に、何か見えます。人工物のような何かが」
「え?」
僕は驚く。
何せ、ここは「漆黒の森」。
人工物なんて、あるはずが無い。
少し歩いて、見えてきたのは、
「これは…」
僕は首を傾げる。
目の前には、地面に魔法陣のような大きな円を描いた床に、その床の周りに複数の石の柱。
一言で言うならば、何かの儀式で使うような場所があった。




