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<1月書籍発売中!>純粋培養すぎる聖女の逆行~闇堕ちしかけたけど死んだ仲間に会えて幸せなので今度は尊い彼らを最善最優先で…って思ったのになんで追いかけてくるんですか?!~  作者: 天壱
第三章 聖女の知らない世界

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<1月書籍化決定!>24.聖女にとっての決定事項


「聖典は、任命された使命の果てに手に入れます。伝承通り封印されていました。持ち帰るまでは問題なかったのですが、……次に触れた時、聖典が暴走したのではないかと……」

「おい、肝心なところふわっと言うな」

「覚えてないんです。教皇様と喧嘩の最中だったので」

ばくりと、魚の切り身をまた一口スープと一緒に頬張った。


『お前は聖典をどう所持することになって、何をして、今度どうするつもりなのか。何年先の未来まで知っているのか。俺を〝英雄〟にするという意味と、つまりは俺の国に何が起こるのか。あとあのジジイも言ってた〝ニーロ〟と〝ラウナ〟だったか?お前が連れて行きたくねぇ本当の理由と、本来の関係性。…………取りあえずそこからだ』


アクセルに大聖堂から連れ出されて食事の為にお店に立ち寄った今。

アクセルに説明を求められたまま、なんとか話し始めた私だけれど本当に肝心の部分は覚えていなかった。敢えて言えば、アレは喧嘩なんて可愛いものじゃないけれど、それを話すとそもそものこの国の………というか教会の問題を晒すことになる。アクセルもそこまでは興味無いだろうし、いくら無音魔法をかけていても、ここは簡単にだけ説明した。

アクセルがモイを指差して「召喚魔は覚えてねぇのか」と尋ねるけれど、首を横に振る。そもそもモイは死んじゃった後だ。むしろモイが覚えているなら教えて欲しい。


「教皇様だけでなく教会も、そして皇帝陛下も聖典を探します。〝来たる脅威〟を阻む為に。この時代の聖典がどうなっているかはわかりませんが、私が持つ聖典を教皇様達にお渡しするわけにはいかないのでこのまま〝聖典の旅〟という名目で旅を続けようと思います。旅の間に出会った、……もう一度助けたい人達もいますし、今度こそ助けたい地もありますし……」

「その助けたい奴らは何年先までだ」

それは未来をどこまで知っているのかと一緒かな。

アクセルに首を傾けながら、聖典の旅が終わった年月を教える。途端にアクセルの顔が、ぐえっと歪んだ。長命種のエルフにも驚かれるのはちょっと意外だったけど、アクセルに人間族の平均寿命を確認されてみれば確かに私も納得した。アクセルは賢いから、ちゃんと私達にとっての年月で考えてくれたんだなとちょっと嬉しく思う。アクセルだって結界の中で百年もずっと閉じ込められていたのに。


「お前らよく短い人生のそんだけ使って嫌気がささなかったな」

「使命でしたから。それで、ハルティアについてなのですけれど……」

アクセルも旅には付き合ってくれたんだよとも思ったけれど、よく考えると伝説の聖典を見たいアクセルにとっては私達の寿命くらいちょっとした寄り道くらいの感覚だったのかもしれない。

アクセルの国であるハルティアの話になった途端、さっきまで呆れた顔をしていたの口がぴしりと閉じた。少し首を伸ばすように前のめりになってくるから、顔が近付いて少し緊張する。その分スープの器を手前に引き寄せながら、私は一つ一つアクセルに伝わるように説明をした。



一年後、ハルティアが魔物の大量発生で滅んでしまうことを。



魔物はもともと予兆もなく発生するものだけど、在る日を境に大量の魔物がハルティア王都を中心に飲み込み、田舎も辺境地も関係なく一夜の間に広がった。

直線距離ならアクセルの国まで三ヶ月程度だからまだ全然間に合うけれど、当時私達は旅でいろんなところを経由して行ったり来たり滞在していたからその大量発生時も遠方にいて気付けなかった。ハルティアがまるごと魔物の巣になって、周辺にも立ち入り禁止地域がいくつもできた。

もしかするとエルフだけを栄養源にする魔物か、それともエルフのいたハルティアの地そのものに原因があるのかとか、私が聖典の旅を終えた後も定かにはなっていなかった。


「研究者によると、王都に発生した大型魔物の中に下位魔物を生み出す魔物がいたか、もしくは繁殖直前の魔物がいたことが原因だとされています。発見された大型魔物の死骸の中には未発見の魔物も確認されたので……」

「おまえなぁああ………!!人の故郷の危機を!飯食いながらだらだらだらだらと……!!なんで今まで黙っていやがった?!」

ガッ!!と大きなアクセルの手に顔を鷲掴みされた。

食べながらじゃなくて話の区切りに食べたんだけど、ちょっと駄目だったらしい。「ごごごめんなさい!!」と謝るけれど、がっつり指に圧を加えられる。ずっと話を聞いている間アクセルは表情どころか瞬きひとつしないで冷静だったから、あまり話止めないでなるべく細かくちゃんと説明しなきゃと思ったんだけどごめんなさい!!アクセルが国のことで冷静なわけなかったね!!!目もがっつり魔眼が赤黒に光ってるよ?!!!!


「ごめんなさいごめんなさい!!未来のことなんて信じて貰えると思わなくて………!!神聖魔法にも未来視なんて無いですし、でもアクセルが出てきてくれなくても私一人で今度こそ魔物くらいならなんとかしようと……!!」

「一夜で国滅ぼした魔物だぞ?!!お前みたいな雑魚聖女一人でどうにかなるわけっ………ていうか〝英雄〟ってそういう意味だな?!!ふざけんな俺一人でンなバケモン魔物どうにかなるか!!!」

「だだだだだ大丈夫ですアクセルちゃんと一人で倒してます………!!」

ハァ?!!と大きな声がまた上がる。無音魔法あって本当にして良かった!!本来なら絶対店に響き渡っている!!

スープがまだちょびっと残っているままスプーンも手放す。アクセルに顔が掴まれているせいでちょっと指が邪魔で視界が見えにくいけど、手探りでアクセルの腕を私からも両手で掴み返す。「私も見てはいませんけど!」と言いながら、ちゃんとアクセルが心配ない大事なことを主張する。


「ハルティアに残ってた大型魔物を倒したのはアクセルです……!アクセルはすっごい強いから大丈夫です!エルフより魔物より強いアクセルなら今度こそ間に合えば国も救えます!私も、魔物相手ならそれなりにはちゃんと戦えますから……!」

本当に魔物にだけですけれど………!とそこは正直に言いながらも笑ってみせる。

アクセルのこの力の強い腕も丈夫な身体も、それにエルフ族の王族としての才能も、両方を掛け合わせた魔力も本当にすごいものだ。私達だって旅の間、何度もアクセルに助けられたから間違いない。

間に合うと伝わったのか、アクセルの手の力がするりと緩まった。そのまま顔から降ろされた手に、私は腕からその手を両手で握手するように握りしめる。

じっと私を見つめる魔眼が、また金色に戻っていてほっとする。でも、まだ言葉の荒さに反して顔は不安げに歪んでいて、牙も食い縛るアクセルに、私はちゃんと目を合わせる。

私にとって仲間を失うのが怖いのと同じくらい、アクセルにとっては故郷が大事だって知っているから。


「まだ一年あります!……大丈夫ですよ。アクセルは頭も良くて力もあって魔力も高くて弓も一流ですっごく強いエルフの王子様ですから。こうして外に出てきてくれたのですから、この時点で未来は変わってます!」

奪わせない、絶対に。

絶対の決意を胸に焼き付ける。心から笑ってみせながら、しんと身体の底が冷たい感覚が心地良く波打った。アクセルが怒るのも慌てるのも当然だけど、ハルティアに魔物が大量発生するのと同じくらい、もうこれは絶対決まったことだから。

今度は絶対私がアクセルの大事な故郷を絶対に守り抜いてみせるし魔物なんて一匹も残さないからね?アクセルの大事な人もアクセルを大事にしてくれた家族も育ったお城もお気に入りの神樹もアクセルの守りたいエルフ達に指一本絶対絶対許さないからただの一人も今度の今度こそ絶対アクセルから奪わせないからね??

もし叶うならアクセルも国を救ったことで認められて、王子様として返り咲ければ嬉しい。アクセルを認めないなんて勿体ないし絶対国規模の大損に間違いないから。


「お前………本当、どういう………」

ぽそぽそと、アクセルの声が薄く漏れた。さっきまでの牙を剥いた大きな口での話し方じゃなくて、呟くような話し方でよく聞こえない。

え?と耳を向けてみたら、逆に顔を背けられた。やっぱりまだ信じられないかな怒らせたかなと思ったけど、目の色はちらりと覗けた色は金色のままだ。

なんて言いましたかと、もう一回言葉でも尋ねてみようとしたその時。


「見つけました聖女様!!おはようございます!」


ラウナ?!!!

突然店の入ってきた方向から響かされた声に振り返る。やっぱりラウナだ。

ラウナが、店に入ってすぐの位置でこっちに目を向けていた。満面の笑顔のきらきらラウナに一気に視界が眩しくなる。

途端にアクセルもびっくりしたのか、私が掴んじゃったままの手を引っ込めてラウナに身体ごと向き直る形で私に背中を向ける。身構えたアクセルに、ラウナも僅かに目を鋭くして身構えるから私も慌てて「どっちも知り合いです!!」と伝え………る途中で無音魔法がそのままなのを思い出す。


アクセルには聞こえたようで構えを解いてくれたけど、慌てて魔法を解除して、ラウナに「どうしてここに?!」と呼びかける。途端にまた、きらっきらとラウナが期待いっぱいの眼差しが眩しくなった。

ラウナ、こんなずっと笑顔とかできたんだ。旅の間は愛想も社交辞令も嫌いだった人なのに。冷静でつんとしたラウナも大好きだけど!可愛いラウナもすごくすっごく好きだよ!!


「突然申し訳ありません」とアクセルの横を抜けて謝ってくれるラウナは、何事もなかったかのように私の前まで早足で歩み寄ってきた。


連載再開しました!

そしてご報告がございます。本作、書籍化決定いたしました………!

活動報告更新しました。確認頂ければ幸いです。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1248483/blogkey/3553922/

心からの感謝を。


追記・申し訳ありません!次回からは20時更新致します。

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【1月25日書籍発売!!】

書籍化決定


《コミカライズも決定!!》

皆さんのお陰です本当にありがとうございます!!

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