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フィリアの信仰  作者: 緑茶おいしい
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アリアードナ・ガレリア・フリンツ②

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よろしくお願いします。

「さぁ、遠慮なく好きな物を頼んでいいよ。ここはエルフが経営している店だから、そっちの宗教的にダメな物とか無いから。あっ、ちなみにお薦めは、ここ最近王都で流行っている、柔らかいスポンジに生クリームと新鮮な果物をふんだんに使ったフルーツケーキだよ。紅茶もウィルキン産の物と合うし、なにより……」


路地裏から暴漢に助けられた後に、私は彼、ナナシに連れられて、王都の中にある一件のカフェへと連れられています。

そして、私はナナシさんに進められるままに、テラスに置かれた席に着きました。

私達が席に着くと、すぐに店員のエルフが水と一緒にメニューを持って来、注文が決まったら、そちらの呼び鈴を鳴らし、お呼び下さい。と言って、店内へと戻っていきました。


とりえずナナシさんの勧められるままに、メニューを開きましたが、何故こんな状況になっているのかと、容量の悪い頭でなんとか考えているせいで、ナナシさんの言葉は右から左でしたが、大事な友人の事を思い出したところで、私は机に、バンッと大きな音を立てるように手を突き、椅子から立ち上がり、ナナシさんに告げました。


「あ、あの!私こんなことをしている場合じゃないんです!エリザの元に戻らなくちゃいけないんです!

エリザは心配性だから絶対、今頃私の事を心配して、私を探していると思うんです!だから、私もエリザのとこに行かなくちゃいけなくて!助けてくれた事は感謝しています、ですが、私は今からエリザを探しに行きます!」


生まれて始めてじゃないかと思う程の大きな声を出しながら、私は言い終えると、杖に手に取り、驚いているナナシさんを置いて、席を後にしようとしたところで、私はナナシに止められてしまいました。


「ちょ、ちょっと落ち着いて!君が友人の事を心配しているのは良く分かったけど、君は今、自分が王都のどこにいるか分かっているのか?それに、友人が君を探しているとしたら、この広い王都で見つけるのは、とても困難なことだよ」

「それなら大丈夫です。エリザの位置なら精霊様が教えてくれます」


そう言って、私は胸の前に両手を組み、身体の中に居る精霊様のフィーを通して、王都内に居る精霊様達を通じて、エリザの場所を把握します。

場所は、ここからだいぶ離れているようです。

エリザも精霊様を通じて私の場所が分かっているのに、一向に距離が縮まる事も無く、逆に遠ざかっています。

エリザのことなら大丈夫だと思うけれど、私と同じように襲われて、どこかに攫われている可能性もあります。

それなら今すぐにでも彼女の元へ駆けつけないと!


エリザの位置を確認すると、私は杖を握り直し、カフェを後にしようとした所で、今度は腕を捕まれ、またしてもナナシさんに、引き止められてしまいました。


「待った!黙ってて悪かったが、実は俺は王都の臣下なんだよ。君の友人なら、今頃俺の仲間達に連れられて安全に王宮に向かっている」


ナナシさんから発せられた言葉に、私は思わず目を丸くしてしまう。


「本当ですか!?」

「あぁ、本当だよ。あー、一応これ、機密の道具なんだけど、ちょっと待ってて」


そういと、彼はポケットから手のひらサイズの長方形の黒い石みたいな物を取り出し、指で何度かなぞると、右手で持ったそれを、耳へと近づける。


「あー、もしもし、俺だけど。そっちはどう?……うん、やっぱりそうか。こっちも似たような感じ。

それじゃあ代わるから、そっちも代わって上げて。……はい、使い方はそのまま耳に近づけて喋るだけでいいから」


ナナシから渡された黒い石だと思っていたものは、触った感触はどうやら石ではない上、驚いた事に、見えていなかった表面には、恐らくガラスが貼られている上、なんと光を発しているのだ。そして、見たことのない文字?に絵も描かれている。


私は恐る恐ると、それを耳に当てると、


「アリア!アリア!聞こえてる!?私よ!エリザよ!」


行き成り大きな声でエリザの声が聞こえて、思わず顔を大きく離してしまう。


「え、エリザ?本当にエリザなの?」


耳にもう一度近づけ、突如聞こえて来たエリザの声に、私は返事を返す。


「そうよ!あなたの大親友のエリザヴェートよ!あぁ、本当に無事で良かった……!全く、このおバカ!なんでちゃんと私について居なかったのよ!まさかあんな少し離れただけで、行き成り攫われちゃうなんて、無警戒にも程があるわ!フィーもフィーよ!アリアと契約している精霊ならちゃんとアリアを守りなさい!」


エルフが讃えるべき精霊に対してのあまりの暴言に驚きつつも、どうやら、本当に声の主がエリザだと分かり、胸をほっと撫で下ろす。


「え、エリザ。聖霊様をそういう風に言っちゃ駄目だよ……。エリザは今、何処にいるの?」

「私は今、アメリアの騎士達と一緒に馬車で王宮に向かっている途中よ。そっちは?」


それから、私はエリザと別れた後の事を説明すると、


「はぁーっ!私がこんなに心配しているのに、貴方は男とカフェですって!何よその男!私のアリアに手を出したらただじゃ置かないわ!」


私だって好きでこんな状況になった訳ではないのですが、攫われる所を助けれてくれた人に対してその物言いには少し、何故だか腹が立ってしまいました。


「エリザ、ナナシさんは私を助けてくれた人なんだよ?そんな風に言っちゃ駄目だよ」

「何を言っているの!そいつは王都の騎士なんでしょ!?いくらアリアが私と同じ絶世の美少女で一緒にお茶をしたくなるのは仕方ないとしても、それは妄想だけにして、ちゃんと職務を全うしてアリアを一秒でも早く私の元へと連れてくるべきでしょう!」


エリザの声は大きく、どうやらナナシにも聞こえているらしく、彼は頬をポリポリとかきながら、困った顔をしている。


「違うよエリザ、ナナシさんは動揺していた私を落ち着かせる為に連れてきてくれたんだよ」

「どうかしら、いい、アリア?男なんて皆、獣なのよ?油断したらぱっくりいかれちゃうんだから!」

「パックリ?彼はとても私を食べるようには見えないけど……」


私は、ナナシさんを見ると、普通の人族にしか見えない。

(とても、エルフを食べるようには見えないけど……)


「違うのよ、アリアの考えているぱっくりとは違うの!」

「??何が違うの?」


なんだろう、食べるという意味に他の意味があるのだろうか?


「そ、それは……えっと……、あ、アリアにはまだ早いわ!とりあえず、さっさと王宮に来なさい!」

「う、うん。そうするね」


そういった所で、ナナシさんが私から、先程まで恐らく遠距離の相手との会話ができる魔道具を取り上げる。


「まぁ、お互いの無事は分かったし、もういいかな?」

「あ、はい。それで、申し訳無いのですが、今すぐにでも私は王宮に行きたいのですが……」


私はそう告げると、ナナシは困った顔をしてしまう。


「悪いけどそれはできないんだ。君には申し訳無いけど、もうしばらくここに居てほしいんだ」

「それは……何故です?」


ナナシは王都の臣下だと言うのなら、私の正体を知っており、すぐにでも王宮に連れて行くべきはずです。

なのに、それが出来ない理由は何なんなのでしょう?


「あ、あの……」

「お待たせいたしました。季節のフルーツケーキにウィルキンティーになります」


ナナシから理由を聞き出そうとした所で、店員のエルフが、見たことの無い程綺麗なケーキと紅茶を持ってきた。


「わぁ……、綺麗……」


思わず、目の前に置かれた宝石のようなケーキに、私の目は奪われてしまう。


「タルトと違って最近流行りだした、スポンジケーキと生クリームに砂糖等を使って作られたケーキだよ。話は食べながらでも良いんじゃないかな?」


ナナシの言葉に、私は思わずコクリと頷いてしまいました。


私はしばらくケーキを眺めた後、フォークで恐る恐ると、ケーキを刺すと、ちょっとした抵抗を感じた後、すんなりとお皿に届くまで、フォークが刺さってしまい、驚いてしまう。

そして、落ちないように気をつけながら、フォークで掬ったケーキを口に入れると。柔らかいスポンジケーキに、甘い生クリーム、そして酸味の聞いたイチゴやみかん等といった果物美味しさが交わり、頬が落ちてしまいそうだ。


「……美味しい」


やっとの事で絞り出た言葉は、これだった。


「お気に召したようで何よりだよ」


ナナシさんの声に、思わず私は、ハッと顔を上げる。


「あっ……」


どうやら、気づかないうちに、ケーキに夢中になっており、既に皿には、少量の生クリームが残っているだけだった。


はしたない所を見られたと、私は思わず顔を赤くしてしまいます。


「良かったらこっちもどうぞ」


ナナシさんが自分の前に置かれていた皿を私の前に動かす。

皿の上には、タルト生地に白い何かと、恐らくブルーベリーが一つ置かれており、その上にハーブが置かれている。ブルーベリーから垂れるソースとハーブ、そして、白とのコントラストがとても綺麗で、食べるのがもったいないと思ってしまう。


「あ、あの……」

「それはチーズケーキだね。ただのチーズじゃなくて、ケーキ用に作られた物で、とても美味しいよ」

「あ、えっと、い、頂きます……」


本当はこんな事をしている場合では無いはずなのに、何故かナナシさんに進められると、断れなくなってしまう。


心の中でエリザに謝りながら、私はチーズケーキへと、手をつける。




「満足したかな?」

「は、はい。ごちそう様でした」


結局、私は差し出されたチーズケーキを食べ終え、紅茶まで綺麗に飲み終えてしまいました。


「さて、それじゃあそろそろ、王宮に向かおうと思うんだけど、その前に一つお願いがあるんだけど、いいかな?」

「は、はい。なんでも言って下さい」


ここまでされてしまっては、何もお礼をしない訳にはいかないので、私はナナシさんのお願いを聞くことにした。


「精霊を見てみたいんだけど、見せてくれないかな?」

「えっ?」


どんなお願いが来ると少々身構えていましたけれど、ナナシさんのお願いは不可能な物でした。

精霊様はエルフ族にしか見えない。これは神話時代ならともかく、今は自然と共に生きるエルフのみにしか精霊様を見ることが出来なくなってしまっているからです。

だけど、ナナシさんには恩があるので、一応、私の中に居る、精霊フィーを出すことにしました。


私が胸に手を当て、フィーを呼ぶと、私の胸のあたりからフィーが飛び出すなり、行き成りナナシさんに近づき、何か確認するように近づいたり離れたりしていると思ったら、急にナナシさんの周りを回り始めました。


「ちょ、ちょっと、フィー!駄目だよそんなことしちゃ!」

「……これが精霊か。てっきり妖精みたいな形状かと思ったら、丸い光なのか……」

「……えっ、も、もしかして、見えるんですか?」


精霊はエルフ族にしか見えない。これは数百年前から分かっていることなのに、ナナシさんはそれが見えるというのだ。その言葉に、私は心底驚いてしまった。


「うん、赤い光だね。なんか俺の周りをくるくると回ってるけど、なんでかな?」

「えっ、それは、私にも分かりません……」


フィーがこんな行動を取るなんて今までで一度もありませんでした。

偶に私やエルザの周りをくるくるとゆっくり回る事があったりましたが、ここまで激しく動いているのは初めてみました。

まるで、そう、何か喜んでいるみたいな……。


「んー……何か言っているみたいんなんだけど、俺にはよく聞こえないな……。アリアは分かる?」


眉をハの字にしたナナシさんは、フィーから発する言葉を聞き取ろうとしているみたいですが、どうやら聞こえないみたいです。

ですが、それは当然の事です。聖霊様の声が聞こえるエルフは、総じて巫女と言われ、人数は極々僅かであり、聞こえたと言っても、基本的に益体の無い事や、稀に大切なお告げの様な事があるくらいです。


一応、私も巫女と言われており、聖霊様の声を何度か聞いた事がありますが、耳で聞くというより、頭に直接声が聴こえるといった感じです。

それに、声はいつも何か雑音が混じった様な物で、はっきりと聞こえる事など今まで一度もありませんでした。


そんな聖霊様の声が聴こえるという特別な事を、例え何を言っているか分からないと言っても、『何か言っている』ということが分かるという事自体が驚愕です。


一体この人は何者なんでしょうか……。


「いえ、私にも分かりません……すみません」


自身を助けてくれた恩人の役に立てなくて、申し訳なく、つい頭を下げてしまう。


「いや、別に気にしなくていいから、頭を上げて」


ナナシさんが少し慌てるように言うので、私は頭を上げつつ、きっとこの人は人が良いんだぁ~なんて考えてしまいました。


「フィー、戻っておいで」


先程からナナシさんの周りをくるくると回っていたフィーですが、私が呼べば、名残惜しそうにしながらも、私の元へ戻って来、私が両手でフィーを囲むようにしてから、胸に押し当てると、フィーは私の中に入っていきました。


エルフにとって精霊様は、主神の次に崇拝する存在ですが、この赤い精霊のフィーは、私が生まれた時から一緒にいる存在で、崇拝する存在というより、どちらかというと姉妹といった感じがしてしまい、姉妹感覚で接してしまいます。


ちなみに、フィーは、火の精霊であり、私が精霊魔法を使う際には、フィーの力を借りる事が多いです。


「さて、それじゃあこっちの用事も粗方片付いたし、そろそろ王宮に向かおうか」


私がフィーを身体の中に入れ終わると、ナナシさんがそう言って席を立ち上がりました。


「用事ですか?」


ナナシさんの言葉に、疑問を抱き、つい聞いてしまいます。


「あ~、精霊の事を聞くことだよ。今までずっと気になっててね」


なるほど、確かにエルフ以外では、聖霊様を見る事ができませんし、どういった存在か気になるのか気になる人が多くいるそうです。


「そうだったんですか。フィーをお見せできる事ができてよかったです」


私はそう言って、杖を持つと、席を立ちました。

そして、ナナシさんの後を追って店から出て、どうやら私達を待っていた馬車に乗った所で、カフェの代金をナナシさんが既に払いっていてくれた事に気づきました。


私も代金を支払うと言うと、これは公費だから気にしなくていいよ。と言われてしまったので、ここでまだ支払うと言うのは逆効果だと思い、素直にお礼を述べるだけにしておきました。


それにしても、王都の馬車は全然揺れないんですね。驚きです。




「アリア!!」


王宮に着き、ナナシさんに差し出された手を取りながら、馬車から降りた所に、エリザが大きな声で私を呼びながら抱きついてきました。


「きゃっ!え、エリザ!苦しいよ!」

「アリア!アリア!アリア!私の可愛いアリア!やっと会えたわ!もう絶対に離さないんだから!」


アリアは、強く私を抱きしめると、何度も私の名前を呼びます。

少々大げさ過ぎるかと思いますが、親友にこうまで心配されるということは、やっぱり素直に嬉しいです。


そんな私達を、優しい目で見つめるナナシさんと目が合うと、何故か急に恥ずかしくなってしまいました。


「え、エリザ。もういいでしょ、苦しいから離れようよ」

「だーめ!また攫われたりしたら大変よ!そ・れ・に!公私混同して、護衛対象と呑気にお茶をする不埒な輩もいることだし!」


そう言って、エリザはナナシさんを睨みつけます。

ナナシさんは、困ったようにするだけで、特に何か言ったりはしないみたいです。


「エリザ、さっきも言ったけど、ナナシさんは攫われかけて動揺していた私を落ち着かせる為にしてくれたんだから、そういこといっちゃ駄目だよ」


私は、なんとかエリザを引き離そうとしますが、力では、日々鍛錬しているエリザに敵うわけも無く、抱きつかれたままです。


「いーえ、それならさっさと正体を明かして、王宮に連れてくるはずでしょ。絶対何か企んでいたに違いないわ」

「ナナシさんはそんな人じゃないわ。エリザ、これ以上ナナシさんを侮辱するなら、私、エリザの事、嫌いになっちゃうよ?」


恩人に対してのあまりの態度に、私は切り札を容赦なく使う。


「そ、そんな……、わ、私……アリアに嫌われたらもう生きていけない!ごめんなさいアリア!謝るからそれだけは許して!ずっと私と一緒にいて!」


私の切り札に、エリザはいつもの如くすぐさま膝をつき、両手を胸の前で組むと、涙目になって私に謝罪をしてくる。

全く、エリザは私と男の人が一緒にいたらすぐこうなるんだから……。


「謝る相手は私じゃないでしょ?」

「っぐ……」


私は両手を腰に当て、膝を付いているエリザに告げると、エリザは苦渋の表情をし、たっぷりと時間をかけ


「……わ、わるかった、わ……」


ナナシさんに向かって謝罪しましたが、さすがにこれは駄目でしょう。


「エリザ」

「っぐ、……悪かったわ!アリアを助けてくれたのに、私の可愛いアリアに手を出すくそ野郎だとか、絶対あいつはアリアをお持ち帰りして食べちゃうつもりだとか、世間知らずのアリアにあんなことやこんな

ことを教えたりしたりするごみくそ野郎だとか思って悪かったわ!アリアを助けてありがとうございました!」

「え、エリザ……」


あまりの謝罪に、私は禄に言葉がでなく、こんな謝罪ではナナシさんはきっと怒ってしまっただろうと、

ナナシさんを見ると


「いえいえ、こちらこそすぐに連絡をしなくて申し訳ありませんでした」

「えっ!」


なんと、逆に謝罪をし、頭を下げてしまいました。

これには、さすがにエリザも驚いたようで、目を丸くしています。


「さ、このような場所では膝も痛むでしょう、どうかお立ちになって下さい」

「え、えぇ……ありがとう……」


エリザの近くまでナナシさんが来ると、未だに膝を付いているエリザに手を差し伸べ、エリザがその手を取ると、優しく立ち上がらせてあげ、ハンカチで膝に着いた砂埃を綺麗に拭いあげます。


とても紳士的な振る舞いに、エリザは固まってしまい、私はというと、何故かエリザに優しくするナナシさんを見て、何故か心が苦しくなってしまいました。


「っさ、それではお二方に、お連れの騎士様方、禄に休息する時間も無く、申し訳ありませんが、王がお待ちです」


ナナシさんがそう告げると、私達は、彼に続いて、白亜の王宮の中へと足を踏み入れていきます。














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