表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
独りの空  作者:
20/28

切り取られた時間の中で ~それぞれの再生~

 時間が、戻った。今はいつなのだろう。カレンダーを見ると、どうやら流歌と外食をした翌日らしい。私が殺される、およそ3週間前。                              「3週間、か・・・。思ったより効力はないね。もっと戻れると思ったんだけど。」          せめて、始まりの日までは戻りたかった。あのおかしな者達に、囲まれた日まで。        「あそこまで戻れば、あいつらから聞きだせるのに。まあ、いいか。」               時間は3週間もある。その間に、調べておきたいことがある。                  「葛葉、妖夜。あれがどうして私を恨むのか。死ぬ直前に言われた気もするけど、記憶にノイズが入っているから、思い出そうとしてもダメ。」                            3週間か。調べ上げる時間はあるだろうが、妖夜を返り討ちにする方法を考える時間は、とてもない。「だとすると、調べてしっかり記憶に残しておくのが一番いいかな。」               輪廻のまじないは、1度しか使えない。さらに、死ぬ回数を重ねていくごとに、戻せる時間も減っていく。最悪、戻ったら死ぬ直前だった、というのもあるのだ。                  「書庫に行こう。あそこなら、家計図も術の心得もあるはず。」                  切り取られた3週間の時間の中、私は動き出した。                                                                                  「・・・あれ?私、死んだはず・・・。」                              それなのに、今、目が開かれている。身体も透けたりしていない。となると、あれは夢だったのだろうか。                                             「ううん、夢なんかじゃない。あれは実際起こった。あんな痛みのある夢、聞いたことがない。」    しかし、何故生きているのだろう。死んだ人間は生き返らないはずだ。              「あ、カレンダーが、まだ12月だ。時間が戻ったのかな?」                     でも、どうして時間が戻ったのだろう。                            「・・・誰かに聞こう。あそこにいたのは、確か・・・。」                     日下遙。菅原慎玖朗。川崎刹那。日下流歌。上条雪花。上条雪斗。                「あと・・・誰だっけ。思い出せない。」                             とりあえず、まずはその6人の中で、知っている人に話をしてみることにした。                                                                                                                                                        「あ・・・僕、生きてる。そっか、あの時遙が時間を戻したから・・・。」              自分の口から、何げなく出た、その言葉。                            それに対する違和感に気づくのに、10秒ほど時間がかかった。                  「あれ?何で、遙だって・・・そもそも、何で知ってるんだ? 時間が戻ったなんて・・・。」      ここに、カレンダーはない。そして僕は、ベッドに横たわっている。                菅原慎玖朗が壊れ始めたのは、この時からだ。                                                                                                           「お目覚めですか、桜夜様。」                                 「(れい)・・・?私は、死んだんじゃ・・・?」                          麗は侍女の名前だ。10年ほど前から働いている。                        「夢でも見られたのですか?」                                  「いえ、何でもないわ。水を持ってきて。」                           「かしこまりました。では失礼いたします。」                           私は1度死んだ。それは確かだ。あの時、誰かに後ろから刺されたのだ。誰かは分からなかった。時間が戻ったようだ。しかし、死ぬ直前より前の記憶がない。                      桜夜にはこの時から、さまざまな者に対する疑惑が、心の中に芽生え始めていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ