キキタクナイコトバ
おまたせ(3ヶ月)
いやぁ、色々あった。
取り敢えず見苦しい言い訳は後書きにて。
間が空きすぎたので前回のあらすじ
ショーン「お昼休みだ。サルメスタ行こう」
マテル「遺跡の報酬少なくない?」
ハウ「こんにちわ~!」
マテル(よく分かんないけど気持ち悪い)
あっ、今回は三人称です
結局のところ、マテルの体調の変化にショーンが気づいたのは、ハウとの会話に一端の区切りがついてからの一幕であった。
「無理はしないでくれると、僕は助かるんだけどね」
「ごめん、ありがとう」
マテルの中での漠然とした嫌悪感、倦怠感は治まることを知らないように悪化した。
まるで船旅で酔った旅人の如く、マテルは口元を手で塞ぐ。
三半規管が異常を訴えかけてきたような目眩。それに伴う吐き気とのぼせたようにふらつく頭は、最早マテルだけではどうにもできなかったのだ。
そうして、足に力を入れることすらできないマテルは、ショーンの肩を借りる形で支えられ、サルメスタ従業員の案内の下、臨時的に店内の休憩室へと運ばれた。
当然その一連の出来事を知ることのできたその場の客は、一部食中毒を疑い、幾人かの客は早々に勘定を済ませ、サルメスタから出ていった。
無論、お構い無しと食事を続ける者や、そもそもマテルとショーンが席を立ったことにすら気づいていない者達もこの場にはいる。
そんな中、ただ立っていたのはハウ一人だったと言えよう。
吐き気を抑えるマテルを見送ったハウは、彼らがその場からいなくなるのを確認すると、ようやく動き出す。
別にそれは大袈裟に言うほどの行動でも何でもない。単に彼女は席についた。それはただそれだけの動作だった。
自然に、当たり前に、当然のように、彼女はマテルが座っていた席へ座わり込んだのだ。
誰の視線もそちらには向けられていない。博愛的な誰かは運ばれたマテルを心配し、無関心な誰かは目前の料理に目を落とし、自己愛的な誰かは既に店から出ていった。
故に誰も、最寄りの椅子ではなく、敢えて奥にあったマテルの席まで移動する彼女に、違和感を感じることがなかったのだろう。
「いかなくていいの?」
テーブルに肘をついて、そう言って、ハウが人差し指で小突くのは、マテルの従魔である白だった。
人は誰しも従魔に話し掛けはする。特別従魔だけというわけでもなく、動物にだってコミュニケーションの一環として言葉を使う。無論、それに言語としての返事を期待などはしていないだろうが。
「その質問をする意味が僕には分からないね」
しかし、ハウにはそれが言葉以外の何ものでのないことを知っていた。それをどこかで身につけた覚えは彼女にもないのだけれど、分かってしまうのだからそういうものなのだとハウは受け取っている。
「心配してるくせに」
強がっていると、白の態度を見て判断したハウは、もう一度押すようにして白を突っついた。
突き出した人差し指は引き戻さず、ハウは手のひらを広げて湾曲した白の体にそれらを沿わす。
「僕が行ったところで治るものでもないし、意味はないよ」
撫でられながらに呟かれる言葉。やはりそれはハウの耳には強がりにしか聞こえず、子供みたいで可愛いという感想を頭の片隅に浮かべる。
それとは別として、会話の流れからして、丁度良いとでも思ったのだろう。彼女にとっては八つ当たりのようなことを白に告げる。
「ねぇ知ってる? 誰かが側にいてくれるのは心強いんだよ?」
勿論その言葉に八つ当たり以上の意味はない。あるいは皮肉になり得る意味があるのかもしれないが、白とはおよそ無関係でしかないのだから、やはりそれは相手にぶつけて気を晴らすだけの代物だ。だからぶつけた時点で意味を失くす。
「ゴネットも似たようなことを言っていたね」
しかし、それ以上の意味を偶然にも拾えたことは、ハウにとっては幸か不幸か。
不意にその名を聞いて、ハウが思わず顔をしかめたのは一瞬だった。すぐさま元通りの表情になり、その変化を目撃した者がいたのなら、見間違えたか? と考えるほど刹那的なもの。仮に役者がそれを評価するのならば、素晴らしい演技力だと評するだろう。
そして会話相手であったからこそ、唯一それを目撃できた白は、その変化の理由を知らない。知っている限りの記憶をかき集めたって、精々が原因を突き止められるくらいでしかなかった。
「五歳くらいだっけ? マテルが『さみしいならあそぼ』って学校で声を掛けたの」
「……」
「ほんと嫌だよね。無責任な本人は忘れてるくせにさ。従魔は忘れられないんだから」
白をからかうように撫でていた手を、ハウはいつの間にか止めていた。
その言葉に怒りは湧かず、悲しみもない。だが、ハウはただ心のどこかで求めていた答えを聞けて、寂しさを覚えてしまう。
「それで? 君はどうするの?」
どうやら白は、黙り込んだハウをそのままにしようとは考えなかったらしい。
受動的だった白が、今度はハウの手に体を擦り付けるようにして、自ら撫でられに行く。その能動的な態度は、会話の主導権が逆転したことを示唆するように、止まっていたハウの五指で蠢いた。
「昔のように戻りたい? それとも……」
その後の言葉は、いくら待とうが続かない。思い浮かばないから言い淀むわけではなく、言う必要がないだろうと、白は言葉を続けない。
そんな僅かな合間。指になんら動きを感じないハウは、それが口外に「君の考えを口にしろ」と、自分に主導権が返されたことを察する。
だから一呼吸置いて。
「今はいいかな。まだ準備をしてる途中だし」
彼女は笑顔で白への答えを返してやる。
現在の目的とは別なのだから、踏ん切りさえつけば事今回に限り諦めはつく。
「ぐぅ」
最後に白をワシャワシャと雑に撫で回し、不満げな声を上げさせると、ハウは満足したように立ち上がる。
「あっそうだ。私これいらないから、マテルにあげてね」
ふと思い出したかのように、丁度良いとばかりに、ハウは封をした手紙をテーブルの上に取り出した。
それはハウにとってはゴミ処理……とまでは行かずとも大義名分を得るような行動ではあった。
まぁ、それが後々面倒事になるとは、このとき露程も知らないわけだが。
「『マテルへ』っと、じゃあよろしくね」
手持ちのペンを走らせて、即席で宛名を書き込むと、ハウはそれを白へ押し付けるように渡して、ここサルメスタから去ってしまった。
別れも、何も語ることはなく、彼女はこの日マテルの前から姿を消した。
たかだか一日にも満たない邂逅ではあったが、彼女からすれば充分な一日でもあっただろう。不完全燃焼なマテルには疑問を残すだろうし、密かに訝しんでいたショーンは手を引いた『ハウ』にちぐはぐな警戒心を持つはずだ。
けれども『彼女』は、それでも良いと考える。どうでもいいとさえ感じている。
ただマテルに思われているということが、彼女にとっては重要であり、一際大事なことなのだ。その時々の感情なぞ些事でしかなく、他者なんて目もくれてやらない。
いくら吹いても消えなかった灯火は、本人を前にして勢いを増した。
彼女はそんな熱を内に秘め、人混みの中に消えていく。
その姿はまるで自棄を起こした歯止めを知らない子供のようで。
「もう、さよならなんて言わせない」
呟く彼女の言葉は、行き交う人々の音によって掻き消される。
だがそれは間違いなく、一人の人間に向けられた消えることのない独占欲の証であった。
まず、この3ヶ月の報告。
ディスガイアRPG始めました。今呉服屋やってます。
ハワイに行きました。アサイボウルがうまかったです。
fgo2部5章で泣いたりソルティライチで楊貴妃呼んだり、新年はウキウキルンルンな気分でした。
グラブルも陰陽ネズミ引けたし。
気がついたら3ヶ月経っていたんです。
誰ですか? 前回の後書きでペース戻せるって書いた人。
(  ̄ー ̄)ノ
先生怒らないから手を挙げました。
ごめんなさい。
あと累計PV数3000余裕の3700ちょっと。
もうすぐ4000に届きそうなのを昨日確認しました。
音沙汰ない、客観的に見て失踪したようなこの作品に、未だに根気強く付き合って、読んで下さる読者様がいる。
それを励みに、遠い完結目指して今後ともよろしくお願い致します。
次回こそは来週更新……。




