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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第7章 姿なき追跡者編~ジーク~
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80・その者、赤き姿の

 事件の後、俺たちはしばらく拘束された。

 拘束と言っても牢屋に入れられた訳でもなく、ただ町から出ないようにと約束させられただけだ。


 この町のギルドには既に責任者は居ない。

 王都から応援を呼ぶとともに、王都のギルドマスターであり、サジリナの姉でもあるサジリアもこの町に来た。

 サジリアは酷く悲しんだが、俺たちを責める事はしなかった。


 検死の結果、サジリナの死因は自らが開けた腹部のそれであり、男の声についてはまだ不明のままだ。

 だが俺は、サジリナに憑りついていたのがあの魔族であると確信していた。

 そいつは、ヴィーダの邪魔になる俺を殺すとはっきりと言ったのだ。

 つまり、あの魔族は四天王ではなかった。


 一部始終を話はしたが、四天王の名前だけは伏せておいた。

 なんとなくだが、そうした方がいいと思ったのだ。


「旅の途中だというのに、この町に一ヶ月以上も足止めさせて、申し訳ありませんでしたわ」

「いや、それはいい。……サジリナは残念だった」

「はい。……とても悲しいですし、とても悔しいですわ……」


 事件があって、王都から応援が来るまでに一ヶ月以上かかっている。

 その間に、あの魔族がまた襲ってくる事はなかった。


 あいつは王都からずっと追ってきていたのだ。

 今後も諦めてくれる可能性は低いだろう。


 王都から来た騎士たちは、町やその周辺に捜査網を広げてはいるが、あの魔族が捕まるとはとても思えない。

 だいたい騎士たちはあの魔族を知らないし、犯人として特定できたわけでもないのだ。

 誰を追えばいいのかも分からず、怪しいやつを探す程度の事と聴き込みぐらいしか出来ない。


 サジリナの口から男の声を聞いた。

 王都で魔族に襲われた。


 俺はそれぐらいの事しか言っていない。

 魔法鑑定の結果、俺たちの無実はすでに証明されている。

 サジリナが自らの手で腹に穴を開けた事さえ、鑑定で分かってしまうのだ。


 出された料理に睡眠薬が混入されていた事も判明したが、俺には何故か効かなかった。以前、ニナのスキル『天使の誘惑』も効かなかった事も関係があるのだろうか。――俺はそういう体質なのかもしれない。

 

 天使や竜にもそんな薬が効くはずもないらしく、何ともなかったらしい。

 不思議なのはサーラでさえ効かなかった事から、その薬は不良だった可能性もある。


「アラン様は既に自由にしてくれていいのですけど、最後にもう一度だけ現場の検証に付き合っていただけまして?」


 サジリアは申し訳なさそうに切り出した。


「それはかまわないけど、今更何を調べるんだ?」

「王都から到着が遅れた者が居るのですわ。その者に現場を見てもらっているのですけど、当事者のアランさんたちからも、意見が聞きたいという事ですわ」


 今からでいいかと言うので、サジリアと一緒に例の、殺戮現場の豪邸へと再び向かった。




 死の恐怖の記憶が体に刻まれてしまったせいか、その建物の存在自体が既に、忌まわしいものに感じてしまう。

 中に入ればさらに重い空気が漂い、息苦しくなるほどだ。


「大丈夫ですか? アラン」

「ああ。気分は悪いが、大丈夫だ」


 吹き抜けの玄関でサジリアは誰かを探すように見廻し、すぐに目的を果たしたようだ。


「居ましたわ。彼女ですわ」


 サジリアが言うより先に、俺はその異質なものを視界に入れていた。赤いマントの少女がひとり、ツインテールの赤い髪を躍らせて駆け回っていたのだ。


 あっちへ行っては、階段の手すりのほこりをすくい、そっちに行っては、足元のゴミを拾う。

 動きは機敏だが、やたらと短いフレアな感じのスカートがその度にひらめいて、中の下着を見え隠れさせていた。

 あれは何をやっているのだろうか。


「マルちゃん! 連れてきましたわ!」


 マルちゃんと呼ばれた少女はこちらを振り向き、スタスタとやってきた。

 年の頃はサーラと同じくらいだろうか。

 赤毛のツインテールに赤いマント姿、やたらと短いスカートも赤く、長めのブーツも赤い。


「はじめまして! あたしは……」


 ここまで言って、なにやらポーズを決めだした。


「東に暗雲立ち込めたれば、それに赴きサクっと解決!」


 さらにポーズを変え――


「西に迷える子羊あれば、そこに赴きマルっと解決!」


 正面を向き――


「カラダは少女! 頭脳はSランク!」


 くるっと回転して右手を天に人差し指を立て、左手は腰にあて――


「ランクS美少女魔法探偵! マルゲリーテとはあたしの事よ! キラッ」


 さらに今度は右手を前に突きだし、左手は顔の右側半分を隠し――


「神にかわって~~~~~お昼寝よ!!!」


 ――ピョンと小さく跳ねると短すぎるスカートの裾が翻り、水色ボーダーの下着を一瞬露わにさせた。


「寝るのかよ!……寝てどうすんだよ。てか神いらねーだろ!」


 反射的に突っ込んだ。

 こいつの口上を黙って聞いてた俺が、馬鹿みたいだった。


「おにーさん、ナイスツッコミですねっ。何者ですか?」


 サジリアが間に入って紹介する。


「彼女は世界に数人しか居ないとされるSランクなのですわ。今は冒険者というより探偵業に重きを置いてるようですけど、その実力は折り紙つきですわ」


 全身真っ赤な姿のパンチラ少女は、まさかのランクSだった。




  

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