73・さらば王都
「これがこれまでの報酬だ。本来はギルド経由なのだがサジリアには通してある。だが王都を出る前にギルドには寄ってもらいたい。依頼達成の手続きだけしてくれ」
「了解した。世話になったな」
「こちらこそ迷惑ばかりかけてしまった。王都に来る事があればまた寄ってくれ。歓迎する」
「ああ。俺も結構なものを拝ませてもらったし、いい土産になった。今度来た時も是非頼む」
「いや、頼むと言われても困るが……期待はしないでくれ……本当に恥ずかしいのだ」
恥ずかしいが見せたい、というのがこいつの性癖だ。そこら辺は既に理解した。
次に来た時ももちろん、扉を叩いてはいけない。当然鍵は掛かっていないだろう。
「では達者でな」
「旅の無事を祈っている」
その足でギルドへ向かう。
「来たぞサジリア」
俺たちはすぐにギルドマスターの部屋に通された。いつからVIP待遇になったのだろうか。
「知らないのですの? ニナさんなどは王都では既に結構な有名人なのですわ」
「有名人?」
「そうですわ。あの勇者様と戦って圧倒されたと、街中の噂になってますわ。そんな方をギルドのロビーでうろうろさせたら大騒ぎですわ」
ああ、馬鹿勇者ね。そんな事もあったよね。
「シャランの所の依頼達成の手続きをしに来ただけだ。頼む」
「かしこまりましたわ。闘技場の魔族討伐とその後の警備、および新たな魔族の撃退。すべてAランク指定ですわ」
ギルドカードを一度預け、返してもらった時には、俺のランクはCになっていた。
何故かもう喜ぶ気にはなれないでいた。
俺は特に何もしていないしな。サーラだってそうだろう。たぶんEくらいになっただろうが、彼女だって何もしていないのだから、実感も何もないだろう。
「王都を出て行くのですね?」
「ああこれから出発だ。サジリアも世話になったな」
「私の方こそアランさんたちにお会いできて光栄でしたわ。貴重な体験もさせてもらいましたわ」
ここでサジリアは俺に耳打ちしてきた。
「ところでアランさんは何故今までDランクだったのですの? 理由がありまして?」
ああ、Aランクの天使たちと一緒に居るのに何故なのか不思議なのだろう。
このギルドでは俺は、魔力測定はしていないからな。
「俺はな、サーラと同じなんだよ」
俺はカミングアウトしてやったが、サジリアは――
「???」
――首をかしげている。まあいい。普通の人間に魔力なしの事など理解できるわけもない。
「ではまたな。戻る事があったら顔くらい出すよ」
「はい、お元気で。皆様方」
これでやっと本当に出発できる。
「よし行くか」
馬車の御者台はフォウに任せた。
この先どこであの魔族が現れるかも分からないが、俺たちは進むしかないのだ。
この夏過ごした王都では、短い間にいろいろな事があった。
仲間も増えた。
馬鹿勇者と会った。
魔族と戦った。
バカ高い店で記憶にない料理も食った。
そして俺はその中でも、特に強烈に印象に残った思い出を胸に、この王都を離れるのであった。
「アラン、鼻の下が伸びています」
「え? そんな事ないよ? 別にシャランの下着姿なんて想像してないよ? ほんとだよ!」
「……」
フォウのいつもの冷ややかな視線を浴びながら、俺は王都を後にするのだった。




