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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第6章 王都編~黒い影~
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73・さらば王都

「これがこれまでの報酬だ。本来はギルド経由なのだがサジリアには通してある。だが王都を出る前にギルドには寄ってもらいたい。依頼達成の手続きだけしてくれ」

「了解した。世話になったな」

「こちらこそ迷惑ばかりかけてしまった。王都に来る事があればまた寄ってくれ。歓迎する」

「ああ。俺も結構なものを拝ませてもらったし、いい土産になった。今度来た時も是非頼む」

「いや、頼むと言われても困るが……期待はしないでくれ……本当に恥ずかしいのだ」


 恥ずかしいが見せたい、というのがこいつの性癖だ。そこら辺は既に理解した。

 次に来た時ももちろん、扉を叩いてはいけない。当然鍵は掛かっていないだろう。

 

「では達者でな」

「旅の無事を祈っている」




 その足でギルドへ向かう。


「来たぞサジリア」


 俺たちはすぐにギルドマスターの部屋に通された。いつからVIP待遇になったのだろうか。


「知らないのですの? ニナさんなどは王都では既に結構な有名人なのですわ」

「有名人?」

「そうですわ。あの勇者様と戦って圧倒されたと、街中の噂になってますわ。そんな方をギルドのロビーでうろうろさせたら大騒ぎですわ」


 ああ、馬鹿勇者ね。そんな事もあったよね。


「シャランの所の依頼達成の手続きをしに来ただけだ。頼む」

「かしこまりましたわ。闘技場の魔族討伐とその後の警備、および新たな魔族の撃退。すべてAランク指定ですわ」


 ギルドカードを一度預け、返してもらった時には、俺のランクはCになっていた。

 何故かもう喜ぶ気にはなれないでいた。

 俺は特に何もしていないしな。サーラだってそうだろう。たぶんEくらいになっただろうが、彼女だって何もしていないのだから、実感も何もないだろう。


「王都を出て行くのですね?」

「ああこれから出発だ。サジリアも世話になったな」

「私の方こそアランさんたちにお会いできて光栄でしたわ。貴重な体験もさせてもらいましたわ」


 ここでサジリアは俺に耳打ちしてきた。


「ところでアランさんは何故今までDランクだったのですの? 理由がありまして?」


 ああ、Aランクの天使たちと一緒に居るのに何故なのか不思議なのだろう。

 このギルドでは俺は、魔力測定はしていないからな。


「俺はな、サーラと同じなんだよ」


 俺はカミングアウトしてやったが、サジリアは――


「???」


 ――首をかしげている。まあいい。普通の人間に魔力なしの事など理解できるわけもない。


「ではまたな。戻る事があったら顔くらい出すよ」

「はい、お元気で。皆様方」


 これでやっと本当に出発できる。


「よし行くか」


 馬車の御者台はフォウに任せた。

 この先どこであの魔族が現れるかも分からないが、俺たちは進むしかないのだ。


 この夏過ごした王都では、短い間にいろいろな事があった。

 仲間も増えた。

 馬鹿勇者と会った。

 魔族と戦った。

 バカ高い店で記憶にない料理も食った。

 そして俺はその中でも、特に強烈に印象に残った思い出を胸に、この王都を離れるのであった。


「アラン、鼻の下が伸びています」

「え? そんな事ないよ? 別にシャランの下着姿なんて想像してないよ? ほんとだよ!」

「……」


 フォウのいつもの冷ややかな視線を浴びながら、俺は王都を後にするのだった。




  


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